アーケード版『アウトゾーン』は、1990年8月に東亜プランからリリースされ、テクモが販売を担当した縦スクロールシューティングゲームです。本作は、西暦2097年、オワギラ星人の侵略によって滅亡の危機に瀕した人類を救うため、伝説の宇宙仕事人に派遣された最強のサイボーグ戦士をプレイヤーが操作するというSFストーリーを特徴としています。従来の縦スクロールシューティングとは異なり、プレイヤーの操作によって画面のスクロール速度が変化する任意スクロールを採用しており、探索要素やアクション要素が強く、独特のゲーム性を確立しています。また、時間経過と共に減少するエナジーの概念が導入されており、時間管理の緊張感がゲームプレイに深みを与えています。全7ステージ構成で、2人同時プレイも可能です。
開発背景や技術的な挑戦
東亜プランは、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、『タイガーヘリ』や『達人』など数々の名作シューティングゲームを生み出したメーカーです。彼らは常に新しいアイデアや技術的な挑戦をゲームに取り入れることで知られていました。『アウトゾーン』の開発においては、当時の一般的な縦スクロールシューティングにアクションゲームの要素を融合させるという試みが行われました。特に、プレイヤーが前進しない限り画面がスクロールしない任意スクロールの採用は、単に敵を避けて撃つだけでなく、地形のトラップやアイテム配置を考慮した戦略的な立ち回りを要求する点で、従来のシューティングゲームにはない挑戦でした。また、東亜プランのタイトルとしては珍しく、主人公が人間や戦闘機ではなくサイボーグ戦士であること、そして敵もエイリアンの大群であるという設定は、ビジュアル面や演出面でハードなSFの世界観を追求するための背景となっています。緻密なドット絵で描かれたステージやキャラクター、そして作曲家である上村建也氏による心躍るサウンドトラックは、当時のアーケード基板の性能を最大限に活かした技術的な成果と言えます。
プレイ体験
『アウトゾーン』のプレイヤーは、8方向レバーとショット、ボンバーの2ボタンを使用してサイボーグ戦士を操作します。最大の特徴は、前述の通り、プレイヤーが移動しなければ画面が進まない任意スクロールです。これにより、プレイヤーは敵の出現パターンを慎重に見極めたり、より有利なポジションを確保したりといった戦略的な判断を下す必要が生じます。ゲームの難易度は高めに設定されていますが、パワーアップアイテムのPアイテムによるショットの強化や、Cアイテムによる全方向ショットと3WAYショットの切り替え、さらには特殊な武器であるスーパーボールやスーパーバーナーといった強力なアイテムを駆使することで、爽快感のある戦闘が楽しめます。特に、スーパーボールは敵や障害物を貫通する強力な武器であり、その使用タイミングがゲーム攻略の鍵を握ります。しかし、エナジーが時間と共に減少し、0になるとミスになるというシステムは、プレイヤーに立ち止まってはいけないという緊張感を与え、常にスピーディな展開を求めます。このランアンドガン要素と、残機を失うミス条件の厳しさが相まって、緊張感と達成感に満ちた独自のプレイ体験を提供しています。
初期の評価と現在の再評価
『アウトゾーン』は、稼働開始当初、その高い難易度と独特なゲームシステムから、一部のプレイヤーからは賛否両論の評価を受けました。しかし、東亜プランならではの作り込まれたゲームバランスと、任意スクロールがもたらす戦略性の高さが、熱心なシューティングファンやアクションゲームのプレイヤーからは高く評価されました。特に、エナジーの制限や多彩な武器を使いこなす奥深さは、やり込み要素として多くのファンを惹きつけました。現在の再評価としては、東亜プラン作品の復刻ブームの中で、改めてその独自性が注目されています。単なるシューティングゲームではなく、アクション要素と探索要素を兼ね備えたランアンドガンの傑作として認識されており、後の様々な作品に影響を与えた独創的なゲームデザインが再評価の対象となっています。特に、移植版では難易度調整やアシスト機能が追加されることもあり、オリジナルのアーケード版が持つ緊張感とハードコアな魅力が、レトロゲーム愛好家の間で再確認されています。
他ジャンル・文化への影響
『アウトゾーン』が持つ任意スクロール、時間制限(エナジー)、そしてシューティングとアクションを融合させたランアンドガンという要素は、当時のゲームデザインに独自の視点をもたらしました。特に、単調になりがちな縦スクロールシューティングに、プレイヤーのペースで進める探索の自由度と、常に時間を意識させる緊張感を加えた点は、後のアクションシューティングや、トップダウン視点のアクションゲームに間接的な影響を与えたと考えられます。また、東亜プラン作品の隠しキャラクターが登場するというファンサービスは、後のゲームメーカーが自社作品のキャラクターをクロスオーバーさせる文化の先駆けの一つとも言えます。上村建也氏によるBGMは、その高いクオリティからゲームミュージックファンからの評価が高く、サントラCDの復刻や、関連イベントでの演奏などを通じて、ゲーム音楽文化の一翼を担っています。
リメイクでの進化
『アウトゾーン』は、発売から時を経て、PCや家庭用ゲーム機向けに復刻移植が行われています。これらの移植版は、単なるアーケード版の再現にとどまらず、現代のプレイヤー向けに様々な新機能や進化を遂げています。例えば、PC版などの最新の移植では、難易度を下げて気軽に楽しめるベリーイージーモードの追加や、巻き戻し機能、自動射撃のアシスト機能など、オリジナル版の持つ高いハードルを緩和するための機能が搭載されています。また、オリジナル版の仕様に加えて、別バージョンやベータ版が収録されるなど、資料的価値の高いコンテンツが追加されることもあります。これらの進化は、オリジナル版のコアな魅力を保ちつつ、より幅広い層のプレイヤーが楽しめるように配慮されたものであり、レトロゲームの新たな楽しみ方を提案しています。
特別な存在である理由
『アウトゾーン』が今なお特別な存在である理由は、東亜プランという伝説的なメーカーが、従来の縦スクロールシューティングの枠を超えて、新しいゲームプレイの形を追求した結果生まれた異色の傑作である点にあります。強制スクロールが主流の中で、任意スクロールとエナジー制限という相反する要素を巧みに組み合わせることで、プレイヤーの決断と戦略が試される緊張感のあるゲーム体験を生み出しました。このゲームデザインの独創性、そして卓越したドット絵のビジュアルとBGMのクオリティが、アーケードゲームの黄金時代における東亜プランの技術力と創造性を象徴していると言えます。そのハードコアなゲーム性が、プレイヤーに長期的な挑戦と深い達成感を与え続けていることが、特別な存在であり続ける最大の理由です。
まとめ
アーケード版『アウトゾーン』は、東亜プランが1990年に世に送り出した、縦スクロールシューティングとアクションゲームの要素が見事に融合した作品です。サイボーグ戦士となってエイリアンの脅威に立ち向かうという熱い設定と、任意スクロールとエナジー制限システムが生み出す独自の緊張感が、このゲームを単なるシューティングゲームの枠を超えた存在にしています。多彩な武器を切り替えながら、刻々と迫る時間制限の中でステージを攻略していくプレイ体験は、現代のゲームにおいても色褪せない魅力を持っています。その挑戦的な難易度と奥深いゲーム性は、当時のプレイヤーだけでなく、復刻版を通じて本作に触れる新しいプレイヤーにも、普遍的な楽しさと達成感を提供し続けているのです。
©1990 Toaplan
