アーケード版『005』は、1981年9月にセガから発売されたアクションゲームです。プレイヤーは指令を受けた諜報部員005となり、敵の本拠地から重要機密の入ったカバンを奪取し、ヘリコプターで脱出することが目的となります。本作は、敵の目を避けて進むというゲームデザインが特徴的で、後にギネス世界記録に世界初のステルスゲームとして認定された、歴史的に非常に重要なタイトルです。都市、建物内部の倉庫、スケートリンクなど、多彩なステージ構成でプレイヤーを飽きさせず、催涙銃で敵を一時的に行動不能にするなど、後のアクションゲームにも影響を与えた要素が盛り込まれています。
開発背景や技術的な挑戦
『005』が開発された1981年頃は、『パックマン』や『ドンキーコング』といった、日本発のキャラクターアクションゲームが世界的に大ブームを巻き起こしていた時期です。セガは、それまでのシューティングゲーム中心のラインナップに加えて、新たなジャンルへの挑戦として、スパイ映画のような緊張感と、敵に見つからないように行動する戦略性を融合させた本作を企画しました。当時のゲームとしては珍しく、主人公のキャラクターが画面上で多彩なアクション(走る、隠れる、催涙銃を使うなど)を行う必要があり、これをスムーズに表現するための技術的な調整が大きな課題となりました。特に、建物の内部でのライトを避けるシーンは、後の潜入ゲームにおける視界の概念の萌芽を見ることができます。また、ゲームの流れを複数の異なるシーン(街路、倉庫、ヘリコプターでの脱出)で構成するという試みも、単調になりがちな当時のアクションゲームに深みを与える技術的な挑戦でした。
プレイ体験
『005』のプレイ体験は、常に緊張感と達成感の連続です。プレイヤーは敵のエージェントたちに見つからないように、都市の建物へと向かい、カバンを奪取する必要があります。特に倉庫ステージでは、ライトに照らされないように移動することが求められ、ライトに触れると敵が猛スピードで追いかけてくるため、瞬間的な判断力と冷静な操作が試されます。この見つかるか見つからないかのギリギリの駆け引きこそが、本作の醍醐味です。また、催涙銃という一時的な対処手段があることで、プレイヤーは窮地を切り抜けるための戦略を練ることができ、単なる反射神経だけでなく、状況判断力も求められます。スケートリンクのような慣性が働くステージもあり、操作性の変化も楽しさの一つです。最終的にヘリコプターに乗り込み、空中戦を経て脱出に成功したときの爽快感は格別で、プレイヤーに大きな満足感を与えます。
初期の評価と現在の再評価
『005』は、稼働当初からその斬新なゲームプレイが高く評価されました。それまでのアクションゲームの多くが、敵を直接倒すことに主眼を置いていたのに対し、本作は敵を避けて、目的を達成するという逆転の発想を取り入れた点が、ゲーマーや業界関係者に大きな衝撃を与えました。このゲームデザインが、従来のゲームとは一線を画す新鮮な体験を提供したため、特に海外市場において高い注目を集めました。現在の再評価においては、本作がステルスゲームの祖として、ビデオゲーム史におけるその地位を再認識されています。敵の視界を避け、環境を利用して潜入するという基本的なメカニズムは、後の『メタルギア』シリーズなど、数多くのステルスアクションゲームの基礎を築いたものと見なされており、その革新性が再評価の対象となっています。当時の技術的な制約の中で、これほどまでに洗練された潜入ゲームの概念を確立した点は、現代のプレイヤーから見ても驚きに値します。
他ジャンル・文化への影響
『005』が他ジャンルや文化に与えた最も大きな影響は、ステルス(潜入)というゲームジャンルを確立したことです。本作が世界初のステルスゲームとしてギネス認定されていることからも、その影響力の大きさがわかります。それ以降、敵の視界や聴覚を避けながら目的を達成するというゲームの要素は、アクションアドベンチャーや一人称視点シューティングなど、様々なジャンルに取り入れられるようになりました。文化的な側面では、スパイ映画やサスペンスドラマから着想を得たであろう秘密諜報部員という設定や、緊張感のある脱出劇というテーマが、後のビデオゲーム作品におけるストーリーテリングに影響を与えています。また、本作の成功は、セガが革新的なゲームデザインに挑戦する企業文化を育む一助となり、後の数多くの名作誕生に繋がる土壌を作ったとも言えます。
リメイクでの進化
アーケード版『005』は、現時点で大規模なリメイク作品は存在しないようですが、セガの過去のゲームをまとめたオムニバス形式の作品や、レトロゲーム機への移植を通じて、現代のプレイヤーにも遊べる機会が提供されています。これらの移植版では、オリジナル版のゲーム性と雰囲気を忠実に再現しつつ、現代のディスプレイ環境に合わせた表示調整や、中断・セーブ機能の追加など、プレイアビリティの向上が図られていることが一般的です。もし将来的に本格的なリメイクが行われるとすれば、現代のグラフィック技術を用いてスパイの世界観をよりリアルに描き出し、敵のAIや環境との相互作用を複雑化することで、オリジナルの持つ緊張感をさらに高めたゲーム体験が期待されます。しかし、オリジナル版の持つシンプルな面白さを損なわないことが、リメイクにおいて最も重要な課題となるでしょう。
特別な存在である理由
『005』がビデオゲームの歴史において特別な存在である理由は、その革新性に尽きます。本作が誕生するまで、敵と戦うことがゲームの主要な目的でしたが、『005』は敵から逃れること、隠れることをゲームの核としました。このパラダイムシフトが、後のビデオゲームデザインに計り知れない影響を与え、ステルスゲームという新たなジャンルを創造しました。また、都市、倉庫、スケートリンク、そしてヘリコプターでの脱出という、多彩なステージ構成とシームレスな展開は、当時の技術水準を考えれば非常に野心的であり、プレイヤーに一本の映画を見ているかのような感覚を与えました。技術的な制約の中で、いかに新しい面白さを生み出すかという、ゲームクリエイターの情熱とアイデアが凝縮された作品であり、その革新的な精神こそが、本作を特別な存在にしています。
まとめ
アーケード版『005』は、1981年にセガからリリースされた、ビデオゲーム史において特筆すべきアクションゲームです。プレイヤーが諜報部員となり、敵の目を欺きながら機密カバンを奪取し脱出するというシンプルな目的の中に、世界初のステルスゲームとしての深い戦略性と緊張感が込められています。当時のゲームとしては非常に斬新だった敵に見つからないように行動するというゲームデザインは、後のゲーム開発に多大な影響を与えました。特に、ライトを避けて進む倉庫ステージの緊張感や、催涙銃という一時的な対抗手段の存在は、プレイヤーに単なる反射神経を超えた状況判断を求め、大きな達成感をもたらします。現代の複雑なゲームと比較しても、そのコアとなる面白さは色褪せておらず、ビデオゲームの進化の過程を知る上で、非常に重要な傑作であると言えるでしょう。
©1981 SEGA