アーケード版『エクスターミネーション』難関サバイバルシューティング

アーケード版『エクスターミネーション』は、タイトーから1987年4月にリリースされたアクションシューティングゲームです。開発もタイトーが担当しており、当時のアーケード市場において、縦スクロールシューティングのジャンルに独自の要素を導入した意欲作として知られています。西暦2026年を舞台に、人類が自ら生み出したミュータントによって滅亡の危機に瀕する中、プレイヤーは人類の存続をかけたミッションとして、捕らわれの「人類最後の女性」を救出するために戦います。本作の最大の特徴は、一般的なシューティングゲームが採用していた残機(ミス回数)制ではなく、体力が数字で表示されるライフ制を採用している点です。初期ライフ3000から始まり、敵の攻撃や接触でダメージを受けますが、敵を倒すと出現する回復アイテムを収集することでライフを維持しながらステージを進めていくシステムが、他の同ジャンル作品とは一線を画していました。8方向レバーと2つのボタンでプレイヤーキャラクターを操作し、4つのオプション(追加武装)やパワーアップアイテムを駆使して全8ステージのクリアを目指します。

開発背景や技術的な挑戦

『エクスターミネーション』は、タイトーのThe New Zealand Storyのハードウェアをベースに開発されました。この専用基板は、Z80をメインCPUとして複数搭載し、音源にはFM音源チップであるYM2203を使用するなど、当時のアーケードゲームとしては標準的かつ高性能な環境を提供していました。このハードウェア性能を活かし、本作では縦スクロールシューティングでありながら、地上を歩行するプレイヤーキャラクターを操作するアクション要素の強いゲーム性を実現しています。技術的な挑戦としては、滑らかな強制縦スクロールを実現しつつ、多くの敵キャラクターや弾、アイテムを同時に表示する必要がありました。また、プレイヤーが左右の立ち位置によってグラフィックが変化したり、2人同時プレイ時に2人のキャラクターが並ぶポーズを取ったりするなど、細かなアニメーション表現にも力が入れられています。ライフ制の導入は、プレイヤーが多少の被弾を許容しつつ、回復アイテムの収集と、オプションの維持・管理に戦略の軸を置くという、従来のシューティングとは異なるプレイスタイルを生み出すための大きな挑戦でした。ステージクリア時に特定条件を満たすことで次のステージを選択できるシステムも、リプレイ性を高めるための工夫の1つです。

プレイ体験

プレイヤーは8方向レバーで自機を操作し、地上を歩行しながら、ミュータント化した敵と戦います。強制縦スクロールの進行に合わせて、出現する敵を通常ショットで撃破し、アイテムを回収していきます。基本的な戦闘は標準的な縦スクロールシューティングに近いですが、残機ではなくライフ制であるため、ライフの残量管理が非常に重要です。敵を倒すと出現する数十ポイントのライフ回復アイテムを、いかに取りこぼさずに回収し続けるかが、ゲームの鍵となります。プレイヤーは最大で4つのオプション(追加武装)を装備でき、これが攻撃力の要となりますが、敵の攻撃でパワーダウンさせられる要素も存在するため、パワーアップ状態の維持が非常に困難でシビアなプレイ体験をもたらします。特に後半ステージでは、パワーダウンを狙う敵が多く出現するため、一瞬の油断も許されない高い集中力が求められます。また、固い敵やボスへの体当たりは超危険で、一度に大ダメージを受けるため、敵との距離を常に意識した立ち回りが不可欠です。斜め移動は縦横移動を同時に行うことで速くなるため、移動速度を活かした画面左右端の往復によるザコ敵の殲滅が、攻略の基本戦術となります。総じて、本作のプレイ体験は、高い難易度と独自のライフ・パワーアップシステムによって、緊張感と達成感を兼ね備えたものとなっています。

初期の評価と現在の再評価

『エクスターミネーション』は、当時のアーケードゲーム市場において、他の著名なシューティングゲームと比較して一般的な知名度はそれほど高くなかったとされています。家庭用への移植や続編がなかったことも、その要因の1つと考えられます。しかし、その独自のライフ制とアクション性の強いゲームシステムは、一部のゲームセンターやコアなプレイヤーの間で密かな人気を博していました。当時の評価としては、パワーアップをしないとすぐに詰むほどの難易度の高さが指摘されることが多かったようです。特に後半のパワーダウンを仕掛けてくる敵の多さや、手強いラスボスは「鬼仕様」と表現されることもありました。現在の再評価においては、その独自のシステムと高い挑戦性が再認識されています。単純なシューティングにとどまらない、アイテム管理やオプション維持の戦略性、そしてステージ内の地下室に入れる隠し通路といった探索要素が、改めて注目されています。また、後のアクションアドベンチャーゲームに通じるような、体力回復アイテムを収集しながら進むサバイバル的な要素を、縦スクロールシューティングに取り入れた先見性も評価されています。マイナーながらも、そのシステムには光るものがあり、難しさを乗り越えたときの達成感が大きい作品として、レトロゲームファンから支持されています。

他ジャンル・文化への影響

『エクスターミネーション』は、家庭用ゲーム機への移植や続編に恵まれなかったため、直接的なタイトルとしての影響力は限定的です。しかし、そのゲームシステムが持つ独自性は、後のゲームデザインに間接的な影響を与えた可能性があります。特に、「残機なしのライフ制」を採用し、敵を倒すことで回復アイテムが出現し、それを集めて体力を維持するというスタイルは、後のアクションゲームやサバイバル要素を持つゲームに見られる傾向と共通しています。このシステムは、プレイヤーに「1発のミスで即終了」というプレッシャーではなく、「いかにライフを効率よく回復させながら前に進むか」という持続的な戦略的思考を促しました。また、地上を歩行するキャラクターが強制スクロールで進むという形式は、「戦場の狼」のような任意スクロール型のアクションゲームと、「ゼビウス」のような純粋な縦スクロールシューティングの中間に位置する独自のジャンルを形成していました。ストーリー面では、「人類が作り出したミュータントによる滅亡の危機」という設定が、当時のSFホラーやパニック映画の流行を反映しており、後のクリーチャー系サバイバルアクションのプロトタイプ的な要素を含んでいたと言えます。

リメイクでの進化

アーケード版『エクスターミネーション』は、公式なリメイク作品は存在しません。ただし、タイトル名が同じであるプレイステーション2向けに2001年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売された同名のタイトルがありますが、これはジャンルや内容が全く異なる、南極の秘密基地を舞台としたサバイバルホラーアクションアドベンチャーゲームです。アーケード版の強制縦スクロールシューティングというジャンルや、ライフ制、オプションシステムなどの要素は、PS2版には引き継がれていません。したがって、アーケード版のゲーム性を継承した形での「リメイクによる進化」について語ることはできませんが、もし現代の技術でリメイクされるとすれば、当時の2Dドット絵の雰囲気を活かしつつ、ライフ回復アイテムの取得エフェクトや、4つのオプションの弾幕表現がより派手になるなど、オリジナルの魅力を拡張する形での進化が期待されるでしょう。

特別な存在である理由

『エクスターミネーション』が特別な存在である理由は、当時のアーケードゲーム市場において、縦スクロールシューティングという確立されたジャンルの中で、革新的なゲームシステムを導入した点にあります。残機制が主流であった時代に、ライフ制を採用し、回復アイテムの回収を攻略の核としたことは、プレイヤーに新しい緊張感と戦略性を求めました。これにより、単なる反射神経だけでなく、アイテム管理とリスクマネジメントの能力が問われることになりました。また、難易度は非常に高いものの、全ての地下室を発見することでステージセレクトが可能になるなど、隠された探索要素が用意されており、ゲームの奥深さを増していました。マイナーでありながらも、そのコアなゲームデザインは、一部の熱狂的なファンに深く愛され続け、タイトーのゲーム開発における多様性を示す一例となっています。特定の層に強く響く独自の魅力を持ち、今なお語り継がれる知る人ぞ知る名作として、特別な地位を占めているのです。

まとめ

アーケード版『エクスターミネーション』は、1987年にタイトーから登場した、ライフ制とアクション要素を融合させた独自の縦スクロールシューティングゲームです。ミュータントとの戦いを描いた近未来的な世界観の中で、プレイヤーはライフを維持し、オプションを最大限に活用しながら全8ステージを戦い抜くことになります。その極めて高い難易度は、当時のプレイヤーに大きな挑戦をもたらしましたが、ステージセレクトにつながる隠し要素など、リプレイ性を高める工夫も随所に凝らされています。商業的な大成功を収めたタイトルではありませんが、その独自のゲームデザインは、後のゲームシステムに間接的な影響を与えた可能性を秘めており、レトロゲームファンにとっては、今なおプレイする価値のある、個性の光る秀作と言えます。過酷な戦場での持続的な生存戦略を要求する本作は、ゲーマーの心に深く刻まれる特別な体験を提供してくれました。

©1987 タイトー