アーケード版『マリオブラザーズ』協力と競争が交差する元祖2Pアクション

マリオブラザーズ

アーケードゲーム『マリオブラザーズ』は、1983年に任天堂から発売されたアクションゲームです。開発は任天堂R&D1、ディレクターは宮本茂氏と横井軍平氏が務め、特徴的な2人同時プレイやPOWブロックなどを導入しました。

開発背景や技術的な挑戦

『ドンキーコング』の成功を受け、余剰基板を有効活用するために開発された続編的作品です。宮本氏は落下ダメージなしのキャラクター設計を模索し、横井氏の提案で「下からひっくり返す」システムが導入されました。また、マリオの兄弟キャラクター「ルイージ」を登場させるにあたっては、マリオと同じグラフィックを使用し、色だけを変更することで手間を抑える手法が使われました。これは「パレットスワップ」と呼ばれる技術で、同じキャラデザインに別の色を割り当てることで別キャラクターとして表現する工夫です。

プレイ体験

ステージ構成は単一画面で、上下左右にスクロールしながらカニやカメを下から叩いてひっくり返し、蹴り飛ばして倒していきます。POWブロック使用時はエネミー全体がひっくり返る爽快感があり、2人協力プレイでは連携が醍醐味です。一方、ルイージを操作する協力プレイは相互に邪魔し合うこともあり、特に高難易度ステージでは戦略性と緊張感が求められます。

初期の評価と現在の再評価

本作は当時のアーケードゲームの中でも操作の難易度が高めで、滑るような慣性のある動きや、突発的に現れる火の玉などがプレイヤーに緊張感を与えます。敵キャラの出現パターンやジャンプのタイミングなど、シンプルながら奥深い攻略要素が多く、短時間での繰り返しプレイに向いていることから、高スコアを目指すゲームとして多くの支持を集めました。その一方で、初心者には難しく感じられる要素も多く、慣れるまでに時間を要するという意見も見受けられました。

ポジティブな評価とネガティブな評価のおおよその比率は、ポジティブが約70パーセント、ネガティブが約30パーセントとなっています。

高評価の理由として最も多く挙げられるのは、2人同時プレイの面白さです。プレイヤー同士が協力しながらも時に妨害し合うことで、対戦のような盛り上がりが生まれ、ゲームセンターでの交流ツールとしても重宝されていました。また、敵を一撃で倒すのではなく、床を使って転倒させるというメカニズムも新鮮で、当時としては画期的な戦略性が注目されました。短時間で完結するラウンド制のテンポの良さも、多くのプレイヤーに支持されています。

一方、ネガティブな意見としては、キャラクターの挙動に慣れが必要であるという声が多く挙がっています。特にジャンプの操作性や慣性のある動きは「思い通りに動かせない」と感じる人もおり、初心者にはやや敷居が高い印象を与えました。また、火の玉や敵の出現タイミングがランダム性を持つことから、理不尽に感じる瞬間も少なくなく、その点をストレスに感じるユーザーも一定数存在していました。

この作品を特におすすめできるのは、1980年代のアーケード文化やレトロゲームに興味を持つユーザーです。高難易度なアクションに挑戦したい中級者以上のプレイヤーや、友人と一緒にワイワイ楽しみたい人には特に向いています。また、ゲームの歴史やマリオシリーズの原点に触れたい人にとっても、非常に価値のある体験となるでしょう。反面、快適な操作性や現代的なユーザビリティを求める人には、ややハードルが高く感じられるかもしれません。

他ジャンル・文化への影響

『アーケードアーカイブス』シリーズにも再収録されるなど、ゲーム史における「2D協力アクション」の先駆として影響力が大きく、後のスーパーマリオシリーズの基本要素(コイン、ルイージ、POWブロックなど)の礎を築きました。さらに、格闘ゲームや対戦型アクションの原型とも言える「お邪魔仕様」は、同作以降、数多くの協力/競争型ゲームに影響を与えました。

リメイクでの進化

もし現代に当作がリメイクされるなら、以下の進化が期待できます:

  • オンライン協力プレイとローカル対戦モード搭載
  • グラフィックは2.5Dまたはハイクオリティ2Dに刷新
  • タイムアタックやスコアチャレンジなどの競技要素実装
  • ステージエディット機能やカスタマイズ敵出現パターン
  • 新要素としてパワーアップやギミックブロック追加

まとめ

『マリオブラザーズ』アーケード版は、1983年という時代において革新的な協力・競争アクションを実現した名作です。宮本茂氏と横井軍平氏の技術的判断や、シンプルながら奥深いゲーム性は、今日のゲームにも通じる普遍的な価値を持っています。リメイクの可能性を含め、その存在感は今も色あせません。

攻略

プレイヤーは、マリオまたはルイージを操作し、地下の配管エリアで次々と現れる敵キャラクターを撃退していきます。敵は土管から出現し、足場を左右に移動しながらプレイヤーに接近してきます。攻撃の基本は、敵のいる床の下からジャンプして床を突き上げて転倒させ、その後、敵が起き上がる前に体当たりすることで撃退するというものです。敵によっては移動速度が速くなったり、ジャンプしたりといった異なる挙動を持っており、ステージが進むごとにそのバリエーションと難易度が増していきます。

また、画面左右の端はつながっており、一方から出たキャラクターは反対側から現れる構造になっています。このループ構造を活用して敵の背後に回ったり、危険を回避したりする立ち回りが求められます。さらに、ステージ中央には「POWブロック」が設置されており、これを叩くとすべての敵を一時的に転倒させることができますが、使用回数には制限があるため、ここぞという場面での使用が重要です。

一定のラウンドをクリアすると、敵の出ないボーナスステージが挿入され、画面内のコインをすべて時間内に回収することで得点を稼ぐことができます。さらに、このゲームは2人同時プレイに対応しており、協力して敵を処理するだけでなく、相手の行動を妨害することも可能です。プレイヤー同士の駆け引きも盛り込まれており、単純ながらも奥深いアクションが楽しめる構成となっています。

ストーリー

本作の舞台は、地中に張り巡らされた配管施設であり、そこに突如出現したモンスターたちを退治するという設定です。

物語の背景では、マリオとルイージはニューヨークの配管工として働いており、地下配管で発生した奇怪な現象に立ち向かうことになります。配管の中では、カメやカニ、ハエといった謎の生物や、火の玉などの危険な存在が次々と現れ、二人は工具も持たず、ジャンプと頭突きのみでこれらの敵を退治していきます。

ゲームシステム

ゲーム画面

画面の上部には「MARIO」の名前とスコア、そして中央にはハイスコアの表示があります。そのすぐ下には、プレイヤーの残機数がマリオの顔アイコンで並んでいます。左右の上部には大きな緑色の土管が配置され、それぞれ赤いバルブのような装飾が付いています。これらの土管は敵キャラクターの出現場所です。

画面には概ね3段の土台が配置され、プレイヤーや敵の移動ルートとなっています。画面中央やや下部には「POW」と書かれた青いブロックが設置されており、これを叩くことで画面内の敵をひっくり返したり、消したりすることができます。

画面の最下段には赤いレンガ風の床が広がり、左右の下部にも小さな土管が設けられており、これらは敵の出口となっています。敵が左下の出口に入った場合は上部の左側の土管、右下の出口に入った場合は、上部の右側の土管、それぞれから敵が出現する法則があります。画面左下はフェーズ(面)を表しています。フェーズ25になると「KO」と表示されます。

敵キャラクターの撃退システム

アーケード版『マリオブラザーズ』では、敵キャラクターをジャンプで床の下から突き上げることで転倒させ、転倒中に体当たりすると倒すことができます。この「床の下から攻撃する」仕様は、それまでの敵を踏みつける形式とは異なり、戦略的な位置取りが重要となる特徴的なシステムです。

ループステージ構造

本作のステージ構造はループ型になっており、画面の左右端はつながっているため、敵もプレイヤーも一方の端からもう一方にワープするように移動できます。この仕組みにより、敵の動きを先読みした立ち回りや、反対側から奇襲をかけるといったテクニックが活きるようになっています。

パウブロック(POWブロック)

ステージ中央に設置されている「POWブロック」は、プレイヤーが叩くことで全フロアの床を振動させ、すべての敵を一度に転倒させることができます。ただし、使用できる回数には制限があり、通常は3回までです。緊急時の切り札として活用することで、戦況を有利に運べます。

ボーナスステージシステム

一定のラウンドをクリアすると、敵の出現しないボーナスステージが出現します。画面内に配置されたコインの数は10枚。すべてのコインを時間内に回収すると、PERFECTとして5000ポイントのボーナスが加算されます。コインを取り逃すとボーナスポイントは得られず、次のフェーズに進みます。アクションの精度とスピードが試される、テクニカルな要素です。ボーナスステージは3パターンあります。

パターン1

最初のボーナスステージはフェーズ4では初登場。制限時間20秒以内にすべてのコインを回収することが目的です。画面内に配置されたコインの数は10枚。コインは複数の足場に分散して配置されており、プレイヤーはジャンプや移動を駆使して効率よく回収する必要があります。

ボーナスステージ内のすべてのコイン10枚を回収したことにより、「PERFECT」と判定され、ボーナス得点として5000ポイントが加算されています。コイン1枚あたりの得点は800点で、合計8000点に加え、パーフェクト達成による追加得点が入ることで、より高得点を狙える構成になっています。

パターン2

このボーナスステージは、フェーズ9で登場します。制限時間は15秒。氷の張った床が特徴で、プレイヤーの操作が滑りやすくなるため、慎重かつ素早い動きが求められます。

パターン3

このボーナスステージはフェーズ16で初登場です。以降のボーナスステージはこのボーナスステージとなります。制限時間は15秒。特徴は、ボーナスステージがはじまると足場が見えなくなることです。プレイヤーの記憶力と感覚が試されます。

PHASEボーナスステージの種類
04基本
09床が氷
16床が消える
23床が消える
30床が消える
37床が消える
以降7フェーズ毎に発生

協力と妨害を両立する2人同時プレイ

アーケード版では2人同時プレイが可能で、マリオとルイージを操作して共にステージクリアを目指します。敵の処理を分担して効率的に進める協力プレイができる一方で、相手をジャンプで押し出したり、足場を奪ったりと妨害することも可能です。この競争と協力が入り混じる設計が、白熱したゲームプレイを生み出しています。

敵の種類と進化するパターン

ゲームが進むにつれて出現する敵の種類が増え、それぞれ異なる挙動や特徴を持ちます。たとえば「カメ」は基本的な動きですが、「ファイター・フライ」はジャンプしながら移動し、「氷」は滑りやすい床に関係した挙動を見せます。ラウンドが進むごとに敵の速度や攻撃的な動きが増し、難易度が段階的に上昇します。

SHELLCREEPER

SHELLCREEPERは、『マリオブラザーズ』に登場するカメ型の敵キャラクターです。緑色の甲羅を背負い、床の上をゆっくりと横移動します。プレイヤーが床の下から叩くと甲羅をひっくり返すことができ、その後マリオやルイージが蹴り飛ばして倒します。ただし、放置すると再び立ち上がり、移動速度が速くなってプレイヤーに向かってくるため注意が必要です。ゲーム内で最も基本的な敵であり、動きが単純ですが、他の敵キャラクターとの組み合わせにより、攻略の難易度が上がります。

SIDESTEPPER

SIDESTEPPERは、カニ型の敵キャラクターです。フェーズ5で初登場。特徴は赤色の身体と鋭いハサミで、横方向に素早く移動します。この敵は初めから1回の攻撃ではひっくり返らず、2回下から叩く必要があります。1回叩くと色が変わり動きが速くなるため、攻撃のタイミングに注意が必要です。

FIGHTERFLY

FIGHTERFLYは、ハエ型の敵キャラクターです。紫色の身体と大きな目が特徴で、ジャンプを繰り返しながら移動します。FIGHTERFLYはジャンプしている間は攻撃が効かず、地面に触れたタイミングで床を下から叩くことによってひっくり返すことができます。

SLIPICE

SLIPICEは、氷のような姿をした敵キャラクターです。出現するとステージ内の足場を凍らせてしまい、プレイヤーの行動範囲を狭める厄介な存在です。凍った足場は滑りやすくなり、マリオやルイージの操作が不安定になるため、素早く対処することが重要です。SLIPICEは氷を作る動作の最中が最も無防備なため、そのタイミングで床を叩いて撃滅します。他のキャラクターと違い、ひっくり返すことはできません。マリオがSLIPICEに触れると凍ってミスとなります。

火の玉(赤、緑)

火の玉は、赤色と緑色の2種類が出現します。赤色の特徴は土台に当たると跳ね返ることです。緑色の特徴は時間が経過すると画面の左右のどちらかに出現し、高速で反対側に移動します。自機が火の玉に触れると焦げる演出が発生し、ミスとなります。

氷柱

氷柱はフェーズ17で初登場します。土台の下側に段階的に発生。マリオが触れると凍ってミスとなります。氷柱が水滴の状態のときにパンチすれば消滅させることができます。フェーズが進むと氷柱の数が増加し、上からの落下と横方向からの敵や火の玉の体当たりへの注意力が必要となります。

スリップ床による滑りシステム

一部のステージでは床に氷のようなスリップ効果が加わり、キャラクターの動きが滑りやすくなります。このスリップ床によって、停止や方向転換が難しくなるため、敵との距離感やタイミングにより慎重な操作が求められます。プレイヤーの技術をさらに試す要素です。

攻略のポイント

本作は、床を下から叩いて敵を転倒させ、上から蹴り落とすという独特の戦闘システムが特徴です。敵には「SHELLCREEPER(カメ)」、「SIDESTEPPER(カニ)」、「FIGHTERFLY(ハエ)」、そして氷を発生させる「SLIPICE」などが登場します。特に「SIDESTEPPER」は1回の攻撃では転倒せず、一度目で怒ってスピードが上がるため、素早く2度叩いて無力化する必要があります。また、「FIGHTERFLY」はジャンプ移動を行うため、着地を狙って床下パンチを繰り出すと効果的です。

「POWブロック」は各プレイヤーに3回の使用権があり、敵が地上にいるタイミングで使用することで全敵をひっくり返せます。ただし、空中にいる敵には無効なため、使用タイミングは慎重に見極めましょう。

各フェーズの出現キャラクター

フェーズ40までの各フェーズの登場キャラクターの出現数のデータです。

PHASESHELLCREEPERSIDESTEPPERFIGHTERFLYSLIPICE氷柱火の玉(赤)火の玉(緑)
0130000
0240000
0360000
040000000
0504000
0624000
0700400
0802400
090000000
104010
110410
120420
134010
140410
150420
160000000
17401
18041
19042
20401
21041
22042
230000000
24401
25041
26042
27401
28041
29042
300000000
31401
32041
33042
34401
35041
36042
370000000
38401
39041
40042

戦術

インストラクションカードには、効果的な叩き方として「追い打ち」「正直打ち」「顔面打ち」の3種類が紹介されています。「追い打ち」は逃げる敵を追って下の段に落とす方法、「正直打ち」は敵の真下に潜り込んでタイミング良く止める方法です。「顔面打ち」はカニなど硬い敵に対し、手前で一度止まらせる目的で使います。

また、敵を連続で倒すことでスコアが大幅に増加します。1連で800点、2連で1600点、3連で2400点、4連で3200点と上昇し、効率的に得点を稼ぐには敵の動きを見極め、タイミングを揃えて処理することが重要です。コインは敵を蹴り落とすごとに1枚出現し、最大800点分のスコアが得られます。

2人プレイと連携戦略

『マリオブラザーズ』は2人プレイが非常に楽しい要素の一つです。1人プレイ時はマリオを使用し、2人目がルイージを操作します。インストラクションカードにも「2人で遊べば100人力」とあるように、協力と裏切りのバランスがこのゲームの醍醐味です。効率的な2人プレイでは、片方が床下攻撃役、もう一方が蹴り落とし担当となる分業制が効果的です。敵をひっくり返した直後に素早く反応できるため、ミスが減り、テンポの良いゲーム進行が可能になります。

ただし、足場の取り合いやアイテムの回収タイミングなど、時には競合する場面もあります。互いの動きを見ながら「協力するか、それとも裏切るか」を選ぶ緊張感が、このゲームを一層盛り上げます。

追加のヒントや裏技

敵を倒す際に、連続して処理することがスコア獲得の鍵です。特に敵の出現を遅らせず、リズム良く倒し続けることで、連続得点が発生しやすくなります。連携プレイでは、片方が敵を引きつけてもう片方が狙うというコンビネーションも有効です。また、ボーナスステージでは敵は出現せず、制限時間内にすべてのコインを回収することが目的となります。上下段を効率的に移動し、時間内にすべてのコインを集めるには事前にルートを決めておくとよいでしょう。

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