アーケードゲーム版『エクセリオン』は、1983年9月にジャレコからリリースされた縦スクロールシューティングゲームです。開発はカネコが担当しました。本作の最大の特徴は、当時としては革新的な「擬似3Dスクロール」による立体的な背景描写と、自機「ファイターEX」の操作に「慣性」が働くという独自のゲームシステムです。プレイヤーは宇宙世紀2991年を舞台に、第6惑星エクセリオンへの奇襲を仕掛けてきた第7惑星ゾルニの軍隊を撃破するために出撃します。弾数無制限で画面内に1発しか撃てないデュアルショットと、弾数制限があるが連射が可能なシングルショットという、2種類の武器を使い分ける戦略性の高さも持ち合わせており、ジャレコの初期の代表作の1つとして数多くの家庭用ゲーム機に移植されました。
開発背景や技術的な挑戦
『エクセリオン』が開発された1983年当時、ビデオゲームにおける3D表現はまだ黎明期にありましたが、ジャレコは本作で当時の技術を駆使し、「擬似3Dスクロール」を実現しました。背景の星々や地形が画面奥から手前に向かって飛び出してくるような視覚効果は、従来の平面的なシューティングゲームにはない、強い奥行き感と臨場感をプレイヤーに提供しました。この立体的な演出は、プレイヤーをゲームの世界に引き込む上で大きな技術的挑戦であり、商業的にも成功を収める要因の1つとなりました。
また、自機に意図的に「慣性」を持たせた操作システムも、ジャレコが挑んだ技術的な挑戦の1つです。プレイヤーがジョイスティックを倒してもすぐに機体が移動せず、またスティックをニュートラルに戻してもすぐに停止しないという独特の挙動は、リアリティと同時に新たな操作の難しさを生み出しました。この慣性システムは、単なるギミックではなく、敵の動きや弾道に対するプレイヤーの「先読み」を要求する、ゲーム性の核となる要素として組み込まれました。この独自性の高いシステムは、当時のシューティングゲームの常識を覆すものでした。
プレイ体験
『エクセリオン』のプレイ体験は、「慣性」という独自の操作感に集約されます。自機を左右に移動させる際、スピードのつけ方や止め方が重要になり、従来のレスポンスが良い自機操作に慣れたプレイヤーにとっては、最初は戸惑うかもしれません。しかし、この慣性システムを理解し、慣性を利用して敵の弾をギリギリでかわしたり、滑るように移動しながら攻撃したりできるようになると、他のシューティングゲームでは味わえない独特の浮遊感と操作の奥深さを感じることができます。
攻撃面では、弾数無制限ながら画面内に1発限定のデュアルショットと、連射可能だが弾数に限りがあるシングルショットの使い分けが戦略的な面白さを生み出しています。多数の敵編隊を相手にする場合はシングルショットで一掃し、弾数が尽きたらデュアルショットで確実に補充するなど、限られたリソースを管理しつつ、刻一刻と変化する戦況に対応する判断力が試されます。この武器の使い分けと、慣性の働く自機の挙動が組み合わさることで、本作独自の緊張感のある、極めて戦略的なプレイ体験が実現しています。
初期の評価と現在の再評価
『エクセリオン』は、その革新的な擬似3Dグラフィックと、慣性を取り入れた独自の操作システムにより、リリース当初から高い注目を集めました。当時のメディアからは、新しい技術への挑戦と、独特のゲーム性が評価されました。特に、慣性による操作感覚は、それまでのシューティングゲームの常識を覆すものであり、賛否両論はあったものの、その個性が大きな話題となりました。
現在の再評価においては、本作はジャレコの歴史を語る上で欠かせないタイトルとして位置づけられています。慣性システムの是非については今なお議論されることがありますが、その挑戦的なゲームデザインは、後のゲーム開発に影響を与えた独創性として高く評価されています。また、擬似3D背景によるスペクタクルな演出は、レトロゲーム愛好家から当時のアーケードゲームの技術レベルを示す貴重な事例として再認識されており、ジャレコの初期を代表する名作として語り継がれています。
他ジャンル・文化への影響
『エクセリオン』の最も大きな影響の1つは、「慣性操作」という要素をビデオゲームに取り入れ、それをゲーム性の中心に据えた先駆的な試みです。自機の動きに物理的な制約を加えることで、操作の難しさと同時に深い戦略性を生み出す手法は、後の様々なジャンルのゲーム開発者に対して、操作性に対する新たなアプローチを提示しました。また、画面奥から手前に迫りくるような擬似3Dスクロールの技術は、当時のシューティングゲームのグラフィック表現を1段階引き上げ、立体的な空間表現の可能性を広げました。
文化的な側面としては、本作はジャレコの初期の成功作として、同社のその後のゲーム開発の方向性に影響を与え、数多くの家庭用ゲーム機への移植を通じて、多くのプレイヤーにジャレコというメーカーを認識させるきっかけとなりました。シューティングゲームというジャンルにおける独自の立ち位置を確立したことで、後世のゲームファンにとって「慣性シューティング」として記憶される、特別な存在となっています。
リメイクでの進化
『エクセリオン』は、その独特なゲーム性から、時代と共に様々なプラットフォームでリメイクやアレンジが試みられています。例えば、2000年代初頭にはフィーチャーフォン向けに『エクセリオンDX』としてリメイクされ、オリジナルの慣性操作を保ちつつ、携帯端末向けに最適化されました。これにより、新たなプレイヤー層にもジャレコの名作が届くこととなりました。
さらに、近年では『ファイナルエクセリオン』というタイトルで、新解釈によるリメイク作品が登場しています。この作品は、オリジナルの慣性システムを継承しつつも、現代的なグラフィック表現や新たなゲームシステムを取り入れ、アドリブ型戦術シューティングとして進化を遂げました。単なる移植や忠実な再現に留まらず、原作の核となる要素を活かしつつ、新しいストーリーや世界観を展開することで、現代のプレイヤーにも新鮮なプレイ体験を提供しており、ジャレコが生んだ独創的なゲームデザインが時代を超えて受け継がれていることを示しています。
特別な存在である理由
『エクセリオン』が特別な存在である理由は、その挑戦的なゲームデザインにあります。擬似3Dスクロールという当時の最新技術を駆使したグラフィック表現に加え、自機に慣性を導入するという常識破りの操作システムを採用したことで、本作は他の追随を許さない独自の個性を確立しました。この慣性という要素は、単に操作を難しくするだけでなく、敵の攻撃や移動に対するプレイヤーの「先読み能力」を最大限に引き出す、一種のパズルのような戦略性を生み出しました。成功体験が単なる反射神経だけでなく、物理的な挙動の理解に裏打ちされる点で、本作は単なるシューティングゲームの枠を超えた、「慣性シューティング」という独自のジャンルを築いたパイオニアであり、ジャレコのゲーム開発におけるチャレンジ精神を象徴する作品と言えるでしょう。
まとめ
アーケード版『エクセリオン』は、1983年にジャレコが世に送り出した、極めて独創的なシューティングゲームです。技術的には擬似3Dスクロールによる立体的な背景描写で業界を驚かせ、ゲーム性においては自機に慣性を持たせるという斬新なアイデアで、プレイヤーにこれまでにない操作感覚と深い戦略性を要求しました。この慣性システムこそが、賛否両論を巻き起こしつつも、本作を単なる流行で終わらせない特別な存在へと押し上げました。2種類のショットを巧みに使い分け、慣性を制御しながら敵編隊を撃破していくプレイ体験は、現代のリメイク作品にも受け継がれており、そのゲームデザインの先進性と個性は今なお多くのファンに愛され、ジャレコの名作として語り継がれています。
©1983 ジャレコ