アーケード版『ドンキーコング3』は、任天堂が1983年に発売したシューティングアクションゲームです。開発はNintendo R&D1が担当し、プレイヤーは害虫駆除業者のスタンリーとなって温室に侵入したドンキーコングをスプレーで追い払うという、ユニークな設定が特徴です。
開発背景や技術的な挑戦
本作は、前作までのジャンプアクションから路線を変更し、シューティング要素と防衛要素を融合させた構成となっています。ゲーム&ウオッチ版『グリーンハウス』との連動的な側面もあり、シリーズに新たな風を吹き込む試みが行われました。
プレイ体験
プレイヤーは温室内でスプレーを用いて、侵入する虫とドンキーコングの両方を追い払う必要があります。スーパースプレーの登場で一気に形勢が逆転する展開は、スリルと爽快感を兼ね備えています。虫の行動パターンを把握することが攻略の鍵となります。
初期の評価と現在の再評価
アーケードゲーム版『ドンキーコング3』は、シリーズの中でも異色の立ち位置にある作品として、今もなお話題に上がることのあるタイトルです。1983年に登場したこのゲームは、前作までのアクションパズル的な構造から一転して、シューティング要素を強く打ち出した内容になっており、その大胆な変化が評価を分ける結果となっています。総合的な印象としては、独自性を評価する声と、シリーズからの逸脱を残念に感じる声が拮抗している状況です。
評価の割合は、ポジティブな意見が約50パーセント、ネガティブな意見が約50パーセントと、はっきりと好みが分かれる傾向にあります。ポジティブな評価をしている人々は、まず操作性の軽快さとテンポの良いゲーム展開を挙げています。アーケード筐体でのプレイ感覚が直感的で、プレイヤーが昆虫駆除業者のスタンリーとなって、花を守るためにドンキーコングと戦うという設定がユニークだと感じる人も多いようです。また、グラフィックや効果音など、当時のアーケードゲームとしては非常に完成度が高く、短時間で気軽に楽しめる点が「リプレイ性が高い」として好まれています。
その一方で、ネガティブな評価では、従来の『ドンキーコング』シリーズの持っていた魅力が感じられないという意見が目立ちます。特に、前作で主人公だったマリオが登場せず、新たなキャラクターであるスタンリーに代わった点は、多くのファンにとって違和感があったようです。また、ゲーム性がシューティング中心になったことで、ジャンプを主体としたアクション性が失われ、ドンキーコングの名を冠する意味が薄いという指摘も見られます。ゲームの構成が3種類のステージを繰り返す形であることから、プレイを重ねるうちに単調に感じるという声も少なくなく、「長く遊ぶには飽きやすい」との評価に繋がっています。さらに、シューティングゲームとして見た場合でも、同時期の他作品と比較してインパクトに欠けるとの批判も存在し、「ジャンルをまたいだ挑戦は評価するが、結果として中途半端になってしまった」とする意見も散見されます。
このように好みが分かれる『ドンキーコング3』ですが、おすすめできるプレイヤー像は明確です。何より、アーケードならではの短時間で楽しめるシンプルなゲームを求めている人にとっては、テンポの良いシューティングとして十分に魅力的なタイトルです。また、ドンキーコングシリーズの中でもちょっと変わった作品を体験してみたい人や、1980年代のアーケード文化に興味がある方にも適していると言えるでしょう。一方で、シリーズに対して強い愛着を持ち、アクション性や難易度の高い挑戦を期待するタイプのプレイヤーにとっては、物足りなく感じる場面が多いかもしれません。
他ジャンル・文化への影響
スタンリーという新キャラクターや、非マリオ系のドンキーコング作品という試みは、後のスピンオフ展開の可能性を示しました。また、温室という舞台設定は、のちのミニゲームやパズル系ゲームへの発想にも影響を与えています。
リメイクでの進化
現代にリメイクされるなら、スプレーの種類を増やして戦略性を高めたり、ビジュアル面で温室の多彩な環境を再現することが期待されます。オンラインランキングや協力モードの導入も、より幅広いプレイヤーに訴求する手段となるでしょう。
まとめ
アーケード版『ドンキーコング3』は、シリーズの中でも異色の進化を遂げた作品です。プレイ感覚のユニークさと挑戦的なデザインは、今なお新鮮であり、時代を超えて愛されるポテンシャルを秘めています。
攻略
プレイヤーは、園芸家スタンリーとなって、温室を荒らすドンキーコングを撃退することを目的とします。スタンリーは殺虫スプレーを使い、ドンキーコングを画面上部へと追い払う必要があります。同時に、温室内に侵入してくる虫たちから花を守らなければなりません。ドンキーコングを天井付近まで押し上げるとステージクリアとなり、次のラウンドへ進むことができます。
ゲームオーバーの条件は、スタンリーが敵キャラクターに触れてしまった場合、ドンキーコングがスタンリーに近づきすぎてしまった場合、または温室内のすべての花が虫に奪われてしまった場合です。ステージが進むにつれて敵の動きが速くなり、プレイヤーにはより素早く正確な操作が求められます。
ストーリー設定
ゲームの舞台はスタンレーの温室ガーデンで、彼はドンキーコングの暴れる行動から花を守るために戦います。ドンキーコングが昆虫たちをかき乱し、それによって花が破壊される恐れがあります。
キャラクター | 概要 |
---|---|
スタンリー(主人公) | 茶色でストレートの髪と、マリオに似た大きな団子鼻が特徴ですが、髭はありません。服装は帽子を除きマリオやルイージとほぼ同じで、長袖シャツにオーバーオールです。筺体やパッケージのイラストではシャツは水色、オーバーオールは赤ですが、アーケード版では紺色のシャツに赤のオーバーオール、ファミコン版では白のシャツに紺色のオーバーオールです。 |
ドンキーコング(悪役) | 左右2本のロープにぶら下がり、蜂や虫を呼び出します。時間経過とともに徐々に降下し、蔓の最下部に到達すると地面に飛び降りてミスになります。スプレーで最上部まで押し上げるか、一定数の虫を退治するとクリアとなります。 |
バズビー | 最も基本的な敵キャラです。巣から飛び出して花を持ち去ろうとし、槍を投げるものもいます。花を持ち去り画面外に消えるとパワーアップし、ドンキーの周辺を回った後、高速で体当たりしてきます。8面以降で姿が変化します。 |
ベスピー | 2発のスプレーを当てないと倒せない敵で、パワースプレーでは1発です。最初は黄色ですが、1発当てると青く変わります。残骸に当たるとミスになりますが、花は持ち去りません。 |
クリーピー | 普通のスプレーでは倒せませんが、木のツタを這う時は退散させることができます。地上に降りると気絶してスプレーを吸収し、特に2面ではドンキーへの攻撃が困難になります。パワースプレーで倒せます。 |
アタッカー | 蚊を模した敵キャラで、小さく円を描いて飛びます。スタンリーと平行になると高速で横飛びして体当たりしてきます。12面以降で姿が茶色に変わりますが、花は持ち去りません。 |
蛾 | 15面以降に登場します。行動パターンは子蜂と同じで、花を持ち去ります。 |
ゲームシステム
プレイヤーがスタンリーを操作し、植物園でドンキーコングや虫たちと戦うシューティングゲームです。スタンリーは殺虫剤を使ってこれらの敵を撃退します。蜂がステージ下部に到達すると花を抜き取り、巣へ持ち去ろうとします。プレイヤーは殺虫剤でこれらの虫を倒し、花を守る必要があります。花を守りきると、ステージクリア時にボーナスが得られます。ステージは、ドンキーコングを上方へ押し上げるか、特定の数の虫を全て退治することでクリアとなります。しかし、プレイヤーが虫に接触したり、虫が放つ槍や破片に当たったりするとミスとなります。また、ドンキーコングが最下部まで到達して地面に着地するか、椰子の実に当たるとミスとなります。ただし、花がすべて持ち去られてもミスにはなりません。タイムアウトになると左右からロープを食べる虫が現れ、ドンキーコングが下に落ちるまで綱を食べ続けます。ゲームには「パワースプレー」という強力な殺虫剤が用意されており、これを使うとドンキーコングを迅速に撃退することができます。パワースプレーはステージ上にひとつだけ存在し、ドンキーコングがそれに触れると地面に落ちてきます。プレイヤーはパワースプレーをいつ取るかを選べ、一度取らなくてもステージクリアやミスをするまで地面に残り続けます。
操作方法
操作方法は、4方向レバーとボタンを使用します。スタンレーは画面内を上下左右に移動し、ジャンプとスプレーの発射で昆虫やドンキーコングを撃退します。スーパースプレーが登場すると、ドンキーコングをより速く上方に押し上げることができます。
ステージ構成
『ドンキーコング3』のアーケード版におけるステージ構成は、合計で3つの異なるパターンの面があります。1面は標準的な4段構成で、最も基本的な形となっています。2面は中央部に穴が開いており、その穴のために中央から直接上方へのジャンプでは最上段に到達できません。このため、プレイヤーは迂回する必要があります。3面は段数が1段減り、3段のみとなっていますが、その代わりに水平に張られた4本のツタに幼虫がぶら下がり、プレイヤーの動きを妨害します。
初めてゲームを開始した際、ステージの進行は1面、3面、1面、2面、3面という順序で進みます。この初期の進行後、ゲームは1面、2面、3面という順で繰り返し進行します。さらに特筆すべきは、159面から256面(または0面とも呼ばれます)までの間、ずっと1面のパターンが続きます。この0面をクリアすると、再び最初の1面、3面、1面、2面、3面という進行パターンに戻ります。
得点
敵を撃滅したり、ステージをクリアしたりすることで得点を獲得できます。
データ
このゲームの発売年などの情報です。
発売年 | 1983 |
プラットフォーム | アーケード |
ジャンル | シューティング |
プレー人数 | 1-2人 |
メーカー | 任天堂 |
開発会社 | 任天堂開発第一部 |
プロデューサー | 横井軍平 |
ディレクター | 宮本茂 |
グラフィック | 坂本賀勇 |
サウンド | 田中宏和 |
このゲームの移植タイトルは下表の通りです。
発売年 | プラットフォーム | 移植タイトル名 |
---|---|---|
1984 | ファミリーコンピュータ | ドンキーコング3 |
1986 | ゲーム&ウオッチ | ドンキーコング3(VS. マルチプレイ型) |
1986 | NES | ドンキーコング3 |
2019 | Nintendo Switch | アーケード版ドンキーコング3(アーケードアーカイブス) |
© Nintendo 1983