アーケード版『ウルトラ闘魂伝説』は、1993年12月にバンプレストから発売されたアーケードゲームです。開発はキッドが担当しており、ジャンルはベルトスクロールアクションゲームに分類されます。本作は特撮番組であるウルトラシリーズを題材にしており、プレイヤーはウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンタロウの3人から操作キャラクターを選択して、次々と襲いかかる怪獣や宇宙人を倒しながら進みます。当時のアーケード市場で人気を博していたベルトスクロールアクションの形式を採用しつつ、デフォルメされた親しみやすいキャラクターデザインと、特撮作品ならではの演出が組み合わされている点が大きな特徴です。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発が行われた1990年代初頭は、ベルトスクロールアクションというジャンルが成熟期を迎えていた時期でした。バンプレストは当時、SDキャラクターを用いたゲーム展開を得意としており、本作でもそのノウハウが活かされています。技術的な挑戦としては、アーケード基板の性能を最大限に活用し、巨大な怪獣との戦いをいかに迫力あるものにするかという点が挙げられました。プレイヤーが操作するウルトラ戦士たちは、通常の攻撃だけでなくエネルギーを溜めて放つ必殺技を持っており、これらを滑らかなアニメーションで表現するために多くのリソースが割かれました。また、2人同時プレイを前提としたゲームバランスの調整も行われ、協力して強敵に立ち向かう楽しさが追求されています。特撮番組の劇中歌をアレンジしたBGMや、各キャラクター固有のボイスを搭載することで、アーケードゲームとしての高揚感を高める工夫が随所に凝らされています。
プレイ体験
プレイヤーは、パンチやキックといった基本攻撃を組み合わせたコンボや、投げ技、そしてゲージを消費して繰り出す強力な必殺技を使い分けてステージを進みます。全6ラウンドで構成されており、各ステージの最後にはバルタン星人やゼットンといった、原作でも馴染み深い強力なボス怪獣が待ち受けています。ライフ制と残機制を採用しており、制限時間が0になるかライフが尽きるとミスとなりますが、コインを投入することで途中参加やコンティニューが可能です。特に本作のユニークな点として、体力が減少した敵を投げ飛ばしたり、特定の状況下で強力な光線技を浴びせたりする爽快感があります。また、ステージ内にはアイテムが配置されており、体力を回復したり一時的に攻撃力を強化したりすることができるため、これらを戦略的に回収しながら進むことが攻略の鍵となります。操作性は良好で、シンプルながらも奥の深いアクションを体験することができます。
初期の評価と現在の再評価
発売当時の評価としては、ウルトラマンという非常に知名度の高い作品を活用した点や、SDキャラクターの愛らしさとアクションの激しさのギャップが好意的に受け止められました。ゲームセンターでは低年齢層から特撮ファンの大人まで幅広い層に遊ばれる作品となりました。しかし、当時は格闘ゲームブームの全盛期でもあったため、純粋なアクションゲームとしての注目度は一部の熱狂的なファンに留まっていた側面もあります。時を経て現在では、当時のバンプレスト作品特有の丁寧な作り込みや、アーケードでしか味わえない独特の演出密度が再評価されています。特に特定の版権作品を高品質なアクションゲームに落とし込んだ好例として、レトロゲーム愛好家の間で語り継がれる存在となりました。現在では実機に触れる機会が限られていることもあり、その希少性とともに純粋に楽しめるアーケードアクションとしての価値が高まっています。
他ジャンル・文化への影響
『ウルトラ闘魂伝説』は、キャラクターをデフォルメするSD文化と、本格的なアクションゲームを融合させた成功例の1つとして、その後のキャラクターゲームの在り方に影響を与えました。本作で見られた、原作の必殺技をアクションゲームのシステムとして違和感なく組み込む手法は、後のウルトラマン関連のタイトルにも継承されています。また、音楽面においても特撮ソングをビデオゲーム向けにアレンジして使用するという流れを定着させる一助となりました。この作品が提供した、ヒーローを自分の手で動かし大勢の敵をなぎ倒すという体験は、後に続くアクションタイトルや多人数での協力プレイを主体とするタイトルの精神的な先駆けとも言える要素を含んでいます。ゲーム文化のみならず、特撮キャラクターが異なる媒体でどのように表現されるべきかという点において、1つの指針を示した作品です。
リメイクでの進化
『ウルトラ闘魂伝説』自体は、現在のところ家庭用ゲーム機への移植や直接的なフルリメイクが行われていない希少なタイトルです。しかし、本作で培われたSDキャラクターによるアクションというコンセプトは、バンプレストが展開した様々なクロスオーバー作品や、ウルトラマンを題材にしたアクションゲームの中で進化を続けてきました。もし現代の技術でリメイクされるならば、グラフィックの高解像度化はもちろんのこと、オンラインでの複数人協力プレイや登場怪獣の大幅な追加などが期待されます。本作が持っていたシンプルながらも手応えのあるアクション性は、現代のインディーゲームやベルトスクロールアクションの復興期においても十分に通用する普遍的な魅力を持っています。リメイクの要望がファンの間で根強く語られることは、本作がいかに愛されているかを証明しています。
特別な存在である理由
本作が多くのプレイヤーにとって特別な存在である理由は、単なるキャラクターゲームの枠を超えた、純粋な遊びとしての完成度の高さにあります。ウルトラマン、セブン、タロウという選りすぐりの3人が共闘するという設定は、当時の子供たちにとって夢のようなシチュエーションでした。それを適度な難易度と派手な演出で楽しめるゲームとして提供したことが、記憶に強く刻まれる要因となっています。また、アーケードゲームならではの、あの場所にしかない大型筐体から流れる迫力のBGMや、他プレイヤーとの協力プレイから生まれる連帯感といった体験が、本作を単なるプログラム以上の思い出へと昇華させています。特撮への敬意を感じさせる演出の数々と飽きさせないステージ構成は、時代が変わっても色褪せない魅力を放ち続けています。
まとめ
アーケード版『ウルトラ闘魂伝説』は、1990年代のアーケードシーンを彩った名作ベルトスクロールアクションの1つです。バンプレストとキッドの手によって、ウルトラマンの世界観がデフォルメされた愛らしいキャラクターたちとともに見事に再現されました。プレイヤーを熱中させた迫力ある必殺技や怪獣たちとの手に汗握る攻防は、今なお多くのファンの心に残っています。家庭用への移植がなされていないため現在ではその存在自体が非常に貴重なものとなっていますが、そのゲーム性は現代においても高く評価されるべきものです。特撮ファンとゲームファンの双方を満足させる、まさに伝説の名にふさわしい、時代を超えて愛される1作であると言えるでしょう。
©1993 バンプレスト