アーケード版『イエローキャブ』は、1984年11月にデータイーストから稼働開始したドライブアクションゲームです。この作品は、プレイヤーがニューヨークのタクシードライバーとなり、街中で客を拾い、指定された目的地まで運び、運賃を稼ぐことを目的としています。それまでの一般的なゲームとは異なり、敵の撃破や明確なゴールのない高い自由度が特徴でした。ガソリンが尽きるまで、どこへでも運転し続けられるというユニークな設定は、当時としては斬新で注目されましたが、出荷台数は比較的に少なかったようです。家庭用ゲーム機への直接的な移植版は存在しないようですが、後にパチンコシミュレーションソフトとしてプレイステーション2で関連作品が発売されています。
開発背景や技術的な挑戦
『イエローキャブ』が開発された1984年は、ゲーム市場が多様なジャンルを受け入れ始めた時期でした。データイーストは、既存の枠に囚われない新しいゲーム体験の創出を目指し、日常的なタクシー運転という行為をゲーム化しました。当時の技術的な制約の中で、単なるコースを周回するレースゲームではなく、ある程度自由に移動できる広大な都市空間を表現することは大きな挑戦でした。プレイヤーの動きに応じて画面がスクロールし、多数の車や客が動く状況を処理するための技術が求められました。また、時間帯や季節が変化するステージ構成も、単調になりがちな運転ゲームに変化を与えるための工夫として盛り込まれています。このような試みは、後のオープンワールドゲームの萌芽として評価できます。
プレイ体験
プレイヤーは、レバーとブレーキボタンを操作してタクシーを運転します。主な任務は、街に点在するタクシーストップで客を乗せ、目的地まで届けることです。客を乗せると、目的地までの必要なスクロール数が表示され、この情報をもとにプレイヤーは効率的なルートを判断します。客を降ろすと運賃がスコアに加算され、ガソリンが尽きるまでプレイが続きます。客を乗せている最中に、障害物にぶつかったり、敵のトラックが落とす落下物に当たったりすると客が降車してしまい、再びタクシーストップに戻ってしまうという緊張感のある要素も含まれています。この何でもありとも言える荒々しい運転と、刻々と減るガソリンとの戦いが、本作独自のハイスコアを目指す醍醐味となっていました。
初期の評価と現在の再評価
『イエローキャブ』は、その独創的なコンセプトにもかかわらず、初期のアーケード市場では大ヒット作とはなりませんでした。当時のプレイヤーは、より分かりやすい目標や派手なアクションを好む傾向があったため、自由度の高さが逆に敷居の高さにつながった可能性があります。しかし、時を経て現在では、そのゲームデザインの革新性が再評価されています。後の人気作で見られるオープンな都市空間でのミッション遂行という要素を、これほど早い時期に実現していたことは、ゲーム史における重要なポイントです。単なるレトロゲームとしてだけでなく、現代のゲームデザインのルーツの一つとして再注目される傾向があります。
他ジャンル・文化への影響
本作の広大な都市を舞台に、自由な発想でミッションを遂行するというゲームプレイの哲学は、後のビデオゲームに大きな影響を与えました。特に、都市を舞台にしたドライビングゲームや、職業シミュレーションゲームの発展に間接的な影響を与えたと考えられています。また、海外の有名なテーマパークにあるアトラクションでは、壁を突き破った黄色いタクシーがモニュメントとして使われており、ゲームのタイトルそのものが、単なるゲームの枠を超えた文化的なイメージとして認知されている例も見られます。これは、このゲームが持つユニークな設定とデザインが、人々の記憶に強く残った証拠と言えるでしょう。
リメイクでの進化
アーケード版『イエローキャブ』には、公式なリメイク版は存在しませんが、仮に現代の技術でリメイクされるならば、大きな進化が期待されます。グラフィックは高解像度化され、よりリアルなニューヨークの街並みを再現するでしょう。また、交通システムの複雑化、多様な客のニーズに応じたルート選択、時間帯や天候がゲームプレイに影響を与える要素など、より深いシミュレーション要素が加わる可能性があります。さらに、オンライン機能を通じて、他のプレイヤーと運賃獲得の競争をしたり、協力してミッションをこなしたりといった、現代的な要素も追加されるかもしれません。
特別な存在である理由
『イエローキャブ』が特別な存在である最大の理由は、その時代を凌駕した先見性にあります。1984年という時期に、目的の自由度と都市シミュレーションを組み合わせたゲームデザインは極めて先進的でした。この作品は、後のゲームデザインの進化の方向性、特にプレイヤー主導の体験や、リアルな世界を舞台にしたゲームの可能性を早期に示した作品です。商業的な成功は限られていたものの、ビデオゲームの歴史において、既存の概念を打ち破る試みをしたパイオニア的な作品として、特別な地位を占めています。
まとめ
データイーストが開発したアーケードゲーム『イエローキャブ』は、1984年に登場した革新的なドライブアクションゲームです。タクシードライバーとして客を運び運賃を稼ぐというシンプルなルールの中に、当時としては画期的な高い自由度と、広大な都市を舞台にしたシミュレーション要素を組み込みました。家庭用ゲーム機への直接移植は実現していませんが、そのユニークなコンセプトは、後のゲームデザインに多大な影響を与えたと評価されています。ビデオゲームの歴史において、その先進的な精神を持つ『イエローキャブ』は、今なお語り継がれるべき貴重な作品です。
©1984 データイースト