アーケード版『フォーメーションZ』は、1984年7月にジャレコから発売された横スクロールシューティングゲームです。開発はカワ電子技研が担当しました。本作の最大の特徴は、プレイヤーが操作する自機イクスペルが、人型のロボット形態と高速移動が可能な戦闘機形態に変形できるという点にあります。この形態可変システムを駆使し、敵軍の機動要塞ジズィリアムを撃破することがプレイヤーの目的です。当時流行していた変形ロボットアニメの影響を強く受けたメカデザインと、地上と空中をシームレスに行き来するゲーム性は、多くのプレイヤーに新鮮な驚きを与えました。
開発背景や技術的な挑戦
1980年代前半、アニメーションの世界ではリアルロボット路線や変形・合体メカがブームとなっており、その影響はビデオゲーム業界にも波及していました。『フォーメーションZ』は、まさにこの時代の潮流を捉えて企画されました。技術的な挑戦としては、自機の変形システムの実現が挙げられます。当時のアーケード基板の性能の中で、人型ロボットと戦闘機という全く異なる2つの形態のグラフィックをスムーズに切り替え、それぞれの形態に応じた操作感と挙動を違和感なく表現することは、非常に高度なプログラミング技術を要しました。また、エネルギーの概念を取り入れ、飛行形態での移動にはエネルギー消費を伴うシステムを採用したことも、単なるシューティングゲームではない、戦略的な要素をプレイヤーに提供する挑戦でした。地上、海上、宇宙へと連続して変化していく背景の強制横スクロール描写も、当時の技術水準においては複雑な処理を必要としていました。
プレイ体験
プレイヤーは、変形可能な戦闘メカイクスペルを操り、迫り来る敵機を破壊しながら右方向へ進んでいきます。基本的な攻撃はパルスレーザーですが、ボタンを長押しすることでビッグバンと呼ばれる強力な溜め撃ちを使用できます。このビッグバンは、耐久力の高い敵や、ステージの区切りに登場する大型の敵を破壊するために不可欠な要素です。プレイの肝となるのは、地上形態(ロボット)と空中形態(戦闘機)の使い分けです。地上形態はジャンプ操作が可能で、精密な操作が求められる場面に適していますが、空中形態に比べて移動速度が遅いです。一方、空中形態は高速移動が可能で一気にステージを進める利点がありますが、エネルギーを消費するため、エネルギー切れを起こすと墜落してしまいます。このエネルギー管理と、敵の配置、地形に応じて瞬時に変形を判断する戦略性が、本作のプレイ体験を特徴づけています。特に、海上では地上形態のままだと即座にミスとなるため、空中形態への変形が必須となり、プレイヤーは常に緊張感を強いられます。
初期の評価と現在の再評価
『フォーメーションZ』は稼働開始当初、変形ロボットという当時のトレンドに乗ったユニークなコンセプトと、それを実現した滑らかな変形アニメーションによって、ゲームセンターで一定の注目を集めました。その後の家庭用ゲーム機への移植も相まって、広く認知されることとなりました。しかし、ゲームの難易度の高さや、操作性に関する一部のクセが、初期のプレイヤーからは賛否両論となる要因でもありました。特に、地上形態のジャンプの遅さや、戦闘機形態でのスクロールの速さに対する自機の相対的な動きの遅さが、プレイヤーのストレスになるという声もありました。現在においては、レトロゲームの再評価の流れの中で、本作は「変形ロボットゲームの黎明期における重要な作品」として、その革新性が改めて評価されています。制約の多い当時のハードウェアで、この変形という要素を取り入れたジャレコの意欲的な取り組みと、独特のゲームバランスを持つオールドスクールなシューティングゲームとして、多くのファンに愛され続けています。
他ジャンル・文化への影響
『フォーメーションZ』が他ジャンルや文化へ与えた影響は、主に変形メカを題材としたビデオゲームの先駆けの1つとなった点にあります。本作の成功は、ロボットが戦闘機などに変形するというアイデアが、ゲームプレイに新たな深みと戦略性を与えることを証明しました。これは、後の可変型ロボットをテーマにしたシューティングゲームやアクションゲームに、少なからず影響を与えたと考えられます。アニメや特撮などの既存文化からの影響を受けている一方で、そのアイデアをプレイヤーが操作するという形でゲームに落とし込んだことは、ロボットアクションというジャンルの確立に寄与しています。また、本作はジャレコの代表的なIPの1つとして、同社のその後のゲーム開発の方向性にも影響を与え、メカニックデザインやSFの世界観を重視する作品群の源流の1つとなりました。
リメイクでの進化
近年、ジャレコのIPを継承した企業によって、『フォーメーションZ』を原案としたリメイクやリブート作品の開発が発表されています。これらの新作、例えばファイナルフォーメーションやFZ Formation Zでは、オリジナルの持つ「形態可変」という核となるコンセプトを引き継ぎつつ、現代の技術で大幅な進化を遂げています。グラフィックのフルHD化や、より迫力のあるエフェクトの導入が図られています。また、ゲームシステムにも改良が加えられ、自由にルート選択ができるフリーマップ型システムの採用や、超AIを搭載した戦闘ユニット「PELL(ペル)」との合体による新形態の追加など、戦略性とプレイの自由度が高められています。これらのリメイク作品は、オリジナルの持つ魅力を尊重しつつ、現代のプレイヤーのニーズに応えるべく、大きく進化を遂げた新しいプレイ体験を提供しています。
特別な存在である理由
『フォーメーションZ』が特別な存在である理由は、その時代を象徴する変形ロボットという要素を、ゲームとして高い完成度で実現した先駆的な作品であることにあります。単に変形するだけでなく、変形が地上と空中、2つの局面での戦略的な使い分けに直結している点が秀逸です。エネルギーの管理という制約を設けることで、プレイヤーは無闇に変形を繰り返すのではなく、状況に応じた判断を迫られます。この奥深いゲームデザインが、一見シンプルな横スクロールシューティングに、他に類を見ない戦略性とリプレイ性を加えています。また、当時のジャレコの意欲的な姿勢を示す作品として、そして、後のゲーム作品に影響を与えた変形メカゲームの原点の1つとして、日本のビデオゲーム史において特別な地位を占めていると言えます。
まとめ
アーケード版『フォーメーションZ』は、1984年にジャレコが世に送り出した、変形ロボットをテーマとした革新的な横スクロールシューティングゲームです。プレイヤーは自機イクスペルをロボット形態と戦闘機形態に使い分け、エネルギー管理と地形の利点を考慮した戦略的なプレイが求められます。難易度は高いものの、そのゲーム性と変形メカの魅力は、当時のプレイヤーに強烈な印象を残しました。現在に至るまで、そのコンセプトは多くのファンに語り継がれ、現代の技術でリメイク作品が制作されるなど、時代を超えて愛される名作です。本作は、当時のビデオゲーム文化とアニメ・特撮文化が交差した、80年代アーケードゲームの金字塔の1つとして、今なお輝き続けています。
©1984 JALECO