AC版『地獄めぐり』異色の和風地獄巡礼アクションを追体験

アーケード版『地獄めぐり』は、1988年にタイトーによって業務用基板向けに稼働を開始した横スクロールアクションゲームです。開発はタイトー中央研究所、ジャンルは和風アクションで、プレイヤーは高僧・覚蓮坊または東仙坊を操作し、乱心した閻魔大王を討つため地獄界を巡ります。

開発背景や技術的な挑戦

当時のタイトーは和風妖怪をテーマにした作品に力を入れており、『奇々怪界』に続く異色作として本作が企画されました。元タイトルは『冥府魔道伝』でしたが、開発中に大きくリニューアルされ、『地獄めぐり』として完成されました。MC68000とZ80のデュアルCPU構成やYM2610音源を活かし、地獄の不気味な雰囲気を和楽器風BGMで表現するなど、技術面でも和の世界観にこだわった設計が特徴です。

プレイ体験

プレイヤーは魔破珠という跳ねるショットとジャンプを駆使してステージを進みます。ステージは全7+α構成で、敵や罠を突破し、地蔵に触れることでステージクリアとなります(最終面のみボス撃破)。特に印象的なのは第3ステージと最終ステージに登場するボス戦で、ミスで「龍神」形態となり縦横無尽に弾を撃ちまくる縦シューティングに変化するのは独特の遊び心です。

初期の評価と現在の再評価

アーケード稼働当初は、妖怪や血の池など地獄の演出が注目されました。一方で“ボスが2体しかいない”といった指摘もありました。それでも現在では、“適度な難易度とプレイ感”が評価され、アケアカ版も好評を博しています。

他ジャンル・文化への影響

当時の和風妖怪ブームの中でも、本作は地獄と高僧というテーマ性で異彩を放ちました。後に海道賢仁氏が参加した作品群への影響も指摘され、和風シューティングやアクションの潮流に一石を投じた存在とされています。

リメイクでの進化

もし現代にリメイクされるなら、4Kリマスターによるグラフィック強化、BGMのオーケストラアレンジ、ネットランキング対応によるスコア競争の深化、そしてボス戦の追加や協力プレイの拡張などが期待されます。特に、縦シューティングへの変形シーンを独立したモードにするのも面白いでしょう。

特別な存在である理由

本作は“地味だけどクセになる”アクションとして、プレイヤーの心に残る中毒性があります。和の地獄世界を背景に、シンプルながら戦略性を要する魔破珠システム、控えめながらも印象深い演出が相まって、1988年の中でも異質で味のある作品に仕上がっています。

まとめ

アーケード版『地獄めぐり』は、和風地獄テーマとバウンドショットの組み合わせによる独特のゲーム性、そして適度な難易度が魅力の一作です。隠し要素やストーリーモード的な縦シューティングの転換など、単なる地味なアクションには収まらない奥深さを秘めています。和の世界観を味わいたいプレイヤーには未だに響く、稀有な名作です。

© TAITO CORPORATION 1988