アーケード版『X-MEN VS. ストリートファイター』は、1996年9月にカプコンからCP System II(CPS-II)基板を用いて日本で稼働開始された対戦型格闘ゲームです。マーヴル・コミックのX-MENとカプコンの人気シリーズ『ストリートファイター』とのクロスオーバー作品であり、タッグ戦という革新的な対戦システムを初採用したことが特徴で、のちの『Marvel vs. Capcom』シリーズの礎となったタイトルです。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発は、まず1994年に同じCPS-II基板で登場した『X-MEN: Children of the Atom』に端を発します。これはマーヴル最初のライセンス格闘ゲームであり、華やかな空中コンボや段階式ステージ、長い連続技などを導入し、以降の『Marvel vs. Capcom』の基盤となる要素を生み出しました。
続く『Marvel Super Heroes』(1995年)では、X-MEN以外のマーベルキャラクターも登場しつつ、さらなる演出強化とアニメーション精度の向上が図られました。これらの経験と技術をベースに、「タッグ戦」による対戦スタイルを実現したのが『X-MEN VS. ストリートファイター』です。「ストリートファイターZERO」シリーズに隠し搭載されていたドラマティックバトルモードがヒントとなり、世界観の融合とともにタッグ戦という新境地を開拓しました。
開発にあたっては、CPS-II基板の能力を最大限に引き出すため、以前の作品からスプライトの再利用と最適化が行われ、豊富なキャラクターと派手な演出を実現しました。ただし社内では、マーベルキャラとストリートファイターを融合させることに対する慎重な意見もあり、「X-MEN 2」として進める案もあったものの、ストリートファイターの世界観を取り込む方向が最終的に採用されました。
プレイ体験
本作は、プレイヤーが2体のキャラクターを選び、戦闘中に交代しながら戦うタッグ戦を採用しています。それぞれのキャラクターに体力ゲージがあり、戦闘中の交代で待機中のキャラクターは体力が徐々に回復します。対戦は1ラウンド制で、制限時間内に相手チームを全滅させるか、残り体力の多い方が勝利します。
スーパーコンボゲージの共有、空中連携(エアコンボ)、派手なスーパー必殺技、そしてステージ背景の破壊や演出など、CPS-IIのポテンシャルを最大限に活かした高エネルギーな戦いが展開されます。
登場するX-MEN側のキャラクターにはサイクロップス、ウルヴァリン、ストーム、ローグ、ガンビット、セイバートゥース、マグニートー、ジャガーノートなどがいます。ストリートファイター側では、リュウ、ケン、チュンリー、キャミィ、ザンギエフ、バイソン、ダルシム、チャーリーなどが参戦し、それぞれの必殺技や演出が融合した迫力ある戦いが楽しめます。
初期の評価と現在の再評価
稼働当初からその斬新なシステムと演出が話題を呼び、アーケードでは高い人気を博しました。従来の1対1形式に比べて戦術の幅が広がったこと、キャラクターの豊富さ、グラフィックの美しさなどが好評を得ました。後年の再評価でも、タッグ戦の革新性や画面表現のクオリティ、そしてシリーズ第一作としての歴史的価値が高く評価されています。
さらに2024年には、アーケード版を忠実に収録した『Marvel vs. Capcom Fighting Collection: Arcade Classics』が発売され、家庭用環境でも正確なアーケード体験が可能となり、新世代のプレイヤーにもその魅力が伝えられています。
他ジャンル・文化への影響
『X-MEN VS. ストリートファイター』は、後の『Marvel vs. Capcom』シリーズの原点であり、タッグ戦の定番スタイルを格闘ゲームに定着させました。このシステムは他社作品にも影響を与え、「二人一組で戦う」というフォーマットが広く採用されるきっかけとなりました。
また、クロスオーバー企画の成功例として、格闘ゲーム以外のジャンルにもその発想が波及し、ゲーム文化全体に影響を与えたといえます。
リメイクでの進化
完全なリメイク版は存在しないものの、2024年の『Marvel vs. Capcom Fighting Collection: Arcade Classics』ではアーケード版が高精度に再現され、オンライン対戦やトレーニングモード、ギャラリーモードなどの追加要素が搭載されました。これにより、当時の迫力を損なわずに現代のプレイ環境で楽しめるようになっています。
特別な存在である理由
本作は、異なる二大ブランドを融合させたクロスオーバー企画の先駆けであり、タッグ戦という革新的システムを確立しました。さらに、アニメ調の高品質なスプライト、スピーディな展開、豪快なスーパー技の演出が当時のアーケード文化を象徴する存在となりました。その影響力はシリーズの枠を超え、格闘ゲーム史全体に刻まれています。
まとめ
アーケード版『X-MEN VS. ストリートファイター』は、1996年に登場してクロスオーバー格闘ゲームの新たな基準を打ち立てた作品です。CPS-II基板の限界に挑戦し、多様なキャラクターによるタッグ戦、派手な演出、空中連携とスーパーコンボの連続で、当時のアーケードプレイヤーを熱狂させました。その後の『Marvel vs. Capcom』シリーズを誕生させ、家庭版やコレクション版でも再登場するなど、格闘ゲーム史における不動のレガシーとなっています。
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