アーケード版『赤ずきん』は、1984年にセイブ開発が開発し、シグマが販売した縦スクロールのシューティングゲームです。童話の赤ずきんをモチーフとしていながら、道中に現れるオオカミなどの敵を、赤ずきんがショットで倒していくという、童話の世界観からは想像できないユニークなゲームジャンルで注目を集めました。プレイヤーは赤ずきんを操作し、道を歩きながら花を摘んで得点を稼ぎつつ、森の危険から身を守りながらおばあさんの家を目指します。単純ながらもコミカルなキャラクターデザインと、道中が四季や様々な風景で構成されているビジュアルが特徴的です。
開発背景や技術的な挑戦
当時のアーケード市場では、シューティングゲームが人気のジャンルの一つでしたが、『赤ずきん』は童話のキャラクターを主人公に据えるという、異色の切り口を取りました。開発元であるセイブ開発は、後に名作シューティングを多数手掛けることになりますが、本作はその初期の作品にあたります。技術的な面では、キャラクターや背景のグラフィックに、当時のゲームとしては比較的柔らかな表現を用いており、童話的な雰囲気を演出するための工夫が見られます。特に、画面を縦にスクロールさせながら、道沿いのオブジェクトや敵を配置していく設計は、後の縦スクロールシューティングの基礎的な要素を含んでいます。また、単純な攻撃手段だけでなく、道を逸れて花を摘むことでボーナス得点を獲得できるという、ゲームルールに遊びの要素を加えることにも挑戦しています。
プレイ体験
プレイヤーが操作する赤ずきんは、左右の移動とショットボタンというシンプルな操作体系で、進行する道をひたすら進んでいきます。ゲームの目的はおばあさんの家にたどり着くことですが、道中にはオオカミやその他の敵キャラクターが多数出現し、プレイヤーの行く手を阻みます。ショットは一定間隔で発射され、敵を倒すことで安全を確保できますが、道の両脇に咲く大きな花を摘むことで得られるボーナス点も重要な要素となります。時には危険を冒して道から外れ、花を摘むか、それとも安全を優先して敵を倒すかという判断が、スコアメイクの鍵となります。季節や風景が変化するステージ構成は、プレイヤーに飽きさせない視覚的な楽しさを提供しました。ゲームは繰り返し遊ぶことを前提としたループ構成になっていたと考えられており、プレイヤーはより高いスコアを目指して腕を磨くことになります。
初期の評価と現在の再評価
『赤ずきん』は、そのコミカルで風変わりなテーマから、当時のアーケードゲームとしては際立った存在でした。従来の硬派なシューティングゲームとは一線を画す、親しみやすいビジュアルと操作性で、幅広い層のプレイヤーに受け入れられたと考えられます。しかし、他の著名なシューティングゲームと比較すると、その存在感はやや地味であったかもしれません。現在の再評価としては、ゲーム史を振り返る中で、セイブ開発の初期の試みとして、また童話のキャラクターを大胆にアクションゲームに取り入れたユニークな作品として注目されています。シンプルなゲームデザインの中に、後の名作に通じるアイデアの萌芽を見出すプレイヤーもいます。
他ジャンル・文化への影響
『赤ずきん』が直接的に他のビデオゲームジャンルや文化に大きな影響を与えたという明確な記録は見当たりません。しかし、童話や神話のキャラクターを大胆にゲームの題材とし、そのイメージを覆すようなゲーム性を持たせるというアプローチは、後のゲームデザインにおける柔軟な発想の一つとして評価できます。童話をモチーフにしたゲームは数多くありますが、本作のようにシューティングゲームという形を取った例は珍しく、この発想の自由さが、後の多様なゲーム開発への間接的な影響として考えられます。また、セイブ開発が後に『雷電』シリーズなど、縦スクロールシューティングの名作を世に送り出す上で、本作がその経験の一端を担ったという点も、技術的な影響として重要です。
リメイクでの進化
アーケードゲーム版『赤ずきん』について、当時のグラフィックやゲーム性を忠実に再現し、あるいは現代風にアレンジした公式の大規模なリメイク作品は、現在に至るまで確認されていません。しかし、赤ずきんという題材自体が非常にポピュラーであるため、同名の作品や、赤ずきんをモチーフとした他のゲームやコンテンツは多数存在しています。それらの作品は、横スクロールアクションやマーダーミステリーなど、様々なジャンルで展開されていますが、これらはアーケード版『赤ずきん』の直接的なリメイクや続編ではありません。オリジナルのアーケード版が持つ独特な世界観とゲーム性は、リメイクされることなく、唯一無二の存在としてゲーマーの記憶に残っています。
特別な存在である理由
アーケード版『赤ずきん』が特別な存在である理由は、その特異なコンセプトと、開発元であるセイブ開発の歴史における初期の作品という位置づけにあります。誰もが知る童話の主人公を、可愛らしさを保ちつつも敵を撃退するシューティングゲームのプレイヤーとして登場させるという大胆な発想は、当時のゲームセンターにおいて異彩を放っていました。また、後の名作シューティングゲームを生み出す会社の初期の作品として、その源流を探る上でも貴重なタイトルです。シンプルな操作性とユニークな世界観が融合した本作は、当時のビデオゲーム文化の多様性と自由な発想を象徴する作品の一つと言えるでしょう。
まとめ
アーケード版『赤ずきん』は、1984年にセイブ開発が世に送り出した、童話を題材とした異色の縦スクロールシューティングゲームです。プレイヤーは赤ずきんとなり、道中のオオカミや様々な敵をショットで倒しながら、おばあさんの家を目指します。花を摘むことでボーナス点が得られるなど、単なるシューティングではない独自のゲーム要素も含んでいます。その独特な世界観と、後の名作シューティングを生み出す開発会社の初期の挑戦という点で、ビデオゲーム史の一ページを飾る興味深い作品です。
©1984 SEIBU KAIHATSU/SIGMA