『将棋の達人~マスター・オブ・ショウギ~』は、ADKが開発し、1995年にネオジオの業務用システムMVS向けに登場した将棋ゲームです。対戦格闘やアクション作品を得意としたネオジオのラインアップに、本格的な盤上競技を持ち込んだ珍しいタイトルです。一般的な本将棋のルールを採用し、9×9の盤上で20枚ずつの駒を動かして相手の王将を追い詰めます。取った駒を自分の持ち駒として再び盤上へ置ける将棋独自の仕組みも再現され、終盤まで局面が大きく変化します。
1人用では、写真で表現された8人の対局相手から人物を選んで勝負します。相手によって指し方や強さが異なるため、自分の棋力に応じた対局を始められます。序盤は歩を進めて駒の通り道を作り、金将や銀将で王を守りながら、飛車や角行を働かせる陣形を整えます。中盤では駒の交換や攻め合いが起こり、終盤には持ち駒を使った詰みや防御が重要になります。盤面と駒台が分かりやすく表示され、カーソルで駒と移動先を指定する簡潔な操作で対局を進められます。
成ることができる駒を敵陣へ進める判断や、取った駒をどこへ打つかという判断には、将棋ならではの奥深さがあります。攻めに夢中になると自陣へ持ち駒を打ち込まれ、一気に形勢が逆転することもあります。相手の次の一手だけでなく、その先に生じる交換や詰み筋まで考える必要があり、短い手順の中にも多くの選択肢が存在します。2人での対局にも対応しているため、コンピューター戦だけでなく、同じ盤面を囲んで人間同士の読みを競うこともできます。
派手な必殺技や素早い操作を必要とせず、考えること自体をゲームの中心に据えている点が本作の個性です。業務用ゲームとしては一局が長くなりやすい題材ですが、持ち時間を意識しながら指すことで、家庭で盤を囲む将棋とは異なる緊張感が生まれます。実写を取り入れた対局相手の表現には1990年代らしい味わいがあり、落ち着いた画面や効果音も思考を妨げません。ネオジオの幅広いジャンル展開を示すとともに、将棋の基本的な魅力を忠実にゲーム化した異色作です。
©1995 ADK

