アーケード版『レッドサブズ』は、1979年に株式会社ショウエイ(SHOE)から発売された潜水艦をテーマにしたシューティングゲームです。本作は、当時アーケード市場で人気を博していた潜水艦アクションの系譜に属しており、プレイヤーは自機である潜水艦を操作して、海中や海上の敵勢力を迎撃する任務に挑みます。タイトルにある「レッドサブズ(赤い潜水艦)」が象徴するように、軍事的な緊迫感を漂わせる世界観が特徴です。1970年代末のビデオゲーム黎明期において、テーブル型筐体を中心に全国のゲームセンターや喫茶店で稼働し、深海を舞台にした独自のプレイ体験をプレイヤーに提供しました。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発における技術的な挑戦は、当時の限られた描画能力の中で「海中」という特殊な環境をいかに表現するかという点にありました。株式会社ショウエイの技術チームは、背景のスクロールやオブジェクトの配置によって、水深の変化や水の抵抗を感じさせるゲームデザインを構築しました。また、魚雷の軌道計算や爆発の演出において、ハードウェアの制約を最大限に活用したプログラミングが行われ、潜水艦戦特有の「じわじわと迫る緊張感」を電子音とドット絵で見事に再現しました。
プレイ体験
プレイヤーは、画面内を移動しながら敵の潜水艦や水上艦に対して魚雷を発射し、撃破を目指します。本作の醍醐味は、魚雷の速度が弾丸ほど速くないことによる「先読み」の面白さにあります。敵の動きを予測し、適切なタイミングで発射ボタンを押すという戦略的な射撃が求められました。また、海中からの攻撃だけでなく、海上の敵から投下される爆雷を回避するスリルもあり、上下左右の空間を意識した立ち回りが重要となります。当時の暗いゲームセンターの中で、ソナーのような電子音とともに繰り広げられる深海の攻防は、プレイヤーを深い没入感へと誘いました。
初期の評価と現在の再評価
発売当時、本作はその硬派なミリタリーテーマと、魚雷戦特有の独特なリズム感により、アーケードゲーマーたちの間で一定の支持を獲得しました。派手な宇宙戦とは異なる、静かながらも熱い駆け引きが楽しめる一作として評価されました。現在では、1970年代の潜水艦ゲームブームを構成した重要な歴史的作品の一つとして再評価されています。後の『サブマリン』系ゲームや、さらに後の『スチールダイバー』といった潜水艦シミュレーターへと繋がる、水中アクションの基礎的な文法を形作ったタイトルとして貴重な存在です。
他ジャンル・文化への影響
本作が提示した「水中での浮遊感と低速弾による戦闘」というコンセプトは、後の多くの水中シューティングやアクションゲームのゲームデザインに影響を与えました。また、潜水艦をヒーロー的な存在として描く世界観は、当時のSFやミリタリーアニメの影響とも共鳴しており、ビデオゲームが多様な物語の舞台を取り込んでいく過程の一助となりました。テーブル筐体を通じて普及した本作のスタイルは、日常の憩いの場であった喫茶店に、戦記ロマンの一場面を持ち込むという文化的な役割も果たしました。
リメイクでの進化
『レッドサブズ』そのものの公式なリメイク版は確認されていませんが、その精神的な系譜は現代の潜水艦アクションゲームの中に脈々と受け継がれています。1979年には数ピクセルの四角形で表現されていた潜水艦は、今やソナーの波形や水圧までも再現する高度なシミュレーターへと進化を遂げました。しかし、敵の艦影を捉え、静かに一撃を放つという本作が確立した面白さの核心は変わっていません。現在は、レトロゲームのアーカイブ活動を通じて当時の挙動が保存されており、ビデオゲームが「深海」という未知の領域を初めて描き出そうとした時代の熱意を今に伝えています。
特別な存在である理由
本作が特別な存在である理由は、ビデオゲームの初期において「速度」ではなく「タイミングと位置取り」の重要性を示した点にあります。ブランド力や派手なキャラクターに頼ることなく、潜水艦というモチーフが持つ本来の面白さをゲームシステムへと昇華させました。株式会社ショウエイが手がけた初期ラインナップの中でも、本作は独自の静謐な緊迫感を備えており、限られたハードウェアでリアリズムを追求した開発者たちの職人気質が色濃く反映されています。デジタルの光で描かれた深海の戦場は、当時のプレイヤーの想像力を無限に広げる特別な空間でした。
まとめ
『レッドサブズ』は、1979年のアーケードに深海のロマンを持ち込んだ、質実剛健なシューティングゲームです。魚雷が交差する静かなる死闘は、当時のプレイヤーに鮮烈な印象を与え、ビデオゲームにおける表現の幅を大きく広げる役割を果たしました。技術の進化によってグラフィックスは飛躍的に向上しましたが、本作が提供した「一射に魂を込める」という原初的な快感は、今なお普遍的な価値を持っています。ビデオゲームの歴史を振り返る際、本作が刻んだデジタルの波紋は、遊びを追求し続けた先人たちの情熱の証として、これからも記憶され続けることでしょう。
©1979 Shoe Co., Ltd.


