AC版『エクイテス』変形機能で空と地を往く戦略シューティング

アーケード版『エクイテス』は、1984年にアルファ電子(後のADK)から発売された縦スクロールシューティングゲームです。最大の特徴は、自機である戦闘メカが、ロボット形態と飛行機形態の二つの形に変形し、空中と地上を切り替えて攻略を進めるという画期的なシステムにあります。この変形は、地上ショットボタンでロボット形態、空中ショットボタンで飛行機形態に切り替わり、それぞれの形態で地形の制約や攻撃方法が変化するため、状況に応じた戦略的なプレイが求められました。当時のアニメなどの影響を感じさせるメカのデザインと、二つの要素を融合させたゲーム性が、多くのプレイヤーの注目を集めました。

開発背景や技術的な挑戦

エクイテスが開発された1980年代中頃は、日本のアーケードゲーム市場が大きな盛り上がりを見せ、新しいアイデアや技術的な挑戦が次々と行われていた時代です。本作の最も大きな技術的挑戦は、自機の二つの形態と、それに対応する空中と地上の二重のゲーム性を、当時のハードウェアでスムーズに実現した点にあります。自機が変形するアニメーションや、それに伴う地形の描画、敵の挙動の切り替えなど、プログラム面での工夫が凝らされていました。特に、地上形態では障害物に阻まれる代わりに地上の扉に入る必要があり、飛行機形態では自由に移動できる代わりに地上物への攻撃が制限されるなど、単なるビジュアルの変化に留まらない、変形をコアなゲームシステムとして成立させるための設計がなされていました。この独創的なシステムは、開発チームの強い探究心と技術力が結実した成果と言えます。

プレイ体験

エクイテスのプレイ体験は、切り替えの妙に集約されます。縦スクロールで展開される戦場は、空中を飛ぶ敵と地上を歩く敵、そして岩や建造物といった障害物で構成されています。プレイヤーは、空中戦に特化した飛行機形態と、地上戦や特定のポイントへの侵入に特化したロボット形態を、一瞬の判断で使い分ける必要があります。飛行機形態では、広範囲を移動しながら空中敵を掃討できますが、地上にいる敵や構造物に直接攻撃を加えるにはロボット形態が有利です。特に、地上にある扉に入りパワーアップなどの恩恵を受けるためには、必ずロボット形態でなければなりません。このため、プレイヤーは高速で進むゲーム画面の中で、地上と空中の状況を常に把握し、適切なタイミングで変形と攻撃を行うという、高い戦略性と操作の精度が求められます。特殊兵器であるスーパーウェポンの使いどころも重要で、難易度の高い局面を乗り切るための鍵となります。単なる反射神経だけでなく、地形と敵の配置を読み解く知的な楽しさが際立っています。

初期の評価と現在の再評価

エクイテスは発売当時、その変形システムという斬新なアイデアで、ゲームセンターを訪れるプレイヤーや業界関係者から一定の注目を集めました。特に、当時の人気アニメなどの影響もあり、変形ロボットを操作するシューティングというコンセプトは非常に魅力的でした。しかし、ゲームとしての難易度の高さや、変形操作がもたらす複雑さが、一部のプレイヤーには敬遠された側面もあったようです。そのため、商業的には大ヒット作とまでは言えなかったかもしれません。しかし、現在のレトロゲームコミュニティにおいては、本作は時代を先取りした意欲作として再評価されています。後のゲームデザインに影響を与えた空中・地上切り替えシステムの独創性や、アルファ電子らしい個性が光るメカニックデザインと世界観が、コアなファンからの根強い支持を得ています。単なるシューティングゲームとしてではなく、メカアクションとしての側面も持つ作品として、その価値が見直されている状況です。

他ジャンル・文化への影響

エクイテスが確立した変形を軸としたゲームシステム、特に空中と地上の二重構造というゲームデザインは、後の多くのビデオゲーム開発者に影響を与えたと考えられます。自機の形態変化が、単なる攻撃方法の変化に留まらず、移動範囲や地形への干渉といった根本的なゲームルールそのものを切り替えるという発想は、シューティングゲームの枠を超えたメカアクションやアドベンチャーゲームのデザインにも応用される可能性を秘めていました。また、本作のエクイテスというタイトルは、古代ローマの騎士階級(エクイテス)に由来しており、この名称自体が、後の作品で騎士や兵士をモチーフとしたキャラクターやアイテム名としてオマージュされることもありました。直接的な影響としては、アルファ電子が後に開発するアクションゲームなどにも、変形や多形態を持つキャラクターが登場する例が見られます。

リメイクでの進化

エクイテスは、現代のハードウェア向けに大規模なリメイクが行われた例は多くありません。しかし、その独創的なゲームシステムは、後のオムニバス形式の移植作品や、レトロゲームコレクションなどに収録される形で、新しい世代のプレイヤーに体験される機会を得ています。これらの移植版では、オリジナル版の持つ独特の操作感やグラフィックを忠実に再現しつつ、現代的な環境での遊びやすさを追求するための機能が追加されることがあります。例えば、ゲームの途中から再開できるセーブ機能や、難易度を調整するディップスイッチ設定の変更などが可能です。完全なリメイクではなくとも、こうした形でオリジナル版の魅力が再認識され、歴史的な価値を持つ作品として受け継がれています。

特別な存在である理由

エクイテスがビデオゲーム史において特別な存在である理由は、その先駆的なゲームシステムにあります。1984年という早い時期に、自機の変形能力を空中と地上のゲームプレイを切り替える核心的な要素として採用した点は、非常に革新的でした。このシステムは、単調になりがちな縦スクロールシューティングに、戦略性とパズル的な思考を導入しました。プレイヤーに一瞬の判断力と操作精度、そして地形と敵のパターンを読み解く知性を要求するその設計思想は、後の多機能な自機を持つゲームのプロトタイプの一つと言えるでしょう。アルファ電子というメーカーの持つ独創性と、当時の熱狂的なゲーム開発の雰囲気を体現した、クリエイティビティの塊のような作品として、多くのレトロゲームファンから愛され続けているのです。

まとめ

アーケード版『エクイテス』は、自機のロボット・飛行機への変形をゲームの核とした、1984年の縦スクロールシューティングゲームです。空中と地上を切り替えて攻略する二重構造のゲーム性は、当時の技術的な挑戦の結晶であり、プレイヤーに高い戦略性と操作精度を要求する、奥深いプレイ体験を提供しました。初期の評価は賛否が分かれたものの、現在ではその革新的なシステムと独自のメカニックデザインが再評価され、時代を先取りした名作として特別な地位を占めています。隠されたパワーアップ要素なども相まって、熱心なプレイヤーの探求心を刺激しました。エクイテスは、単なるシューティングゲームというジャンルを超え、ビデオゲームの可能性を押し広げた歴史的な一作として、今後も語り継がれていくでしょう。

©1984 ALPHA DENSHI