AC版『エクセライザー』7段変形とパワー残量が熱い!

アーケード版『エクセライザー』は、1987年3月にジャレコから発売されたシューティングゲームです。本作は、ジャレコの代表作の1つである前作『エクセリオン』の続編として位置づけられています。前作で特徴的だった自機の慣性操作が廃止され、より直感的な操作感となり、新たなプレイ体験を提供しました。プレイヤーは超可変戦闘機「エクセライザー」を操作し、外宇宙から迫る脅威を阻止することが目的となります。特徴的なシステムとして、弾数無制限のミサイルとパワーを消費して連射できるビームの2種類の武器を使い分けること、そして敵を撃墜して得られるパワー残量に応じて自機が7段階に変形・パワーアップし、ビームの同時発射数が増加する「パワー残量システム」が挙げられます。表示される自機や敵キャラクターが大きいのも特徴の1つです。なお、本作は海外では「Sky Fox」というタイトルで稼働しました。

開発背景や技術的な挑戦

『エクセライザー』の開発は、前作『エクセリオン』のヒットを受け、その後継作として進められました。前作で革新的であった「慣性」の概念が、一部のプレイヤーにとっては難解に感じられた点を受け、本作ではあえて慣性を廃止し、操作性をより快適にすることを目指しました。これは、当時のシューティングゲーム市場における幅広いプレイヤー層へのアプローチという、1つの技術的かつ設計的な挑戦であったと言えます。

また、当時のアーケードゲームとしては、自機がパワー残量に応じて7段階にも変形し、グラフィックが変化するシステムは目を引くものでした。この多段階変形システムは、グラフィック処理やゲームロジックの面で開発チームに高い負荷をかけたことが推測されます。具体的には、自機の変形アニメーションや、それに伴う移動速度やビームの発射ロジックを、滑らかかつ正確に実現するための挑戦がありました。背景面が前作の擬似3Dスクロールから、星が流れるシンプルな宇宙空間の構成に変更されたことは、ゲーム性の変更や、他の処理にリソースを割くための調整であった可能性も考えられます。

プレイ体験

『エクセライザー』のプレイ体験は、パワーアップと変形を軸とした独自の緊張感に満ちています。プレイヤーは、弾数無制限で連射が効かないミサイルと、パワーを消費するが連射でき、強力なビームを状況に応じて使い分ける戦略性が求められます。

最も特徴的なのは、ビームの使用とパワー残量の管理です。ビームを撃つたびにパワーを消費するため、乱発はできません。敵を撃墜して出現するパワーパーツを回収することでパワーが補充されますが、パワーが減少して変形段階が下がると、火力が低下し、敵の猛攻に対処しづらくなります。このため、プレイヤーはリスクとリターンを天秤にかけながら、強力なビームを使うタイミングと、確実にパワーパーツを回収するルートを判断する必要があります。最大段階である7段階目でのビームの同時発射は爽快ですが、その分消費パワーも多くなるため、常にパワーを維持するための繊細な操作と判断力がプレイヤーには要求されます。

前作とは異なり、自機の操作性に慣性がないため、直感的に操作できる点は快適ですが、その分、敵弾の回避や精密な位置取りが重要となり、ゲーム全体の難易度は高いと言えます。

初期の評価と現在の再評価

『エクセライザー』は、発売当初、前作『エクセリオン』の続編として、そしてジャレコの新作シューティングゲームとして注目を集めました。前作の代名詞であった慣性操作の廃止については、前作ファンからの評価が分かれる点となりましたが、操作性が向上したことで、より多くのプレイヤーが遊びやすくなったという評価も得ました。

特に、パワーアップによる自機の形態変化と、それによる火力増加の爽快感は、当時のプレイヤーに強く印象づけました。パワーを消費して機体性能を維持するという、一進一退のゲームバランスが、独自の緊張感を生み出している点が評価されました。

現在では、本作はレトロゲームコミュニティにおいて、知られざる名作、隠れた佳作として再評価されることがあります。家庭用ゲーム機への移植が長らく行われていなかったこともあり、アーケードゲームセンターでしか体験できない希少性の高いタイトルとして、当時のゲーマーの記憶に残る作品となっています。特に、パワー管理と変形システムの独自のゲーム性が、他のシューティングゲームにはない魅力として、現代のプレイヤーからも注目されることがあります。

他ジャンル・文化への影響

『エクセライザー』が直接的に他のビデオゲームジャンルや一般文化に与えた影響について、特筆すべき大規模なものは確認されていません。しかし、本作の持つ独自のシステムは、後のビデオゲームデザインに間接的な示唆を与えた可能性があります。

パワー残量の概念と、それが直接的に機体の変形や火力といった能力に結びつくシステムは、後のシューティングゲームやアクションゲームにおけるリソース管理と多段階パワーアップのデザインに影響を与えた可能性があります。特に、単にアイテムを取得してパワーアップするだけでなく、強力な攻撃を行う際にリソースを消費し、その管理自体がゲームプレイの核となる仕組みは、後発のゲームにおけるバランス調整の参考になったかもしれません。

また、前作の「慣性」という要素から一転し、「パワー残量と変形」という新たな個性を打ち出したことは、既存シリーズの続編における大胆なゲームシステムの変更の1つの事例として、開発者文化の中で語られることがあります。

リメイクでの進化

アーケード版『エクセライザー』は、2024年現在、主要な家庭用ゲーム機へ単独で移植されたり、リメイクされたという情報は確認されていません。そのため、本作がリメイク版でどのような進化を遂げたかについて言及することはできません。

もし将来的にリメイクや移植版が開発されることがあれば、アーケード版の持つ独特のパワー残量システムや変形ギミックを、最新のグラフィック技術でどのように表現するかが焦点になるでしょう。また、操作性を保ちつつ、現代のプレイヤーの嗜好に合わせた難易度調整や、新たなゲームモードの追加などが、リメイク版における進化のポイントとなり得ます。

例えば、オンラインランキングの実装や、初心者向けのトレーニングモード、あるいは「慣性」を復活させたクラシックモードなど、オリジナル版の魅力を損なわない形での進化が期待されます。

特別な存在である理由

『エクセライザー』が特別な存在である理由は、その独自のリソース管理と多段階変形を組み合わせたゲーム性にあります。単なる弾幕の回避や敵の撃破に留まらず、パワー残量という有限のリソースをビームの使用と機体性能の維持に振り分けるという、戦略的な判断が求められる点が、他のシューティングゲームとは一線を画しています。

このシステムは、プレイヤーに常に「攻め」と「守り」のバランスを考えさせ、一瞬たりとも気が抜けない緊張感を生み出しました。また、前作『エクセリオン』の慣性という大きな特徴をあえて外し、全く新しい個性を打ち出した続編であるという点も、開発における特別な挑戦の証です。

さらに、家庭用ゲーム機への移植が極めて少ないため、アーケードゲームセンターという限られた空間での体験が、当時のプレイヤーにとって特別な思い出として残っていることも、本作を特別な存在にしている1つの要因です。

まとめ

アーケードゲーム『エクセライザー』は、1987年にジャレコが世に送り出した、前作の伝統にとらわれない革新的なシューティングゲームです。パワー残量に応じて自機が変形・パワーアップし、そのパワーを強力なビームの使用で消費するという、独特なリソース管理システムが、ゲームプレイに深い戦略性と緊張感をもたらしました。

操作性の向上と、ダイナミックな自機の変形グラフィックは、当時のプレイヤーに強烈な印象を与え、後のビデオゲームデザインにも間接的な影響を与えた可能性があります。現在では、移植の少なさから、アーケード文化を語る上で貴重な1作として再評価されています。その独自のゲームシステムは、今なお色褪せない魅力を持っており、挑戦しがいのあるシューティングゲームとして、熱心なプレイヤーに語り継がれています。

©1987 ジャレコ