アーケード版『ハレーズコメット』撃ち漏らしが命取りの異色STG

ハレーズコメット

アーケードゲーム版『ハレーズコメット』は、1986年1月にタイトーから発売された縦スクロールシューティングゲームです。開発はタイトー熊谷研究所が担当し、ゲームデザインは後に『バブルボブル』を手がける三辻富貴朗氏、音楽は『影の伝説』を手がける小倉久佳氏が担当しました。本作は、当時話題となっていたハレー彗星の地球接近をモチーフとしており、プレイヤーは自機「マイ・シップ」を操作して、彗星から襲い来る敵から太陽系の惑星を守ることが目的です。敵を撃ち漏らすと惑星の被害率が上昇し、100%に達するとゲームオーバーになるという、独特のゲームシステムが特徴です。

開発背景や技術的な挑戦

本作の開発は、当時社会的な話題となっていたハレー彗星をゲームに取り込むという、時事的なテーマから始まりました。従来のシューティングゲームとは異なる、ユニークなゲームシステムを構築することが大きな挑戦でした。特に、敵を撃ち漏らすとゲームオーバーになる「被害率」のシステムは、プレイヤーに常に緊張感と高い集中力を求めるものでした。限られたハードウェアの性能の中で、多くの敵や弾幕を表現し、滑らかなスクロールを実現するため、開発チームは様々な技術的な工夫を凝らしました。また、地形によって自機が破壊されることがなく、敵と弾を避けつつ、撃ち漏らさないようにするという独自のゲームバランスも、開発者の試行錯誤の結果と言えます。

プレイ体験

本作のプレイ体験は、従来のシューティングゲームとは一線を画すものでした。プレイヤーは、敵や敵弾を避けながら、同時に敵の撃ち漏らしにも気を配らなければなりません。この「撃ち漏らすとゲームオーバー」というシステムは、プレイヤーにこれまでにない緊張感を与えました。地形にぶつかって自機が破壊されることはないため、敵を倒すことに集中できますが、敵の動きはトリッキーで、大量の弾を放ってくるため、油断できません。特定の岩などを破壊すると出現するパワーアップアイテムを集め、自機を強化していく過程も重要です。シンプルな操作ながらも、常に先を読み、どの敵から倒すべきかを判断する戦略性が求められ、高い難易度と奥深さを両立していました。

初期の評価と現在の再評価

アーケード版『ハレーズコメット』は、その独特なゲームシステムが当時のプレイヤーに新鮮な驚きを与え、一定の人気を博しました。しかし、あまりにも高い難易度と、一度の撃ち漏らしが命取りになるゲーム性から、一部のプレイヤーからは厳しい評価を受けることもありました。現在の再評価では、その唯一無二のゲーム性が再認識されています。自機がやられてもゲームオーバーになるだけでなく、敵を撃ち漏らした数でもゲームオーバーになるというシステムは、他のシューティングゲームにはない独特の緊張感を生み出しており、コアなシューティングファンから高く評価されています。近年では、家庭用ゲーム機にも移植され、当時の雰囲気をそのままに、多くのプレイヤーにこの名作の奥深さが再発見されています。

他ジャンル・文化への影響

『ハレーズコメット』は、その独特なゲーム性から、直接的に後続のゲームに影響を与えるというよりは、シューティングゲームの多様性を広げた作品として評価されています。敵を撃ち漏らすことがゲームオーバーにつながるという発想は、後のゲームデザインに様々な形で影響を与えたと考えられます。また、ハレー彗星という時事ネタをゲームにうまく落とし込んだ発想は、ゲームが時代を反映するメディアであるということを示しました。本作のBGMは、タイトーのサウンドクリエイターによるもので、ゲームの緊張感を高める重要な要素として、ゲーム音楽ファンからも高く評価されています。

リメイクでの進化

アーケード版『ハレーズコメット』は、ファミコンディスクシステム版では『ハレーウォーズ』として移植され、ゲームボーイなどにも移植されました。近年では、アーケード版を忠実に再現した「アーケードアーカイブス」シリーズとして、現代の家庭用ゲーム機でも楽しめるようになっています。これらの移植版では、オリジナルの持つユニークなゲーム性をそのままに、グラフィックやサウンドが向上し、より快適にプレイできるようになりました。また、オンラインランキング機能が追加され、当時のように全国のプレイヤーとスコアを競い合うことができるようになりました。

特別な存在である理由

『ハレーズコメット』が特別な存在である理由は、その唯一無二のゲームシステムにあります。単に敵を倒し、弾を避けるだけでなく、敵の撃ち漏らしが許されないというルールは、プレイヤーに高い集中力と戦略性を要求しました。このシステムは、ゲームの難易度を上げると同時に、クリアした時の達成感をより大きなものにしました。本作は、アーケードゲームの多様性が頂点に達していた時代を象徴する作品であり、後のシューティングゲームの可能性を広げた一つとして、今もなお多くの人々に愛され、語り継がれています。

まとめ

アーケード版『ハレーズコメット』は、当時の話題となっていたハレー彗星をモチーフに、ユニークなゲームシステムを搭載したシューティングゲームです。敵の撃ち漏らしが許されないという、他に類を見ないゲーム性は、プレイヤーに常に緊張感を強いるものでしたが、その分、クリアした時の達成感は格別でした。本作は、その独創的なアイデアと、緻密なゲームバランスによって、多くのシューティングファンに愛され、アーケードゲームの歴史に名を刻みました。その革新的なゲームデザインは、時代を超えて今もなお多くのプレイヤーに刺激を与え続けているのです。

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