アーケード版『ゼロチーム』緻密なドットと破壊演出が光るベルトアクション

アーケード版『ゼロチーム』は、1993年5月にセイブ開発より発売されたベルトスクロールアクションゲームです。本作は「雷電」シリーズで知られるセイブ開発が手掛けた格闘アクションであり、最大4人までの同時プレイが可能な点や、日本の特撮ヒーローを彷彿とさせるキャラクターデザインが大きな特徴です。悪の忍者軍団に連れ去られた女性を救出するために、4人の個性豊かなプレイヤーキャラクターが立ち上がるという王道のストーリーが展開されます。開発には日本システムも携わっており、当時のアーケード市場において高い技術力を誇ったスタッフが集結して制作されました。

目次非表示

開発背景や技術的な挑戦
プレイ体験
初期の評価と現在の再評価
他ジャンル・文化への影響
リメイクでの進化
特別な存在である理由
まとめ

目次へ

開発背景や技術的な挑戦

本作の開発時期は、カプコンの「ファイナルファイト」に端を発するベルトスクロールアクションの黄金期であり、多くのメーカーが同ジャンルに参入していました。その中でセイブ開発は、自社の得意とする緻密なドット絵の技術と、派手なエフェクト表現をこのジャンルに持ち込むという挑戦を行いました。技術面では、当時のアーケード基板の性能を最大限に引き出し、多数の敵キャラクターが画面内に現れても処理落ちを最小限に抑えつつ、滑らかなアニメーションを実現しています。特に背景オブジェクトの破壊描写や、敵を投げ飛ばした際のダイナミックな演出には、シューティングゲーム開発で培われた火花や爆発の表現技法が活かされています。また、独自の暗号化技術を用いた基板構成は、当時のコピー基板対策としての側面も持っていました。

プレイ体験

プレイヤーは、バランス型のエース、スピード重視のスピード、攻撃範囲の広いスピン、パワータイプのビッグ・オーの4人から選択してゲームを開始します。操作体系は1レバーと攻撃、ジャンプの2ボタンという標準的な構成ですが、ボタンの組み合わせやレバー入力により多彩な技を繰り出すことができます。本作のプレイ体験を象徴するのが、周囲にあるオブジェクトを積極的に武器として利用できる点です。ドラム缶や木箱だけでなく、駐輪されているバイクなども持ち上げて敵に投げつけることができ、戦略的な立ち回りが求められます。敵キャラクターのAIも優秀で、プレイヤーを囲い込むような動きを見せるため、常に位置取りを意識した緊張感のある戦いを楽しむことができます。

初期の評価と現在の再評価

発売当時の評価としては、非常に丁寧に作られた良質なアクションゲームとして認識されていましたが、同年に同社から発売された「雷電2」の爆発的なヒットの影に隠れてしまい、設置店舗が限定的であったという側面もありました。しかし、家庭用への移植が長らく行われなかったことから、アーケード基板でしか遊べない名作として、コアなプレイヤーの間で語り継がれるようになりました。近年では、アーケードアーカイブスなどの配信プラットフォームを通じて現行機でのプレイが可能になったことで、その完成度の高さが再び注目されています。派手な演出と遊びやすさの両立、協力プレイの楽しさが改めて評価され、レトロゲームファンだけでなく新しい層からも支持を集めています。

他ジャンル・文化への影響

本作のキャラクター造形や世界観は、日本の戦隊ヒーローや特撮文化から多大な影響を受けており、それがゲームデザインにも反映されています。多人数で協力して巨大な敵に立ち向かうという構図は、ベルトスクロールアクションにおける協力プレイの在り方に1つの方向性を示しました。また、セイブ開発が本作で培ったキャラクターを大きく見せつつ、軽快に動かすというノウハウは、その後の開発にも活かされたと言われています。ゲームセンターという社交場において、4人同時プレイが提供する一体感は、当時のアーケード文化におけるコミュニティ形成に寄与するものでした。

リメイクでの進化

オリジナル版の発売から数年後には、バランス調整や細かな修正を加えた「ゼロチーム2000」などのマイナーチェンジ版が登場しました。これらはグラフィックの微調整やキャラクターの挙動の最適化が行われ、より洗練されたプレイ感覚を提供しました。さらに、近年の移植版においては、オリジナルの基板では困難だったオンラインランキング機能や、どこでも中断できるセーブ機能などが追加されています。これにより、当時の難易度そのままに、世界中のプレイヤーとスコアを競い合うことができるようになるなど、デジタルリメイクとしての進化を遂げています。ブラウン管の質感を再現するフィルター設定なども、当時の空気感を大切にするファンにとって嬉しい追加要素となっています。

特別な存在である理由

『ゼロチーム』が多くのプレイヤーにとって特別な存在であり続ける理由は、職人芸とも呼べる美しいドット絵と、触っているだけで楽しい操作感覚の絶妙なバランスにあります。セイブ開発という、1つのジャンルを極めたメーカーが、あえて異なるジャンルに全力で挑んで作り上げたという背景が、作品に独特の熱量を与えています。単なる「ファイナルファイト」の追従に留まらず、オブジェクトの活用やスピード感溢れる展開など、独自の個性を確立している点が、時代を経ても色褪せない魅力となっています。アーケードという限られた環境で磨かれた、一切の無駄を削ぎ落としたゲームデザインの美学が、この1作に凝縮されています。

まとめ

アーケード版『ゼロチーム』は、90年代のベルトスクロールアクションブームの中で生まれた、セイブ開発の技術と情熱の結晶です。4人同時プレイによる賑やかなゲーム性と、緻密なグラフィック、そして練り込まれたアクション要素は、今なお色褪せることがありません。長らく移植に恵まれなかった時期を経て、現在は多くのプレイヤーが手軽に触れられる環境が整いましたが、その本質的な面白さは当時のゲームセンターで感じた衝撃そのままです。アクションゲームとしての純粋な楽しさを追求した本作は、これからもアーケードゲーム史に刻まれるべき傑作として、多くのプレイヤーに愛され続けていくことでしょう。