アーケードゲーム版『クライムファイターズ』は、1989年7月にコナミから発売されたベルトスクロールアクションゲームです。当時の流行に乗った犯罪都市を舞台としたタイトルであり、シカゴ市警の特捜チーム「クライムファイターズ」が女性連続誘拐事件の解決のために街のギャングと戦うというストーリーになっています。最大4人での同時協力プレイに対応した筐体が存在したことが最大の特徴の1つであり、多人数でのカオスながらも熱い共闘体験を提供しました。
開発背景や技術的な挑戦
当時のアーケードゲーム市場では、『ダブルドラゴン』をはじめとするベルトスクロールアクションゲームが人気を博しており、コナミもこのジャンルに参入しました。『クライムファイターズ』は、その中でも特に多人数同時プレイに力を入れた作品として開発されました。最大4人同時プレイは、ベルトスクロールアクションゲームとしては非常に珍しく、技術的な挑戦であったと考えられます。複数のキャラクターと多数の敵が同時に画面内で動作するため、処理落ちなどを避けるための工夫がなされたことが予想されます。また、ライバル作品を意識しつつも、背景の演出や敵の多彩なリアクションなど、グラフィック面や演出面でのこだわりも随所に感じられます。
プレイ体験
本作のプレイ体験は、武器の重要性と緊張感のあるゲームバランスに集約されます。プレイヤーは初期状態では素手ですが、敵を倒したりステージのオブジェクトから得られる武器を手に入れることで、一気に優位に立つことができます。武器のダメージは非常に高く設定されていますが、敵から1度でも攻撃を受けると武器を失ってしまうため、武器を維持しながら戦うことに独特の緊張感が生まれます。特にピストルなどの銃器を手に入れた際の爽快感と、その後のゲーム展開は他のベルトスクロールアクションゲームにはないカタルシスを提供します。難易度は高めで、ライフゲージが限られているうえ、多人数プレイではさらに難しくなる傾向がありますが、それゆえに何度もコインを投入して挑戦したくなる魅力がありました。また、当時のゲームとしては珍しく、ダウン攻撃やレバー入れ攻撃など、操作に慣れることでできるテクニックが存在し、より深い戦略性を持ってプレイすることができました。
初期の評価と現在の再評価
『クライムファイターズ』は、登場した当初からその最大4人同時プレイという革新的な要素で注目を集めました。同時期の他のアクションゲームと比較して難易度が高いという声もありましたが、多人数で協力して困難を乗り越える楽しさが評価されていました。現在の再評価においては、そのピーキーなゲームバランスや過剰なまでの暴力性表現が、逆に個性的で魅力的な要素として捉えられています。単なるフォロワー作品としてではなく、独自の操作感や武器のシステム、そして何よりも多人数プレイの楽しさが再認識され、ベルトスクロールアクションゲームの歴史を語る上で欠かせない1作として評価されています。特に、アーケードアーカイブスとして移植されたことにより、当時の熱狂を現代のプレイヤーも体験できるようになっています。
他ジャンル・文化への影響
『クライムファイターズ』が最も大きな影響を与えたのは、同じコナミから後に発売されたベルトスクロールアクションゲームのラインナップでしょう。特に、後の『クライムファイターズ2』や『ティーンエイジ ミュータント ニンジャ タートルズ』などの多人数同時プレイを特徴とするコナミのベルトスクロールアクションの礎を築いた作品の1つと言えます。最大4人同時プレイというフォーマットは、友人たちとゲームセンターで熱狂を共有するという文化的な側面にも影響を与えました。また、ベルトスクロールアクションゲームというジャンルにおける武器の持つ重要性や、敵の倒れ方などの演出へのこだわりは、後続の作品にも何らかの形で影響を与えた可能性があります。
リメイクでの進化
『クライムファイターズ』には、厳密な意味でのリメイク作品は存在しませんが、続編として1991年に『クライムファイターズ2』がアーケードで登場しています。続編では、前作で色違いの同一キャラクターだったプレイヤーキャラクターが、それぞれ個性的な4人から選べるようになり、体力回復アイテムも導入されるなど、ゲームシステムが大きく進化しています。また、オリジナルのアーケード版『クライムファイターズ』は、後にアーケードアーカイブスとしてPlayStation 4やNintendo Switchなどの現行プラットフォームに移植され、当時の雰囲気を再現しつつ、オンラインランキング機能などを追加して現代に蘇っています。これは、本作のゲームとしての価値が再評価された結果と言えます。
特別な存在である理由
このゲームが特別な存在である理由は、その最大4人同時プレイという仕様に尽きます。当時のベルトスクロールアクションゲームの多くは2人プレイまででしたが、本作は3人、あるいは4人で1つの画面を共有し、協力して敵を倒していくという、熱気あふれるゲーム体験をゲーセンにもたらしました。また、武器を失うリスクと引き換えに得られる強力な攻撃力、そして敵のリアクションの細かな演出や、2周目以降の真エンディングといった要素が、単なる追従作ではなく、独自の魅力を確立しました。この挑戦的なゲームデザインと、多人数でのプレイが織りなすドラマが、多くのプレイヤーの記憶に深く刻まれることになったのです。
まとめ
アーケード版『クライムファイターズ』は、1989年にコナミが放った、ベルトスクロールアクションゲームの意欲作です。特に最大4人同時プレイという当時の常識を打ち破る要素は、ゲームセンターに新たな活気をもたらしました。武器を巡る攻防や、難易度の高さから生まれる緊張感は、他の作品では味わえない独特のプレイ体験をプレイヤーに提供しました。その後のコナミのアクションゲームにも影響を与えたであろう本作は、時代を超えて現在もアーケードアーカイブスとして楽しまれ続けています。挑戦的でヒリヒリとした魅力に満ちた1本として、アクションゲーム史において重要な地位を占めていると言えるでしょう。
©1989 コナミ