アーケード版『ドンキーコング』は、1981年に任天堂(開発:Nintendo R&D1、プログラミング協力:池上通信機)からリリースされたアーケード向けプラットフォームゲームです。ジャンルとしては初期のプラットフォーマーであり、ステージクリア型のマルチスクリーン構成、個性的なキャラクター(ジャンプマン=後のマリオ、ドンキーコング、ポリーンなど)、特徴的なカットシーンやコミカルな音楽によって多くのプレイヤーを魅了しました。
開発背景や技術的な挑戦
本作は、任天堂の北米向けシューティングゲーム『Radar Scope』の在庫過多を打開するために企画されました。若手の宮本茂が初めてディレクターとして抜擢され、「コミックストリップ風の多彩なステージ進行」という斬新な設計を提案しました。開発にはZ80 CPUを搭載した既存ハードを活用し、3〜4人のプログラマーが短期間で仕上げています。当時は同一スクリーンのループが主流だった中で、4種類の異なるステージ構成やキャラごとのスプライト設計は先進的な試みでした。
プレイ体験
アーケード筐体で初めてプレイした際、その独特な緊張感と高揚感は格別でした。特にステージ2のエレベーターステージは、敵と移動床を見極めて高得点を狙う緻密な操作が求められます。ハンマーを使った無敵状態での敵破壊の爽快感や、リベットをすべて外してドンキーコングを落とす最終ステージの達成感など、随所に戦略的な魅力が散りばめられています。
評価の変遷
アーケード版『ドンキーコング』は、1981年に任天堂から登場し、ビデオゲームの歴史において重要な転換点となった作品です。特にプラットフォームゲームの基礎を築いたことで高く評価されており、今でも多くのゲームファンから愛される名作です。登場当時のインパクトと、今日に至るまでの影響力の大きさを考えると、総合的な評価は非常に高いものとなっています。現在でもアーケードゲームの傑作として紹介されることが多く、その歴史的価値は揺るぎないものです。
全体的な評価の中で、ポジティブな意見は約90%を占めており、ネガティブな評価は10%程度にとどまっています。高く評価されている理由は数多くありますが、まず第一にゲームデザインの斬新さが挙げられます。ジャンプアクションという新たな操作感、複数のステージを通して展開される構造、ストーリー性の導入などが、当時のアーケードゲームとしては非常に革新的だったのです。特に、主人公ジャンプマン(後のマリオ)がレディを救うためにドンキーコングの待つ塔を登るという設定は、プレイヤーに明確な目的意識と達成感をもたらしました。また、キャラクターの魅力や演出面も大きな強みとされています。ドンキーコングがレディをさらうオープニングや、各ステージ間に挿入される短いカットシーンは、物語性を感じさせる演出として画期的でした。このようなアプローチは、後の多くのゲームに大きな影響を与えたといわれています。加えて、当時としては高精細なグラフィックや音響も評価され、アーケード筐体としての完成度の高さがプレイヤーの満足度に直結しました。
一方で、ネガティブな評価にはいくつかの傾向があります。最も多いのは難易度に対する指摘で、ゲームオーバーになりやすく、初心者にはやや厳しいバランスとなっている点が挙げられます。また、現代のゲームに慣れたプレイヤーの一部からは、ゲーム構造が単調に感じられるという声もあります。加えて、ステージ数が限られており、長時間のプレイには向いていないとの意見も見られました。ただし、これらの指摘に対しては、当時のゲーム文化や技術的制約を踏まえて一定の理解を示す意見も多くあります。近年では「現代的にアレンジされた再構築版があっても良いのでは」といった改善要望が見られ、古典作品への敬意と共に、再発見の機会を求める声も少なくありません。
このゲームは、1980年代初頭のアーケード文化を体験したい人や、ゲーム史に興味を持つプレイヤーにとって理想的な選択肢です。特に、任天堂の原点やマリオの誕生に触れたい方には非常に魅力的であり、アーケードゲームの進化を肌で感じたい人には欠かせないタイトルです。さらに、スコアアタックやスピードランに挑戦するゲーマーにとっても、奥深いゲーム性がやり込み要素として機能します。
他ジャンル・文化への影響
『ドンキーコング』はプラットフォーマーというジャンルの基礎を築き、後続の横スクロールアクションゲームに大きな影響を与えました。また、家庭用ハードであるファミコンの設計思想にも技術的な影響を及ぼし、任天堂の企業成長にも直結しました。さらに、キャラクターやゲーム構造は映画・テレビ・音楽などのポップカルチャーでも引用され、その知名度は世界的に拡大しました。
リメイクでの進化
現代にリメイクされる場合、HDグラフィック化や演出の強化に加え、オンラインランキングやプレイヤーアシスト機能などが追加されると予想されます。さらに、オリジナルの世界観を損なわない形での新ステージやモードの導入により、往年のファンと新規プレイヤーの両方を満足させる内容が期待できます。
特別な存在である理由
『ドンキーコング』は、ストーリー性とキャラクター性を初めてアーケードゲームに融合させた記念碑的な作品です。技術革新と創造性が見事に融合したその完成度は、今なお多くのゲーム制作者やプレイヤーに影響を与え続けています。
まとめ
アーケード版『ドンキーコング』は、技術・デザイン・ゲーム体験・文化的意義のすべてにおいて革新的な存在でした。時代を超えて評価され続けるその魅力は、今後のゲーム文化においても重要な指標となることでしょう。
攻略

プレイヤーは、マリオ(当時は「ジャンプマン」)を操作し、巨大なゴリラ「ドンキーコング」にさらわれた恋人ポリーンを救うために、建設現場を模したステージを上へと登っていきます。ゲームの目的は、各ステージの最上部にいるポリーンの元へたどり着くことです。
ゲームは全4種類のステージで構成されています。第1ステージ「バレルステージ」では、ドンキーコングが投げてくる樽をジャンプで避けたり、ハンマーで壊したりしながら上へ登ります。第2ステージ「セメントパニック」では、動くリフトやセメント缶が障害となり、タイミングを見て足場を移動する必要があります。第3ステージ「エレベーターステージ」では上下するエレベーターと敵の炎を避けながら高所を目指します。第4ステージ「リベンジステージ」では、ドンキーコングが乗っている足場を支えるリベットをすべて外すことで、ポリーンを救出しステージクリアとなります。
ルールは単純で、各ステージのゴール地点まで到達すれば次のステージに進みます。ただし、バレルや炎などの敵に接触した場合、または高所から落下した場合はミスとなり、残機が減ります。残機がすべてなくなるとゲームオーバーです。また、各ステージには制限時間があり、時間切れもミス扱いになります。
4ステージをクリアすると再び第1ステージに戻り、難易度が上がった状態でループします。これにより、プレイヤーの反射神経と判断力が試されるアーケードゲームならではの緊張感が楽しめます。
『ドンキーコング』は、1981年に任天堂によって開発されたアーケードゲームです。このゲームは、ジャンプや様々な障害物を越えながら、建設現場を登り、巨大なゴリラ「ドンキーコング」からレディを救出するというものです。マリオの初登場作品。
『ドンキーコング』は、1981年に任天堂によって開発されたアーケードゲームです。このゲームは、ジャンプや様々な障害物を越えながら、建設現場を登り、巨大なゴリラ「ドンキーコング」からレディを救出するというものです。マリオの初登場作品。
ストーリー設定

このゲームはニューヨーク市の建設現場を舞台にしており、主人公の大工(後のマリオ)が恋人レディを誘拐したドンキーコングから救出するストーリーです。
プレイヤー

プレイヤーは主人公キャラクターの自機(後の「マリオ」)を操作します。ドンキーコングにさらわれた恋人のレディを救出するのが目的です。続編『ドンキーコングJR.』で「マリオ」と名付けられ、この名前が後にファミコン版にも反映されました。
ドンキーコング

本ゲームの敵役で、巨体のゴリラです。元々は主人公のペットでしたが、主人公をからかうために彼の恋人をさらい、工事中のビルに逃げ込みました。ゲーム内では主人公を妨害するためにタルを投げます。
レディ

レディは主人公の恋人で、ドンキーコングにさらわれます。50m以降の各ステージでバッグ、帽子、傘を落としていきます。当初は日本版・欧米版ともに「レディ」と呼ばれていましたが、アメリカのアニメで「ポリーン」という名前が与えられ、後にこの名前が欧米版のNES版にも反映されました。
ゲームシステム
『ドンキーコング』のゲームシステムを解説します。
ゲーム画面

画面の上部には、プレイヤーの現在のスコアと、ゲーム内で記録されている最高スコアを表示しています。プレーヤーのスコアの下付近には、残機をアイコンとして表示。右上にはレベル表示があり、これは現在のレベルを示しています。また、レベル表示の下にはボーナスポイントを示しており、時間内にクリアすると得られる追加ポイントです。画面の上部には、レディが囚われの姿で表示されています。レベル内にあるハンマーをとれば、一定時間、敵をハンマーで撃滅できます。
操作方法
操作方法は、方向レバーとジャンプボタンを使用します。プレイヤーはマリオを操り、障害物を避けたり、先に進んだりするためにジャンプを行います。ハンマーを使って敵を破壊することもできます。
得点
得点の仕組みは、制限時間に密接に関連しています。ゲーム開始時、プレイヤーは一定の制限時間スコアを持ち、時間が経過するにつれて100点ずつ減少します。しかし、周回ごとに時間の減少ペースが速くなり、実際の制限時間が短くなります。例えば、最初の周回では開始時5,000点で、2秒弱のペースで減少しますが、2周目では開始時6,000点で約1.5秒ペース、3周目では7,000点で1秒強ペース、4周目以降は8,000点で1秒ペースです。ただし、25mステージだけは約1.5秒ペースで減少します。
ステージ
『ドンキーコング』のステージは25mから始まり、50m、75m、100mの4面を順にクリアするループ制です。各ステージには特定のクリア条件があり、制限時間内に完了しないとミスになります。ステージごとに敵の攻撃が激しくなり、5周目が最高難易度となります。
25m

最初のステージです。このステージでは、斜めに配置された鉄骨を登り、上部にいるレディの元へと向かいます。途中、ドンキーコングが投げる樽や炎に注意しながら、梯子を駆け上がる必要があります。

障害物を上手く避けつつ、画面上部にあるレディの位置まで到達することが目標です。プレイヤーは樽や敵に触れたり、落下することなく迅速に動かなければなりません。
50m

ステージは、ベルトコンベアーのある工事現場です。このステージの目標は、一番上のベルトコンベアーに到達することです。

このステージには動くベルトコンベアーが複数あり、それらを慎重に渡りながら上に進まなければなりません。また、ドンキーコングが投げる火の玉やその他の障害物にも注意が必要です。
75m

エレベーターと動く床があります。エレベーターを使いながら上部へと進む必要があります。このステージでは、エレベーターの動きを正確に読み取り、ジャンプで障害物を避けながら上を目指します。動く床やドンキーコングが放つ弾丸など、様々な障害物がプレイヤーの進行を妨げます。

レディのいる最上部へと到達する必要があります。
100m

100mステージは、最終ステージであり、ドンキーコングを倒すために全ての鉄骨のビスを抜くことが目的です。

このステージでは、ドンキーコングに向かって進み、途中のビスを抜いていきます。

ビスを全て抜くことで、ドンキーコングは最上段から落下。レディと再会できます。
敵キャラクター
タル

25mステージで登場するタルは、ドンキーコングが転がす主な障害物です。通常の茶色いタルと青色の火薬樽の2種類があります。最初のタルは必ず火薬樽で、その後は8個ごとに火薬樽が登場します。タルは坂道に沿って転がり、ジャンプで飛び越えると点数が獲得できます(1個は100点、2個いっぺんに飛び越すと300点、3個では800点獲得)。通常のタルは特定の位置で逆方向に向かい、画面外へと消えます。
ひのこ

ひのこは25mから75mのステージに出現します。25mでは火薬樽がOIL缶と衝突するごとに、50mでは焼却炉から最大5体、75mでは定位置から2体が出現します。ランダムに動くひのこはジャンプで避けることができます。ハンマーを取るとひのこの色が青く変わります。
セメント

50mステージのベルトコンベア上で流れるセメントをジャンプで飛び越えることはできません。ベルトコンベアの進行方向は一定時間で反転するため、その点に注意が必要です。
ジャッキ

75mステージで出現するジャッキは、ドンキーコングの左側から出現し、右側で跳ねながら落下します。レベル5以降ではジャッキの出現位置を見極めることが重要で、クリアの成否に影響を及ぼします。
おじゃま虫

100mステージに最大5体出現するおじゃま虫は、ジャンプで飛び越えることはできますが、移動パターンが予測しづらいため高難易度です。
ビス

100mステージには8本のビスが存在し、プレイヤーが通過することでビスが外れ、穴が開きます。ビスが外れた箇所はおじゃま虫が通過できず、プレイヤーもジャンプで越えないと落下してミスになります。このビスを全て外すとステージクリアとなります。
データ
このゲームのデータです。
発売年 | 1981 |
プラットフォーム | アーケード |
ジャンル | アクション |
プレー人数 | 1-2人(交互) |
メーカー | 任天堂 |
開発会社 | 任天堂 |
プロデューサー | 横井軍平 |
ディレクター | 宮本茂 |
シナリオ | 宮本茂 |
グラフィック | 宮本茂 |
サウンド | 兼岡行男、田中宏和 |
このゲームの移植タイトルは下表の通りです。
発売年 | プラットフォーム | タイトル(移植時) |
---|---|---|
1982年 | コレコビジョン | ドンキーコング |
1982年 | インテリビジョン | ドンキーコング |
1983年 | アタリ2600 | ドンキーコング |
1983年 | ファミリーコンピュータ | ドンキーコング |
1983年 | コモドール64 | ドンキーコング |
1983年 | アタリ8-bit | ドンキーコング |
1983年 | Apple II | ドンキーコング |
1983年 | IBM PC | ドンキーコング |
1983年 | TI-99/4A | ドンキーコング |
1986年 | アムストラッド CPC | ドンキーコング |
1988年 | アタリ7800 | ドンキーコング |
2004年 | ゲームボーイアドバンス | ドンキーコング-e(e‑Reader版)/クラシックNESシリーズ:ドンキーコング |
2018年 | Nintendo Switch | アーケードアーカイブス ドンキーコング |
© 1981 Nintendo