アーケード版『フラック・アタック』は、1987年8月にコナミから発売された縦スクロールシューティングゲームです。開発はコナミの開発1課が担当しました。プレイヤーはラフアニス国の最新鋭戦闘機「MX5000」を操縦し、世界征服を企むテザリス帝国の巨大中枢コンピューター「Zeda-X」の破壊を目指します。本作の最大の特徴は、対空ショットと対地ショットを2つの独立したボタンで撃ち分ける操作システムにあります。また、敵を破壊することで得られる経験値によって自機がパワーアップしていく経験値式の成長システムも採用されており、当時のシューティングゲームとしては異色の要素を持っていました。重厚なミリタリーテイストの世界観と、コナミ矩形波倶楽部による高品質なBGMも本作の魅力を高めています。
開発背景や技術的な挑戦
当時のアーケード市場では、コナミからは同じく1987年に『A-JAX』などの派手な演出を持つ作品がリリースされており、その中で『フラック・アタック』は、やや硬派なミリタリー路線を追求する形で開発されました。本作の技術的な挑戦の1つは、対空と対地の撃ち分けを快適に行えるようにする操作性の確立です。これを実現するために、1レバーと2ボタンというシンプルな構成を採用しつつ、それぞれのショットの役割を明確にしました。また、多関節の巨大ボスの表現や、ステージの最初やボス戦前などに挿入される無線通信の演出といった、世界観を深く表現するための細やかな演出にも力が入れられています。特に、コナミ矩形波倶楽部によるBGMは、基板の性能を活かしつつ、戦場を駆ける臨場感と熱さを伝える高品質なサウンドで、作品の雰囲気を大きく盛り上げることに成功しています。
プレイ体験
プレイヤーは、空中からの敵機や敵弾に対しては対空ショットを、地上に設置された砲台やミサイルに対しては対地ショットを使用します。この2種類の攻撃を状況に応じて瞬時に切り替える必要があり、これが戦略性の高い独特なプレイ体験を生み出しています。ただ敵を倒すだけでなく、どの敵にどのショットを使うかを判断する高い集中力と判断力が求められます。また、敵を破壊して得られる経験値が一定量に達すると、自機の武装がパワーアップするというシステムも、プレイヤーに継続的なモチベーションを与えます。全5ステージを2周するという構成で、ステージを重ねるごとに敵の攻撃が激化し、特に2周目では難易度が格段に上がり、アーケードゲームらしい緊張感と達成感のある体験を提供しています。ボス戦では自機の移動が16方向に増えるなど、細かな操作性の変化も盛り込まれています。
初期の評価と現在の再評価
『フラック・アタック』は、発売当時のアーケードゲームとしては、同じコナミの『A-JAX』などと比較して、地味な印象を持たれることもあり、一部ではマイナーな作品として扱われることもありました。しかし、その独特な撃ち分けシステムと、経験値による成長要素は、当時のシューティングゲームとしては新鮮であり、熱心なプレイヤーからは硬派で骨太な良作として評価されていました。現在の再評価としては、アーケードアーカイブスとして家庭用ゲーム機に移植されたことにより、その高いゲーム性と完成度が改めて注目されています。特に、その絶妙な難易度バランスや、コナミ黄金期の秀逸なドット絵とBGMは、レトロゲームファンから隠れた名作として再認識され、現在でも多くのプレイヤーに愛されています。
他ジャンル・文化への影響
『フラック・アタック』は、対空と対地の攻撃を使い分けるというシステムを採用したことで、後のシューティングゲームにおける攻撃手段の多様化に影響を与えた可能性があります。この要素は、単調になりがちな縦スクロールシューティングに戦術的な深みをもたらしました。また、ミリタリーの世界観を忠実に表現したドット絵の質感や、重厚感のあるBGMは、同じくミリタリーや戦闘機をテーマとした他のゲームにも表現面でのインスピレーションを与えた可能性があります。しかし、当時のコナミの他の大ヒット作と比較すると、文化全体への影響は限定的であったかもしれませんが、コアなシューティングファンの間では、撃ち分けシステムを持つゲームの原点の1つとして、その存在が語り継がれています。
リメイクでの進化
『フラック・アタック』は、オリジナルのアーケード版稼働から長らく家庭用ゲーム機への移植が行われていませんでした。そのため、完全なリメイク版は現在に至るまで発売されていません。しかし、前述のようにアーケードアーカイブスシリーズの1つとして、PlayStation 4やNintendo Switchといった現代のプラットフォームに忠実に移植・復刻されました。この復刻版では、オリジナル版のゲーム性やグラフィック、サウンドが完璧に再現されているだけでなく、ハイスコアを競うオンラインランキング機能や、ゲーム設定を細かく変更できるカスタム設定機能、ゲームプレイを中断して再開できるセーブ機能など、現代のプレイヤーが快適に遊べるよう機能的な進化が加えられています。これにより、オリジナル版を知らない若いプレイヤーも、名作の魅力を体験できるようになりました。
特別な存在である理由
『フラック・アタック』が特別な存在である理由は、その独自のゲームデザインにあります。対空・対地の撃ち分けというシンプルなルールでありながら、それを極限まで突き詰めた高い戦略性と、敵を倒すことで成長する経験値システムの融合は、当時のシューティングゲーム界において際立った個性を放っていました。また、緻密に描かれたドット絵と、情熱的なコナミサウンドが織りなすミリタリーの世界観は、プレイヤーをゲームの中に深く引き込みます。一見地味に見られがちですが、その奥深いゲーム性は、一度プレイしたプレイヤーに忘れがたい体験を提供し、後に続くシューティングゲームの多様な進化の可能性を示した作品として、特別な地位を占めているのです。
まとめ
アーケード版『フラック・アタック』は、1987年にコナミから登場した、対空・対地の撃ち分けと経験値によるパワーアップという2つの要素が特徴的な縦スクロールシューティングゲームです。プレイヤーは最新鋭戦闘機「MX5000」に乗り込み、テザリス帝国の打倒を目指します。その硬派なミリタリーテイストと、当時の技術を活かした重厚なサウンドは、往年のコナミ作品らしい高い完成度を誇ります。発売当初は他の作品の陰に隠れがちでしたが、その挑戦的なゲームシステムは、現在、復刻版を通じて多くのプレイヤーに再発見され、時代を超えた名作として評価されています。その独自のプレイ体験と質の高い表現は、今なお色褪せない魅力を持っています。
©1987 株式会社コナミ
