AC版『メガブラスト』4方向攻撃を極めた異色のSTG

メガブラスト

アーケード版『メガブラスト』は、1989年3月にタイトーから発売された横スクロール型シューティングゲームです。開発もタイトーが手掛けており、当時の同社のシューティングゲーム群の中でも、独自のシステムを持つ異彩を放った作品として知られています。自機メガブラストを操作し、暗黒星雲の惑星ザンクスに誘拐された地球の女性たちを救出するというSF的な物語を背景に、強力なオプションフレンドを駆使した戦略的なゲームプレイが特徴です。アーケード版稼働後、家庭用ゲーム機への移植としては、2007年に発売されたプレイステーション2用ソフト『タイトーメモリーズII 下巻』に収録されました。さらに近年では、2023年にダウンロード配信専用ソフトアーケードアーカイブスとして、プレイステーション4とNintendo Switchにも移植され、幅広いプレイヤーが楽しめるようになっています。

開発背景や技術的な挑戦

『メガブラスト』が稼働した1980年代末は、アーケードゲームの技術が急速に進化していた時期にあたります。本作は、当時のタイトーの最新システム基板の一つであるF-2 SYSTEMを用いて開発されました。この基板の採用により、多重スクロールや多彩な色表現、巨大なスプライトの描画能力が向上し、本作の舞台となる宇宙空間や異星のステージを、迫力あるグラフィックで表現することを可能にしました。特に、画面いっぱいに広がる巨大なボスキャラクターの滑らかなアニメーションは、当時の技術的な挑戦の成果であり、プレイヤーに強い印象を与えました。また、自機に追従するオプションフレンドの複雑な挙動と、それに伴う多方向攻撃のシステムを、ゲームの処理速度を落とすことなくスムーズに動作させるためのプログラムの最適化にも力が注がれました。

プレイ体験

プレイヤーは、自機の攻撃力と防御力を高めるパワーアップアイテムを獲得しながら、次々と出現する敵機と戦います。本作のプレイ体験を最も特徴づけるのは、自機に装備されるオプションフレンドのシステムです。このオプションは、パワーアップによって攻撃方向を前方だけでなく、後方や上下の4方向に同時発射できるようになり、従来のシューティングゲームにはない全方位的な戦闘スタイルを可能にしました。これにより、プレイヤーは敵の出現パターンだけでなく、オプションの位置取りや、どの方向をカバーするかといった戦略的な判断が求められました。一方で、一部のプレイヤーからは、道中のステージ構成が単調に感じられたり、一部の巨大なボスの攻撃パターンが理不尽に感じられたりするなどの意見もありましたが、強力な武装で敵を一掃する爽快感は、多くのシューティングファンに支持されました。

初期の評価と現在の再評価

『メガブラスト』の初期の評価は、その革新的なオプションシステムと、当時としては高い水準にあったグラフィックやサウンドに対しては肯定的でした。しかし、他の同時代の大作シューティングゲームと比較すると、ゲームバランスや難易度調整に関する指摘もあり、評価は一定していませんでした。特定のメディアでの具体的な評価点などは残されていませんが、タイトーシューティングのラインナップの中では、独自の個性を放つ作品として認識されていました。現在では、プレイステーション2版『タイトーメモリーズII 下巻』への収録や、プレイステーション4、Nintendo Switch向けアーケードアーカイブスとしての配信により、当時のオリジナル版の魅力が再認識されています。特に、その時代特有のユニークな世界観や、他のゲームにはないオプションシステムは、レトロゲーム愛好家から再評価の対象となっています。

他ジャンル・文化への影響

『メガブラスト』は、当時のシューティングゲームの多様化を担った作品ではありますが、他ジャンルのビデオゲームや、ゲーム以外の文化全般にまで直接的かつ広範な影響を与えたという明確な記録や情報は、Web上では確認できませんでした。しかし、そのユニークなオプションシステムは、後のタイトーのシューティングゲーム開発において、様々なシステムの試行錯誤の一例として、間接的な影響を与えた可能性はあります。また、本作に登場する敵キャラクターの中には、過去のタイトー作品のキャラクターをモチーフとしたものがいるという情報があり、これは後のゲーム作品におけるオマージュやセルフパロディの表現として、ゲーム内文化に影響を与えたと言えるかもしれません。特定の熱心なファン層が存在することは、文化的な影響の一つと言えるでしょう。

リメイクでの進化

『メガブラスト』は、グラフィックやシステムを一新した完全なフルリメイク作品としては発売されていません。しかし、2007年のプレイステーション2用ソフト『タイトーメモリーズII 下巻』への収録、そして2023年のアーケードアーカイブスとしてのプレイステーション4およびNintendo Switchへの配信は、現代のプレイヤーにオリジナル版を体験してもらうための重要な進化と言えます。特にアーケードアーカイブス版では、当時のブラウン管テレビの表示を再現するフィルター機能や、世界中のプレイヤーとハイスコアを競い合えるオンラインランキング機能が追加されています。また、ゲーム設定で二人同時プレイと交互プレイの方式を選択できるなど、現代の家庭用ゲーム機で遊ぶ環境に合わせた快適なプレイ環境が提供されており、オリジナル版の魅力を損なうことなく、現代に蘇らせています。

特別な存在である理由

『メガブラスト』が今なお特別な存在である理由は、その挑戦的なオプションシステムと、タイトーシューティングの多様性を象徴する作品である点に尽きます。自機を守り、同時に多方向への攻撃を可能にするオプションフレンドは、この時代のシューティングゲームの中でも際立っており、プレイヤーに高度な判断力と操作精度を要求しました。この独自のゲームプレイは、他の追随を許さない個性として確立され、一部の熱心なファンにとって忘れられないタイトルとなっています。また、数多くの名作を生み出したタイトーの黄金期において、メインストリームとは一線を画した本作の存在は、開発チームが常に新しいゲーム性を模索していた証であり、その革新性が今もなお評価されるべき理由です。

まとめ

アーケード版『メガブラスト』は、1989年にタイトーが生み出した、独創的な横スクロールシューティングゲームです。当時の最先端技術を背景に、特にオプションフレンドによる戦略的な4方向攻撃システムが、プレイヤーに新鮮な驚きと奥深い攻略要素をもたらしました。登場から長い年月が経過した現在も、プレイステーション2用ソフトやアーケードアーカイブスとして、プレイステーション4やNintendo Switchといった複数のプラットフォームで復刻されており、その独自の魅力は現代のプレイヤーにも受け継がれています。この作品は、タイトーのシューティングゲーム開発史における重要な一ページを飾るものであり、その挑戦的なゲームデザインは、今もなお多くのプレイヤーに刺激を与え続けています。

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