AC版『シティコネクション』道路を塗りつぶす爽快カーアクション

アーケード版『シティコネクション』は、1985年にジャレコから発売された横スクロールアクションゲームです。開発はNMKが担当しました。プレイヤーはスピード狂の少女クラリスが運転する愛車クラリスカーを操作し、世界のハイウェイを舞台にパトカーの追跡をかわしながら、ステージ内の全ての道路を走り、塗りつぶすことを目指します。独特の操作性と、ジャンプやオイル缶による攻撃を駆使するシンプルなルールが特徴で、パトカーだけでなく、猫やタケノコといった障害物も登場し、高いアクション性が要求されます。BGMには、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のアレンジが使用されており、ゲームの軽快な雰囲気を作り出しています。

開発背景や技術的な挑戦

本作は、1985年という当時のアーケードゲームの進化期に、ジャレコと開発元であるNMKが協力して生み出されました。技術的な挑戦としては、滑らかな横スクロールを実現しつつ、複数のプラットフォーム(道路の段差)を持つステージ構成を、当時のハードウェアの制約の中で表現した点が挙げられます。また、クラリスカーとパトカーが相対速度で動いているかのように見える視覚効果も、独特のゲームプレイ体験に貢献しています。プレイヤーの操作に応じて、車体の向きを反転させたり、ジャンプの高さが変化したりするクセのある操作性も、意図的なものか結果的なものかは定かではありませんが、ゲーム性を深める要素となりました。NMKは、後のシューティングゲームで名を馳せることになりますが、本作ではその前身となる技術力をアクションゲームというジャンルで発揮しています。

プレイ体験

『シティコネクション』のプレイ体験は、スピーディなカーアクションと、精密なプラットフォーム操作の融合が核となっています。プレイヤーは愛車クラリスカーを操作し、ステージ内の白く塗られていない道路を全て走り尽くすことでステージクリアとなります。パトカーはオイル缶を投げることで一時的に撃退できますが、常に追跡してくるため、立ち止まることは許されません。最大の難関は、異なる段差を飛び移るジャンプ操作と、道路の端で方向転換をするUターンのタイミングです。特にUターンは、落下を避けるために正確さが求められ、プレイヤーに高い集中力を強います。赤い風船を3つ集めることでワープできる要素もあり、ハイスコアを狙うプレイヤーにとっては、単なる道路の塗りつぶし以上の戦略性が求められる奥深いゲームとなっています。

初期の評価と現在の再評価

本作は、発売当初、そのユニークなゲームシステムと、可愛らしい主人公のキャラクターデザイン、そして親しみやすいクラシック音楽のBGMによって、一定の初期評価を得ました。特に、従来のドットイート系アクションにカーアクションの要素を取り入れた斬新さが注目されました。しかし、その独特の操作の癖から、一部のプレイヤーにとっては難易度が高く感じられる側面もありました。現在の再評価においては、レトロゲームブームの中で再認識されています。特に、その高い中毒性と、慣れると奥深い操作感が、現代のゲームにはないレトロゲーム特有の魅力として評価されています。また、様々なプラットフォームへの移植が繰り返されていることからも、その普遍的な面白さが再評価の理由となっています。

他ジャンル・文化への影響

『シティコネクション』は、ビデオゲームの他ジャンル・文化に直接的な大きな影響を与えたというよりは、「プラットフォームを塗りつぶす」というゲームルールの1つの原型として、後続の作品に間接的な影響を与えたと考えられます。また、主人公が車を運転する少女という設定や、世界各国を旅するステージ構成は、当時のゲームとしては珍しく、後のゲームにおけるキャラクター設定の多様化の一端を担ったとも言えるかもしれません。さらに、BGMに著名なクラシック音楽を大胆にアレンジして使用するという手法は、ゲーム音楽におけるパロディやアレンジの可能性を示唆しました。近年では、本作のIP(知的財産)を管理する会社が、ゲームタイトル名と同じ「シティコネクション」という社名になり、ジャレコのレトロゲームの復刻や再解釈を精力的に行っている点で、現代のゲーム文化に大きな影響を与え続けています。

リメイクでの進化

オリジナルのアーケード版以降、『シティコネクション』はさまざまなプラットフォームでリメイクや移植が行われ、その都度進化を遂げています。特に、スマートフォン版などの現代的なプラットフォーム向けにリメイクされた際には、操作性の改善が見られました。原作の操作は少々癖がありましたが、リメイク版ではジャンプボタンを通常ジャンプとハイジャンプに分割するなど、より直感的で遊びやすい操作体系に変更されています。また、塗り残しを可視化するナビマーカーの実装や、複数の難易度設定など、現代のプレイヤーが快適に楽しめるようなアクセシビリティの向上が図られています。さらに、続編やスピンオフ作品では、クラリスカーがロケットエンジンを搭載して空中戦を繰り広げるといった、原作の要素を大胆に発展させた新たな試みも見られ、シリーズとしての幅を広げています。

特別な存在である理由

『シティコネクション』が特別な存在である理由は、そのレトロな魅力と、文化的な継承にあります。まず、1985年という時代に、女性主人公が活躍するコミカルなカーアクションという独自の立ち位置を確立した点です。当時のゲームにはない軽快な雰囲気と、親しみやすいキャラクターは多くのプレイヤーに愛されました。また、その独特な操作性は、単なる懐かしさだけでなく、「慣れれば慣れるほど上達できる」という、レトロゲームの醍醐味を凝縮しています。そして何より、前述したように、このゲームのタイトル名が、かつての名作を現代に蘇らせるゲームメーカーの社名として存続しているという事実が、本作が単なる一作品に留まらない、ゲーム史における特別な存在であることを証明しています。ジャレコのIPを未来に繋ぐ、象徴的なタイトルとなっているのです。

まとめ

アーケード版『シティコネクション』は、1985年に登場したジャレコのアイコン的アクションゲームです。少女クラリスが愛車クラリスカーで世界中を駆け巡り、道路を塗りつぶすというシンプルながらも中毒性の高いゲームシステムは、発売から長い年月を経た今なお、多くのプレイヤーに愛され続けています。クセのある操作性や、隠し要素の存在が、プレイヤーの挑戦意欲を掻き立て、リプレイ性の高さを生み出しました。現代においても、そのゲーム性がリメイクや移植によって受け継がれ、新しいプレイヤーにも届けられています。ノスタルジーと普遍的な面白さ、そしてIPの継承という側面から見ても、本作はビデオゲームの歴史の中で色褪せることのない名作として、特別な輝きを放っていると言えるでしょう。

©1985 Jaleco