アーケード版『出世大相撲』気合と昇進で横綱を目指すスポーツゲーム

アーケード版『出世大相撲』は、1984年6月に稼働開始したテクノスジャパンが開発、SNKが発売した相撲を題材とするスポーツゲームです。発売年は1984年6月、メーカーはSNK、開発会社はテクノスジャパン、ジャンルは相撲・スポーツゲームです。特徴として、場所ごとの勝ち越し・昇進システムや「気合」「怒り」などの演出で緊張感がある対戦ができ、技(押し、投げ、張り手等)を駆使する操作体系が取り入れられている点があります。

アーケード版以外の対応プラットフォーム

アーケード以外にも複数のプラットフォームで移植・配信がなされています。まず1994年2月25日にX68000で「ビデオゲームアンソロジーVol.8 エキサイティング・アワー/出世大相撲」の一部としてフロッピーディスクで移植されました。また、近年ではアーケードアーカイブスシリーズとして、PlayStation 4で2015年1月22日、Nintendo Switchで2019年7月11日にそれぞれダウンロード配信され、オリジナルのアーケード版を忠実に再現する形で遊べるようになっています。

開発背景や技術的な挑戦

当時、アーケードゲームでは格闘やスポーツものが流行し始めていた時期で、相撲という伝統競技をゲームで表現する試みとして注目されました。技術的には、8方向レバー+2ボタンというシンプルな操作体系を採用しており、突き押し、投げ、張り手など複数の技の表現、および「気合」ボタン(気合を入れることで有利になる特殊演出)などの追加で操作に変化を持たせる工夫がなされています。さらに、対戦はCPU戦が中心で、1プレイヤー+交互に2プレイヤーが操作する形式が採られており、リアルな相撲の昇進制度をモチーフにするなど進行構造にも工夫があります。

プレイ体験

プレイヤーは自分の力士キャラクターを操作し、CPUのライバル力士と一場所につき3番勝負を行い、勝ち越すと昇進して次の場所へ進めます。負け越したらゲームオーバーです。横綱昇進後はより厳しく、1敗でのゲームオーバー条件が課されるなど難易度が上がります。操作感としては、相撲の押し、投げ、張り手といった技を駆使するのが楽しく、また「気合」を使った演出や、CPUが一定時間で怒りモードに入り張り手を連発するなど緊張感のあるやりとりも魅力です。グラフィック・音響はアーケード当時の水準であり、相撲の雰囲気をゲームとして再現することに重点が置かれています。

初期の評価と現在の再評価

発売当初は、相撲を題材としたゲームとしては先駆けの存在であったものの、家庭用に移植されることがほとんどなく、アーケード限りで遊ばれることが多かったため、大規模な知名度を得たわけではありません。ただしゲームファンやレトロゲーム愛好家の間では、「操作の奥深さ」「相撲の臨場感」「昇進システムでの緊張感」が高く評価されており、後年配信されたアーケードアーカイブス版などで改めて注目されるようになっています。配信価格やダウンロード形式での再登場によって、現代のプレイヤーもアクセスしやすくなりました。

他ジャンル・文化への影響

『出世大相撲』は相撲を題材としたゲームとしてはアーケードで最も古い部類に入るタイトルであり、その後の相撲ゲームやスポーツゲーム全体に影響を与えています。「気合」や「怒り(ハリーアップ)」のような演出は、後の格闘ゲームや対戦型スポーツゲームで見られるプレッシャー演出・時間制約的な要素の先駆けともみなされます。また、相撲という日本的文化をゲーム機械に落とし込む試みとして、ゲームセンターにおける“和風スポーツもの”の一例として記憶されています。

リメイクでの進化

オリジナルのアーケード版後、X68000版での移植時には家庭用コンピュータ向けにグラフィックや操作の差異が見られ、当時のフロッピーディスク媒体という制約の中での移植であったため、読み込み速度などもアーケード版とは異なる体験がありました。近年のアーケードアーカイブスでの配信版(PS4・Nintendo Switch)では、画面設定の調整やボタン配置を変える機能など、現代機で遊びやすく改良された点があります。また、オリジナルの難易度設定や演出をほぼ忠実に再現するモードが含まれており、古いタイトルとしての風合いを保ちつつプレイヤビリティも向上しています。

特別な存在である理由

その第一に、日本の伝統競技である相撲をアーケードゲームとして早期にゲーム化し、単なる格闘アクションではなく、場所・勝ち越し・昇進・横綱昇進後の勝ち負けの重みなどを取り入れてゲーム進行の構造がしっかり作られていることが挙げられます。さらに、操作で投げ技や張り手など複数の戦術を使える点、「気合」や「怒り」などの演出でプレイヤーに緊張感を与える仕組みも、本作を単なる押す・引くの対戦から一歩進んだものにしています。また、アーケード版だけでなくX68000、PS4、Nintendo Switchといった複数の世代のプラットフォームに移植・配信されてきたことで、時代を超えて遊ばれる機会が保たれている点も特別です。

まとめ

アーケード版『出世大相撲』は、1984年にテクノスジャパン開発、SNK発売の相撲ゲームとして、操作性・演出・進行構造において当時としては先進性を持った作品です。家庭用移植はX68000での移植、そしてPS4・Nintendo Switchでのアーケードアーカイブスでの再配信といった形でなされ、オリジナル版の魅力を保ちつつ現代のプレイヤーにもアクセスしやすい形で残されています。伝統とゲーム性をうまく融合させた点で、相撲ゲームの歴史における重要な一本と位置づけられます。

©1984 テクノスジャパン / SNK