アーケード版『ワイルドウエスタン』は、1982年にタイトーから発売されたアクションシューティングゲームです。開発元もタイトーとされています。プレイヤーは馬に乗ったシェリフとなり、列車と並走しながら、四方八方から襲い来るギャングたちを撃退するという、西部劇を題材にしたドラマティックなシチュエーションが最大の特徴です。荒野を駆け抜ける馬上の戦闘に加え、列車に飛び移っての屋根の上での攻防もあり、当時のアーケードゲームとしては珍しい、豊かなストーリー性と、西部劇の世界観を丁寧に表現したビジュアル、そして勇壮なBGMがプレイヤーを魅了しました。移動と射撃方向を別々に操作するためのダイヤルスイッチを採用した独特な操作系も、このゲームの個性を際立たせています。
開発背景や技術的な挑戦
ワイルドウエスタンが開発された1980年代前半は、アーケードゲームが多様化し、技術的な進歩が急速に進んでいた時期です。本作では、単なる固定画面のシューティングではなく、横スクロールする背景の中で、キャラクターが馬に乗って移動するというダイナミックな表現が取り入れられました。これは、当時の技術的な挑戦の一つと言えます。また、最も特徴的な挑戦として、ダイヤルスイッチによる独自の操作システムが挙げられます。これは、プレイヤーの移動方向とは別に、銃口の方向をダイヤルで8方向に自由に切り替えられるようにするためのもので、従来のレバー操作だけでは実現しにくい、より複雑で戦略的な射撃を可能にしました。現代のツインスティックのような操作を、当時のアーケード筐体の環境で実現するための工夫であり、この操作系は、タイトーのフロントラインなど、一部のゲームでも採用されていました。西部劇という題材も、当時の日本のアニメや映画とは一線を画した、新鮮な世界観を提供しています。
プレイ体験
プレイヤーが体験するのは、西部劇の主人公であるシェリフとしてのスリルあふれる追跡劇です。馬に乗ったプレイヤーは、画面中央を走る列車と並走しながら、荒野や給水タンク、橋といった障害物を避けつつ、四方八方から現れるギャングたちを撃ち倒します。移動はレバー、射撃はダイヤルスイッチで行うため、進行方向の敵を撃ちながら、同時に後方や斜め上といった別の方向の敵も狙うという、高度な操作が要求されます。これが本作の大きな醍醐味となっています。列車の上にいる敵を倒すためには、アクションボタンを使って列車に飛び乗る必要があり、この時の緊張感もプレイ体験を盛り上げます。敵を倒した後、その馬がしばらく画面内に残り障害物となるなど、細部にまでリアリティとコミカルさが共存している点も魅力です。各ステージの最後には、宙に投げられたコインを撃ち抜くボーナスステージが用意されており、正確なタイミングと射撃技術が試されます。
初期の評価と現在の再評価
ワイルドウエスタンは、そのユニークな世界観と操作性から、当時のゲームセンターで一定の評価を得ました。特に、従来のシューティングゲームにはない、西部劇というテーマの表現力の高さや、ダイヤルスイッチによる新しい操作感覚が注目されました。多くのギャングを倒し、列車を守るという明確な目的が、プレイヤーのモチベーションを維持しました。現在の再評価としては、2019年にアーケードアーカイブスとしてPlayStation 4やNintendo Switchなどの現行機に移植されたことにより、再び多くのプレイヤーに触れられています。この移植版では、ダイヤルスイッチ操作を右スティックなどで再現するなど、現代の操作系に合わせた工夫がなされています。この再評価によって、本作のユニークなゲームデザインや、当時の技術的な挑戦が再認識されており、タイトーのアーケードゲーム史における重要な作品の一つとして位置づけられています。
他ジャンル・文化への影響
ワイルドウエスタンは、ゲームのテーマとして西部劇を本格的に扱った初期の作品の一つであり、後の西部劇を題材としたゲームやコンテンツに影響を与えた可能性があります。特に、馬に乗りながらの戦闘や、列車の上でのアクションといった、西部劇の象徴的なシーンをゲームプレイに組み込んだ点は画期的でした。同じタイトーから発売されたゲームにも、本作のダイヤルスイッチを採用した操作系を持つものがあり、この操作方法の可能性を広げた一作とも言えます。また、その後のゲームデザインにおいて、移動と射撃方向を分離させるというコンセプトは、現代のツインスティックシューターの源流の一つとして捉えることもできます。文化的な側面では、1980年代の日本のゲームセンター文化において、西部劇の雰囲気を持ち込んだ作品として、一定の存在感を放っていました。
リメイクでの進化
ワイルドウエスタンは、現代のゲーム機向けに直接的なフルリメイクが行われたという情報は確認できませんでした。しかし、上記でも触れたように、アーケードアーカイブスシリーズとしてPlayStation 4やNintendo Switchで忠実に移植・復刻されています。この復刻版では、グラフィックやサウンドは当時のアーケード版を可能な限り再現しつつも、現代のプレイヤーが遊びやすいように、操作系の改善と付加機能が加えられています。例えば、当時のダイヤルスイッチを現代のゲームコントローラーの右スティックで代替操作できるようになったこと、オンラインランキング機能の追加、ゲーム設定の細かな変更(難易度など)が可能になったことなどが、現代的な進化と言えます。これは、単なる過去作の再現に留まらず、多くのプレイヤーにこの名作の魅力を再発見してもらうための、重要な試みです。
特別な存在である理由
ワイルドウエスタンが特別な存在である理由は、その独自の世界観と挑戦的な操作システムに集約されます。西部劇という題材を、単に背景として使うのではなく、馬上のアクションと列車との攻防というドラマティックな形でゲームプレイに落とし込んだ独創性は、当時の他のゲームと一線を画していました。特に、移動と射撃を独立させるためのダイヤルスイッチは、操作の習熟度によってプレイスタイルが大きく変わる深みを生み出し、プレイヤーに独自の技術介入の余地を与えました。美しいドット絵で描かれた西部劇の情景や、勇壮なBGMも、ゲーム体験を豊かにする要素です。当時のゲームセンターの喧騒の中で、馬を駆り、ギャングと撃ち合うシェリフの姿は、多くのプレイヤーの記憶に残る、個性的な存在感を放っていました。
まとめ
アーケードゲームワイルドウエスタンは、1982年にタイトーが世に送り出した、西部劇の世界観を濃厚に表現したアクションシューティングゲームです。馬上のシェリフが列車強盗と戦うというシチュエーション設定、そして移動と射撃方向を独立させたダイヤルスイッチによる操作感覚は、当時のゲームの中でも際立っていました。技術的な挑戦としてダイヤルスイッチを採用したことで、プレイヤーは高度な戦略的な射撃を楽しむことができました。現代においてもアーケードアーカイブスとして復刻され、そのユニークなゲームデザインが再評価されています。西部劇ファンはもちろん、革新的な操作システムを持つレトロゲームに興味があるプレイヤーにも、ぜひ体験していただきたい一作です。
©1982 TAITO CORPORATION