アーケード版『Desert Gun』は、1977年にMidway Manufacturing Co.からリリースされたアーケード専用のガンシューティングゲームで、荒野（砂漠）を舞台にライフル型ガンコントローラで動物や鳥を撃つというスタイルが特徴です。ジャンルは射撃（ガンシューティング／ギャラリー形式）です。現時点で、アーケード版以外の対応プラットフォーム（家庭用機・PCなど）は確認されておらず、アーケード専用タイトルとしてのみ存在しています。
開発背景や技術的な挑戦
1970年代中盤、アーケードゲーム業界ではマイクロプロセッサ搭載機や独自操作系（ジョイスティックやガンコントローラ）を活用した新しい体験が次々と登場していました。Desert Gunは1977年という時期に登場しており、ライフル型ガンコントローラを用い、画面上を飛び交う鳥や動物を撃つという形式を採用しています。技術的には、当時の解像度や色数、射撃センサーの精度、筐体構造などの制約がある中で、プレイヤーの照準動作と画面内ターゲットの動きを連動させる仕組みを実現していました。Midwayは同年に複数の射撃ゲームをリリースしており、Desert Gunもその流れの一環と見られます。本作では、ガンコントローラを構えるという実体験を提供し、従来のボタンやレバー操作から一歩進んだ“操作の実感”を生み出していました。
プレイ体験
プレイヤーはライフル型コントローラを握り、スクリーン上を横切る動物や鳥（ロードランナーやバズァードなど）を狙って撃つ体験をします。ターゲットは動きがあり、プレイヤーはタイミングと反射神経、照準精度を駆使して命中を狙います。また、ターゲットを外すと「Missed again dummy」という煽り文言が表示される演出もあったとされています。このように、単なる得点競争ではなく、挑発を交えた演出が当時のアーケードらしい熱気を生み出していました。ラウンド構成についての詳細は不明ですが、制限時間や弾数、撃ち漏らし数によってスコアが変動するシステムであったと考えられます。プレイヤーは限られた条件の中で、いかに多くのターゲットを正確に撃つかを競いました。
初期の評価と現在の再評価
1977年当時は射撃ガンゲームが多数登場しており、Desert Gunが特別にヒットしたという記録は確認できません。ただし、アーケード史の中では「初期のガンシューティングの一例」として位置付けられています。現在では、コレクターやレトロゲーム愛好家の間で「知る人ぞ知る」作品として扱われており、アーケード黎明期を象徴する資料的価値を持つとされています。近年のレトロアーケード研究では、こうした初期の体感型射撃ゲームが後の名作ガンシューティング（たとえばOperation WolfやVirtua Copなど）へとつながる原点として再評価されています。
他ジャンル・文化への影響
Desert Gunは、ライフル型ガンコントローラを使用する射撃ゲームの黎明期を代表する作品の1つとして、後の光線銃型ガンシューティングやレールシューティングに影響を与えたと考えられます。プレイヤーが実際に銃を構えて撃つというインタラクティブな要素は、アーケードにおける「体感型ゲーム」の原型とも言えるものでした。このような体験が一般化したことで、後に家庭用ゲーム機でも光線銃（ファミリーコンピュータ用ガンなど）を使った射撃ゲームが登場し、プレイヤーが現実的な感覚で遊ぶスタイルが確立されていきました。Desert Gunはその潮流の出発点に位置しています。
リメイクでの進化
Desert Gunには、公式なリメイク版や家庭用移植版の記録は存在しません。家庭用ハード（Atariやファミコンなど）への移植も確認されておらず、完全にアーケード専用のタイトルとして知られています。そのため、リメイクによる技術的進化や再構築の事例はありません。もし今後、クラシックアーケードコレクションなどで復刻されれば、新たな注目を集める可能性があります。
特別な存在である理由
Desert Gunが特別な存在である理由は、まず1977年という早い時期に登場したアーケード射撃ガンゲームである点にあります。当時の限られた技術の中で、動的なターゲットを撃つ体験を実現したことは画期的でした。また、筐体の操作そのものがプレイヤー体験の中心となっていたことも注目すべき点です。さらに、本作は商業的に大成功を収めた作品ではないものの、その希少性と独特の体験性によってコレクターや研究者の関心を集めています。撃ち損ねた際に挑発文が表示されるという演出は、プレイヤーとの心理的なやり取りを含む“アーケードならではの遊び心”を象徴しています。
まとめ
1977年にMidway Manufacturing Co.から発売されたDesert Gunは、荒野を舞台に銃型コントローラで動物や鳥を撃つシンプルな構成ながら、当時としては斬新な操作体験を提供するアーケード射撃ゲームでした。アーケード版以外の移植はなく、専用筐体としてのみ存在しています。ゲームプレイは反射神経と照準精度が試され、アーケード文化の中で独特の緊張感と臨場感を生み出しました。今日では、体感型ガンシューティングの原点として再評価される貴重な1タイトルです。
©1977 Midway Manufacturing Co.