アーケード版『WITH』は、1991年1月にジャレコから発売された、ファンタジックな世界観を持つ横スクロール型のアクションゲームです。本作は、可愛らしいキャラクターデザインと独自のアクション性が特徴であり、当時のアーケード市場において独自の存在感を放っていました。プレイヤーは、主人公であるキャラクターを操作し、様々なギミックや敵キャラクターが待ち受けるステージを攻略していきます。1990年代初頭のジャレコは、多彩なジャンルのアーケードゲームを世に送り出していましたが、その中でも本作は直感的な操作感と温かみのあるグラフィックによって、幅広い層のプレイヤーに親しまれることを目指して制作されました。
開発背景や技術的な挑戦
本作が開発された1991年頃は、アーケードゲーム業界において格闘ゲームのブームが到来しつつある時期でしたが、一方で安定した人気を誇るアクションゲームの分野でも、より緻密な描写や新しいシステムが求められていました。開発チームにとっての大きな挑戦は、当時の限られた基板スペックの中で、いかにキャラクターの滑らかなアニメーションと、多層スクロールによる奥行きのある背景表現を両立させるかという点にありました。特に、魔法や特殊攻撃を使用した際のエフェクトは、プレイヤーに視覚的な快感を与えるために細部までこだわって調整されています。また、敵キャラクターのアルゴリズムについても、単調な動きにならないよう工夫されており、プレイヤーが飽きることなく攻略を楽しめるような工夫が随所に施されています。ジャレコ独自のサウンドチップを活用したBGMも、ファンタジー世界を彩る重要な要素として、当時の技術力の結晶といえる仕上がりになっています。
プレイ体験
プレイヤーが本作を手に取った際にまず感じるのは、その非常にレスポンスの良い操作性です。ジャンプや攻撃といった基本アクションに加え、ステージごとに用意された地形を活かした立ち回りが重要となります。敵を倒すだけでなく、画面内に配置されたアイテムを効率よく回収し、自らを強化していく過程は、アーケードゲーム特有の緊張感と達成感を同時に提供してくれます。難易度設計は適切になされており、序盤は初心者でもスムーズに進行できるものの、ステージが進むにつれて敵の配置や攻撃パターンが複雑化し、熟練のプレイヤーでも一筋縄ではいかない手応えを感じることができます。特にボス戦においては、敵の弱点を見極め、適切なタイミングで攻撃を繰り出すという、クラシックなアクションゲームの醍醐味が凝縮されています。二人同時プレイも可能であり、協力して難局を乗り越えるという体験は、当時のゲームセンターにおけるコミュニケーションの場としても機能していました。
初期の評価と現在の再評価
稼働開始直後の評価としては、その丁寧な作り込みと親しみやすいビジュアルが高く評価されました。派手な演出を重視するタイトルが多い中で、基本に忠実かつ遊びやすいアクションゲームとしての完成度は、多くのファンを獲得する要因となりました。長らく家庭用への移植機会に恵まれなかったことから、一時期は知る人ぞ知る名作という立ち位置にありましたが、近年ではレトロゲームブームの再燃により、その純粋なゲームデザインが改めて見直されています。無駄を削ぎ落とした純粋なアクション要素と、1990年代特有のドット絵の美しさは、現代のプレイヤーにとっても新鮮に映り、アーケード黄金時代の空気を伝える貴重な一作として語り継がれています。特定のメディアによる採点などに左右されない、プレイヤー自身の体感に基づいた息の長い支持が、本作の真の価値を示しているといえます。
他ジャンル・文化への影響
本作が後のゲーム文化に与えた影響は、その「ファンタジーとアクションの融合」というスタイルの確立にあります。可愛らしい外見とは裏腹に、しっかりとした攻略が必要な硬派なゲームバランスは、後のアクションRPGやアドベンチャーゲームの設計思想にも通ずるものがあります。また、キャラクター造形や世界観の設定は、当時のアニメーション文化とも親和性が高く、ゲームを通じてキャラクターそのものに愛着を持つというプレイヤーの心理を巧みに突いていました。このような「キャラクター主導型のアクションゲーム」という方向性は、その後の多くの家庭用ゲームソフトの開発においても参考にされることとなりました。直接的な続編や派生作品は少ないものの、本作で培われた演出技法やゲームデザインのノウハウは、制作会社であるジャレコのその後のラインナップに確実に受け継がれていきました。
リメイクでの進化
本作はアーケード版としての完成度が非常に高かったため、長い間リメイクや移植の機会が限られていました。しかし、近年のレトロゲーム配信プラットフォームの普及により、当時の挙動を忠実に再現した状態でのプレイが可能となっています。オリジナルの良さを活かしつつ、どこでもセーブができる機能や、画面比率の調整といった現代的なサポート機能が付加されることで、新しい世代のプレイヤーにもその魅力が伝わりやすくなっています。グラフィックを完全に一新するような大幅なリメイクは行われていませんが、それこそが、当時のドット絵やサウンドの完成度が完成されていたことの証左でもあります。最新のハードウェアで蘇る際にも、開発当時の意図を尊重した調整が行われており、アーケード版の熱気をそのままに現代に蘇らせるという形での進化を遂げています。
特別な存在である理由
『WITH』が多くのプレイヤーにとって特別な存在であり続ける理由は、単なるノスタルジーに留まらない、純粋な遊びの楽しさが詰まっているからです。1990年代という、技術が飛躍的に向上していく過渡期において、奇をてらわず「触って楽しい、動かして楽しい」というアクションゲームの本質を徹底的に追求した姿勢は、今なお多くの人々の心に響きます。複雑なシステムや難解なストーリーに頼ることなく、画面上のキャラクターを自在に操り、目前の障害を乗り越えていくというシンプルな喜びが、本作には凝縮されています。流行に左右されない普遍的なゲームデザインを持っているからこそ、本作は時代を超えて愛され続け、アーケードゲーム史の一端を担う重要なピースとして認識されているのです。
まとめ
アーケード版『WITH』は、1991年という時代背景の中で、ジャレコが放ったアクションゲームの良作です。細部まで描き込まれたグラフィック、耳に残る心地よいサウンド、そしてプレイヤーの腕前に応えてくれる絶妙なゲームバランスは、発売から数十年を経た今でも色褪せることはありません。技術的な挑戦から生まれた滑らかな演出や、プレイヤーを飽きさせない数々の隠し要素は、当時の開発者たちの情熱を今に伝えています。現在の視点から見ても、アクションゲームとしての骨組みは非常に堅牢であり、リメイクや移植を通じて新たなファンを獲得し続けていることも納得の結果といえるでしょう。本作をプレイすることは、アーケードゲームが最も輝いていた時代の空気を感じ、純粋な達成感を味わうための素晴らしい体験となるはずです。
©1991 JALECO