アーケード版『バトランティス』は、1987年7月にコナミから発売された業務用ビデオゲームです。開発もコナミグループが手掛けています。ジャンルは固定画面シューティングゲームに分類されますが、一般的な縦や横スクロールのシューティングとは異なり、プレイヤーは城壁の上に立つ若き王クリペウスIII世を操作し、城壁をよじ登って侵攻してくる妖獣軍団を迎え撃ち、城を守ることが目的の一騎当千方式を採用しています。古典的な『スペースインベーダー』に近いゲームシステムを持ちながら、中世西洋をイメージしたファンタジックなグラフィックと、多種多様なパワーアップアイテムの存在が特徴です。全16面を2周する32面構成で、プレイヤーは2方向レバーとショットボタンのみで操作します。
開発背景や技術的な挑戦
当時のビデオゲーム市場は、横スクロールアクションや多方向スクロールシューティングが隆盛を極めていましたが、『バトランティス』は、固定画面というシンプルな構造に立ち返りつつ、新しい魅力を加えるという挑戦を行いました。技術的な側面では、1980年代後半のコナミの作品に見られる、鮮やかな色使いと滑らかなキャラクターアニメーション、そして壮大な世界観を表現する秀逸なBGMが特筆されます。敵の動きや、城壁を登り切られるとミスになるというシステムは、プレイヤーに単なるシューティングではない、防衛ゲームとしての緊張感を提供しました。また、CPUにHD6309やZ80、音源にはYM3812(FM音源)を採用するなど、当時の最新技術を駆使し、独自のゲーム基板でその世界観を表現しています。
プレイ体験
プレイヤーは、城壁の上を左右に移動しながら、迫りくる敵に対してショットを放ちます。操作はシンプルですが、ゲームの難易度は高めで、瞬時の判断力が要求されます。敵の攻撃に被弾するか、画面最下段に到達した敵に城壁を完全に登られるとミスとなります。プレイ体験を豊かにしているのが、画面上方を通過するパワーボックスを運ぶ敵を撃墜することで出現する多彩なアイテム群です。アイテムには、一定時間無敵になる透明アイテム、雑魚敵を貫通し中ボスを一撃で倒す貫通射撃アイテム、広範囲を攻撃するニトロアイテム、そして自機のショットの連射性能や移動速度を上げるアイテムなどがあり、これらをいかに効果的に活用するかが攻略の鍵となります。アイテムの効果が切れるまでの時間は短く、常に攻防一体の緊張感の中でプレイすることになります。
初期の評価と現在の再評価
『バトランティス』は、その発売当時、固定画面シューティングというジャンルに新風を吹き込んだ作品として一定の評価を得ました。中世ファンタジーの世界観、緻密なグラフィック、そして戦略的なアイテムの使用が求められるゲーム性が、当時のプレイヤーに新鮮に受け止められました。しかし、当時のコナミのアーケードゲームには他にも多くの名作が存在したため、大ヒット作という位置づけではありませんでした。現在では、レトロゲームブームやアーケードアーカイブスシリーズでの移植により、再評価が進んでいます。その独創的なシステムと、良質なゲームデザインは、現代のプレイヤーからも高い評価を受けており、昔ながらの緊張感と達成感を味わえる作品として注目されています。特定のメディアでの評価点数やランキングが話題になることはありませんが、コアなファンからの支持は根強いものがあります。
他ジャンル・文化への影響
『バトランティス』のゲームシステムは、後のビデオゲームのジャンルに対して直接的な大きな影響を与えたという明確な記録はありませんが、「城壁を守る」というタワーディフェンス(防衛)の要素を、古典的な固定画面シューティングに取り入れ、複数のアイテムを活用するというゲームデザインは、他のゲーム開発者に少なからず影響を与えたと考えられます。ファンタジーの世界観とシューティングの融合という点でも、当時のアーケードゲームとしては斬新でした。特に音楽面では、コナミ矩形波倶楽部による荘厳なBGMが、ゲームの世界観を深く印象づけており、ビデオゲーム音楽が文化として認識され始める時期において、質の高いBGMの重要性を示す一例となりました。その美しいサウンドは、多くのプレイヤーの記憶に残っています。
リメイクでの進化
『バトランティス』は、現代のコンソールやPC向けに、グラフィックやシステムを大幅に刷新した完全なリメイク版は存在しません。しかし、過去に複数のゲーム機やデジタルプラットフォームへの移植が行われており、これらはオリジナルのアーケード版を忠実に再現することを主眼としています。移植版では、当時の雰囲気をそのままに、高解像度の画面に対応させたり、オンラインランキング機能を追加したりといった、現代的な利便性を加える形での進化が見られます。特に、アーケードアーカイブスのような取り組みでは、オリジナルのゲーム基板の挙動を可能な限り再現することが重視されており、当時の開発者の意図したゲームバランスを再体験できることが、移植版の大きな価値となっています。これらの移植を通じて、新たなプレイヤー層にこの名作が触れられる機会が提供されています。
特別な存在である理由
『バトランティス』がビデオゲーム史の中で特別な存在である理由は、その独自のゲーム性、世界観、そして高い完成度にあります。固定画面という制約の中で、次々と襲いかかる敵の群れに対処し、限られた時間でアイテムを効果的に使うという戦略的な要素は、単なる反射神経だけでなく、知的な判断力をプレイヤーに要求します。このゲームデザインの奥深さが、発売から数十年を経た現在でも多くのファンを魅了し続けています。また、ファンタジー世界とシューティングゲームの組み合わせが絶妙で、アーケードゲームとしての遊びやすさと、コンシューマゲームのような壮大な物語性を兼ね備えていた点も特筆すべきです。当時のコナミの技術力と独創性が凝縮された、時代を象徴する作品の1つと言えるでしょう。
まとめ
アーケード版『バトランティス』は、1987年にコナミから登場した、固定画面シューティングの傑作です。シンプルな操作性と、アイテムの使用が鍵を握る戦略的なゲーム性が融合し、プレイヤーは城壁を防衛するというユニークな体験をすることができます。豪華なグラフィックとBGMは、当時のアーケードゲームの中でも際立っており、その高い技術力が光ります。発売から長い年月が経った今も、移植版などを通じて多くのプレイヤーに愛され続けており、レトロゲームとしての価値を確固たるものにしています。この作品は、古き良きアーケードゲームの熱量と、ゲームデザインの洗練さを現代に伝える、貴重なタイトルであると言えます。
©1987 コナミ
