アーケード版『ゼノフォーブ』3分割画面で挑むSFホラーの金字塔

アーケード版『ゼノフォーブ』は、1987年にバーリーミッドウェイより発売されたサイドビュー方式のアクションシューティングゲームです。本作は、宇宙ステーションや基地に侵入した異星生物「ゼノ」を駆除することを目的としており、プレイヤーは異なる能力を持つキャラクターから一人を選択して任務に挑みます。当時としては非常に珍しい「3人同時プレイ」と、それを実現するための「3分割画面」という独創的なインターフェースを採用しており、プレイヤーそれぞれが独立したエリアを探索できるシステムが大きな話題を呼びました。映画『エイリアン』を彷彿とさせるダークでSFチックな世界観が特徴の一作です。

開発背景や技術的な挑戦

本作の開発において最大の技術的挑戦は、一つのモニターを水平に3分割し、それぞれで独立したスクロールとアクションを処理させるシステムの構築でした。当時のハードウェア制約の中で、3人のプレイヤーが異なる部屋を探索し、それぞれが異なる敵と戦う状況をリアルタイムで描写するために、描画エンジンの効率化が徹底されました。また、キャラクターごとに異なる武器や移動速度、さらには「異星生物に寄生される」といった特殊な状態変化を盛り込むことで、マルチプレイにおける役割分担や個性を強調する設計がなされました。この画面分割システムは、後の協力型アクションゲームにおける画面構成のあり方に一石を投じる先駆的な試みでした。

プレイ体験

プレイヤーが本作で体験するのは、孤独な探索と緊迫した戦闘が入り混じった独特の空気感です。分割された自分の画面に集中しながらも、隣のプレイヤーが窮地に陥っていないか、あるいは協力して敵を挟み撃ちにできる位置にいるかを確認する、独自のマルチタスク性が求められます。探索要素も強く、基地内の部屋を一つずつクリアし、アイテムや強力な武器を回収しながら自爆装置を起動させるという流れは、高い没入感を生んでいます。敵であるゼノの造形は不気味かつ多彩で、天井から襲いかかってくるものや、幼体として足元を這い回るものなど、常に周囲を警戒し続けなければならないスリルがプレイの醍醐味となっています。

初期の評価と現在の再評価

発売当時、その特異な画面構成と3人同時プレイという仕様は、ゲームセンターにおいて圧倒的な存在感を放ちました。協力プレイの楽しさを提示した一方で、難易度の高さや独特の操作感に戸惑う声もありましたが、SFファンやコアなアクションゲーマーからは熱狂的に支持されました。現在では、1980年代後半のアーケードシーンにおける「実験的かつ野心的な名作」として再評価されています。ハードウェアの限界に挑んだ画面分割技術や、徹底して作り込まれたSFホラーの世界観は、レトロゲーム愛好家の間でカルト的な人気を誇り、アーケード文化の多様性を示す象徴的なタイトルの一つとして語り継がれています。

他ジャンル・文化への影響

本作が提示した「独立した画面分割による協力プレイ」という概念は、後の家庭用ゲーム機におけるマルチプレイ作品に多大な影響を与えました。特に、各プレイヤーが自由に動ける自由度の高さは、現代のオープンワールドや協力型FPSの遠い祖先とも言える要素を含んでいます。また、グロテスクなクリーチャーとの戦いを描くSFホラーアクションというジャンルにおいても、そのビジュアルスタイルや演出技法は、後の多くの作品にインスピレーションを与えました。ゲームバランスよりも「世界観の構築と体験の共有」を重視した姿勢は、現代のインディーゲーム開発者たちにも影響を与え続けています。

リメイクでの進化

家庭用への移植に際しては、画面分割の維持が技術的に困難だったこともあり、2人プレイへの縮小や画面構成の変更が行われるケースもありましたが、それぞれのハードの特性を活かした調整が施されました。後年に収録されたクラシックコレクション版では、オリジナルの3分割画面が忠実に再現され、現代の大画面モニターによって当時のアーケードでの迫力をより鮮明に楽しむことが可能になっています。一部の移植版では、操作性の改善や難易度のオプションが追加され、アーケード版では味わいきれなかった探索の細部までをじっくりと堪能できるよう進化を遂げています。

特別な存在である理由

『ゼノフォーブ』が特別な存在である理由は、当時の流行に安易に乗ることなく、独自の哲学を持って「新しい遊びの形」を提示したことにあります。3分割画面という、一見するとプレイヤーを混乱させかねない大胆な手法を選び、それをSF探索アクションとして成立させた開発陣の情熱は驚異的です。単なる敵の撃破だけでなく、基地からの脱出という目的意識を持たせたゲームデザインは、プレイヤーに「物語の中にいる」という感覚を強く抱かせました。技術とアイデアが幸福な形で融合した本作は、アーケードゲームが最も挑戦的だった時代の記憶を色濃く残す至宝です。

まとめ

『ゼノフォーブ』は、今なお色褪せない独創性とスリルを兼ね備えた、アーケード史に残る傑作です。3分割画面から広がる未知の世界への探索は、当時のプレイヤーに未来のゲームの姿を予感させました。不気味なゼノとの死闘、仲間との協力、そして極限状態からの脱出という一連の体験は、ビデオゲームが提供できる最高のエンターテインメントの一つです。もしこの独特な筐体に出会う機会があれば、ぜひ友人と共に、あるいは一人の熟練エージェントとして、あの静まり返った宇宙基地の闇に足を踏み入れてみてください。

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