アーケード版『機動戦士ガンダムEXレビュー』は、1994年5月にバンプレストから発売されたアーケード用の対戦型格闘ゲームです。開発は株式会社アルニカが担当しており、当時普及していたアーケード基板であるセガのシステム32を採用して制作されました。本作は、人気アニメシリーズである機動戦士ガンダムを題材とした格闘ゲームの第2弾として登場し、前作の要素を継承しつつ大幅な進化を遂げた作品です。登場する機体は初代機動戦士ガンダムのモビルスーツを中心に構成されており、各機体の特徴を活かした多彩な技を繰り出すことができます。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発において最も大きな技術的挑戦は、当時の最新鋭基板であったシステム32の性能を最大限に引き出すことでした。前作にあたる作品がスーパーファミコン用の格闘ゲームをベースにしていたのに対し、本作は完全なアーケード専用設計として開発が進められました。これにより、当時としては非常に巨大で滑らかなキャラクターグラフィックスを実現することに成功しました。また、1994年という時期は、格闘ゲームブームが最高潮に達していた時代であり、プレイヤーの要求も非常に高まっていました。開発陣は、原作の世界観を忠実に再現しながらも、格闘ゲームとしての競技性をいかに両立させるかという課題に直面しました。特に、ビームサーベルの軌跡やバーニアの噴射といったエフェクト表現、そして各モビルスーツの重量感を感じさせるアニメーションの作り込みには、当時のドット絵技術の粋が尽くされています。ボイス面においても、主要キャラクターにはアニメ版と同じ豪華声優陣による新録ボイスが用意され、アーケードセンターの騒音の中でも聞き取りやすい音質で実装されるなど、ハードウェアの限界に挑む姿勢が見て取れます。
プレイ体験
プレイヤーが本作を体験する際、まず驚かされるのはその直感的な操作感とスピード感です。基本的な操作系は8方向レバーと4ボタン方式を採用しており、弱攻撃、中攻撃、強攻撃、そしてガードといった格闘ゲームの王道を基本としています。しかし、ガンダムならではの要素として、ブースト移動や空中ダッシュに近い挙動が盛り込まれており、地上戦だけでなく空中での読み合いが重要な役割を果たします。使用できる機体は、ガンダムやガンキャノン、ザク2、グフといったお馴染みのモビルスーツに加え、本作のタイトルにもなっているオリジナルの要素が加えられています。それぞれの機体は射撃武器と格闘武器を使い分けることができ、距離に応じた戦術の切り替えが求められます。特に超必殺技にあたる要素が各機体に用意されており、ゲージを溜めて放つ強力な一撃は、戦況を一変させる爽快感を持っています。対戦相手との間合いを測り、ガードを崩してコンボを叩き込むという格闘ゲームの醍醐味が、巨大なモビルスーツ同士のぶつかり合いとして見事に表現されています。
初期の評価と現在の再評価
発売当時の初期評価としては、グラフィックスの美しさとキャラクターボイスの充実が高く評価されました。特にガンダムファンからは、憧れのモビルスーツを自分の手で自由自在に動かせる点について、非常に好意的な反応が得られました。その一方で、一部の機体間に性能差が存在することや、格闘ゲームとしてのシステムが比較的シンプルであったことから、競技性を重視するプレイヤーからは厳しめの意見が出ることもありました。しかし、年月が経過するにつれて、本作に対する再評価が進んでいます。現代の視点で見ると、当時の2Dドット絵による重厚なメカニックの描写は、現在の3Dモデルにはない独特の味わいと職人技を感じさせるものとして、レトロゲームファンの間で高く支持されています。また、当時のアーケードの雰囲気を色濃く残す貴重な作品として、特定のゲームセンターやレトロゲームコミュニティで根強い人気を保ち続けています。
他ジャンル・文化への影響
本作が他のジャンルや文化に与えた影響は決して小さくありません。まず、キャラクター版権を利用した格闘ゲームというジャンルにおいて、高いクオリティのグラフィックスと原作再現を両立させることの重要性を証明しました。これは他のアニメ原作格闘ゲームの制作基準となりました。また、ロボットアクションという枠組みの中に格闘ゲームのコンボ理論を持ち込んだ点は、アクションゲームにおける攻撃アクションの組み立て方に影響を与えました。文化的な側面では、当時の中高生を中心にガンダムという作品への興味を再燃させ、プラモデルの販売や映像作品の再視聴へと繋がる架け橋となりました。また、本作で見られた演出手法やキャラクターの立ち絵の構成などは、トレーディングカードゲームやモバイルゲームにおけるイラスト制作の際にも、一つの完成されたスタイルとして参考にされることがありました。
リメイクでの進化
本作自体が直接的に最新ハードへフルリメイクされる機会は限られていますが、その精神や一部のシステムは後の作品へと受け継がれています。例えば、本作で見られた格闘と射撃をシームレスに使い分けるというコンセプトは、ガンダムを題材としたアクションゲームの根幹を成す要素へと進化を遂げました。もし現代の技術で完全リメイクが行われるならば、かつての美しい2Dドット絵のニュアンスを維持しつつ、高解像度化されたグラフィックスやオンライン対戦機能の実装、そしてより細密な機体カスタマイズ要素の追加などが期待されます。また、当時のアーケード版では実現できなかった、より複雑な環境破壊演出や、戦況に応じてリアルタイムに変化するボイス演出なども、進化の方向性として考えられます。本作が持っていた重厚なモビルスーツ戦という魅力は、時代を超えて新しい技術と融合することで、より鮮明に描き出される可能性を秘めています。
特別な存在である理由
機動戦士ガンダムEXレビューが特別な存在である理由は、それが単なるキャラクターゲームに留まらず、当時のアーケードゲームシーンにおける一つの到達点であったからです。バンプレストとアルニカがタッグを組み、システム32という強力な基板を使い切って生み出された映像美は、当時を象徴するアイコンの一つとなりました。また、本作はガンダムという巨大なコンテンツが、アーケードゲームという厳しい市場で生き残るための戦い方を示した作品でもあります。プレイヤーは、コインを投入してレバーを握るたびに、自分が1年戦争の戦場に立っているかのような没入感を味わうことができました。その直感的な楽しさと、奥深いキャラクター愛が同居している点こそが、多くのプレイヤーの記憶に深く刻まれている理由です。他のガンダムゲームにはない独特の重みと、ドット絵黄金時代特有の熱量が、今なお本作を唯一無二の存在として輝かせています。
まとめ
アーケード版『機動戦士ガンダムEXレビュー』は、1994年の発売以来、多くのプレイヤーを魅了し続けてきた名作です。美しいグラフィックス、迫力のサウンド、そしてガンダムならではの戦術性が融合した本作は、当時のアーケードゲームの技術水準を示す重要な資料でもあります。前作からの正当な進化を遂げつつ、独自のシステムを盛り込むことで、格闘ゲームとしても一定の完成度を誇っていました。隠し要素やキャラクターごとの個性が際立っており、当時の熱狂的な対戦風景を思い起こさせる力を持っています。歴史的な視点で見ても、ガンダムアクションゲームに与えた影響は計り知れず、今なおレトロゲームファンから愛される理由が随所に散りばめられています。この作品は、ガンダムゲームの系譜における輝かしい1歩として、これからも語り継がれていくことでしょう。
©1994 バンプレスト