アーケード版『イグジーザス』は、1987年にタイトーからリリースされた強制横スクロールのシューティングゲームです。開発は同社の内製チームによって行われました。プレイヤーは「コスモファイターロビン」を操作し、謎の軍団が巣食う第4銀河系を舞台に戦います。ショットとミサイル、そしてオプションを駆使して敵を撃破していくのが基本となります。パワーアップアイテムが豊富に用意されており、レーザーやディスラプションなどの強化が可能です。全4ステージで構成されており、1周クリア後は敵の攻撃が激化する難易度の高いループゲームとなっています。イグジーザスという名称は、このゲームの世界観を象徴する造語として名付けられました。
開発背景や技術的な挑戦
『イグジーザス』の開発において、タイトーは特殊筐体技術に大きな挑戦を試みました。特に革新的だったのは、ハーフミラーを使用して2つの画面を合成し、映像に奥行きを持たせた立体表示を実現した専用筐体バージョンです。これは、広大な宇宙空間を表現し、プレイヤーに迫力のある臨場感を提供するための、当時の先端技術を駆使した試みでした。背景となる遠景と、自機や敵などの近景を異なる画面に描画し、それをハーフミラーで重ね合わせることで、擬似的な奥行きを創出しています。これにより、奥行きのある空間を高速でスクロールする視覚効果を生み出しました。後に通常のアップライト筐体で稼働できる1画面バージョンもリリースされましたが、当初の専用筐体での体験は、当時のアーケードゲームとしては非常に革新的なものでした。
また、本作は自機の攻撃手段として、ブラスター(ショット)とミサイル、さらにオプション射出という複数の操作要素を取り入れています。これにより、プレイヤーは状況に応じて攻撃を使い分ける戦略性を要求されました。これは、単純な連射競争に終わらせることなく、ゲームプレイに深みを加えるための設計思想が反映されています。タイトーがこの時期に積極的に取り組んでいた、新しい映像表現と独自のゲームシステムの融合を目指した意欲作と言えます。
プレイ体験
プレイヤーが『イグジーザス』で体験する大きな特徴は、豊富なパワーアップと、形態変化を活かした戦術的なゲームプレイです。自機は、戦闘機形態から人型ロボットのような人間形態へと姿を変えることが可能で、アイテムによってレーザーやディスラプションといった強力な攻撃力を手に入れます。中でも、オプションアイテムを装備した際の運用が、本作のプレイ体験を独自のものにしています。オプションボタンを押すことで、オプションを前方に射出して援護射撃させたり、敵弾を消す盾として活用したりと、その使い方が攻略の鍵となります。このオプションの能動的な操作が、他のシューティングゲームにはない戦略性をプレイヤーにもたらしました。
しかしながら、ゲームの難易度は高く設定されており、特に2周目以降は敵の攻撃が非常に激しくなり、コンティニューも不可能となるため、綿密なパターン化と高い集中力が要求されます。敵の攻撃タイミングが予期しづらい部分も多く、プレイヤーの不注意によるミスが発生しやすい点も、ゲームに常に緊張感を与えています。一方で、ミスをしても比較的細かい復活ポイントから再開でき、少ないアイテムで立て直しがしやすい設計は、高い難易度でありながらもプレイヤーに再挑戦を促すバランス設計となっています。
初期の評価と現在の再評価
『イグジーザス』は、1987年というシューティングゲームの傑作が数多く登場した激戦期にリリースされました。初期の評価は、特殊筐体が提供する立体的な映像表現という技術的な側面には注目が集まったものの、ゲーム内容やグラフィックデザイン、サウンドなどについては、当時の他の人気タイトルと比較して評価が分かれました。一部では、その独特なグラフィックや大音量で流れるBGMを好ましく思わないという意見も存在し、必ずしも万人受けする作品ではありませんでした。
しかし、現在の再評価においては、その独自の操作性や挑戦的なゲームバランスが改めて注目されています。単なる横スクロールシューティングゲームとしてではなく、形態変化やオプションの戦略的な運用など、他の作品には見られない個性が評価されています。特に、ミスをした後の復活のしやすさや、連射機能を持つアイテムの存在など、プレイヤーの努力を尊重する設計は、現代のプレイヤーからも再評価されています。また、ハーフミラーによる立体表示という、当時の技術の粋を集めた挑戦的な姿勢自体が、レトロゲームファンから高く評価される理由の一つとなっており、技術史的な価値も見出されています。
他ジャンル・文化への影響
『イグジーザス』が他のビデオゲームジャンルや文化へ直接的に与えた影響について、特定の作品や事例を挙げるのは難しい面があります。しかし、ハーフミラーを用いた立体視技術は、当時のアーケードゲームにおける視覚表現の可能性を広げた技術的な試みの一つとして、一定の貢献をしています。この技術的な挑戦は、後のアーケードゲーム開発者たちに、新しい表現手法への探求心を刺激した可能性があります。
また、強制横スクロールシューティングゲームというジャンルの中で、自機の形態変化やオプションを射出・活用するシステムを導入した点は、後の作品におけるパワーアップシステムの多様化の一例として位置づけられます。ゲーム音楽やサウンドの面では、その特異な印象を持つサウンドが、一部のプレイヤーに強烈な記憶として残り、レトロゲームのBGM文化の一端を担っています。特定の文化やミームへの影響は限定的かもしれませんが、そのユニークなデザインと難易度の高さは、コアなシューティングゲームファンコミュニティの中で、今なお語り草となっています。
リメイクでの進化
『イグジーザス』は、他のタイトーの名作群のように大規模なフルリメイクが施された例は、現在までに確認されていません。しかし、同社のレトロゲームコレクションタイトルの中に、オリジナル版のアーケード移植として収録される機会が何度かあります。これらの移植版では、当時の雰囲気をそのまま再現することに重点が置かれており、現代の技術によるグラフィックの刷新やゲームシステムの大きな進化は伴っていません。
移植版における進化としては、家庭用ゲーム機やPCといったプラットフォームでのプレイを可能にした点が挙げられます。これにより、オリジナルの筐体を持たなくても、手軽に遊べるようになりました。また、連射機能やゲームスピードの調整などの補助機能が追加された点は、高い難易度を持つオリジナル版を現代のプレイヤーにもアクセスしやすくするための配慮であり、一種の進化と言えます。多くは1画面バージョンをベースとしていますが、当時の開発資料やアートワークの閲覧など、歴史的な資料価値を高める要素が加えられることも、コレクションタイトルならではの進化と言えるでしょう。
特別な存在である理由
『イグジーザス』がビデオゲームの歴史において特別な存在である理由は、その技術的な野心と、特異なゲームデザインの組み合わせにあります。ハーフミラーを利用した立体視という、当時の最先端技術を導入し、映像表現の可能性に挑戦したタイトーの開発姿勢を体現している作品です。この専用筐体の存在が、本作を単なるシューティングゲーム以上の、アーケードの時代を象徴する作品として位置づけています。
ゲームプレイの面では、戦闘機と人間形態の切り替えや、オプションの戦略的な使用など、独自のシステムを採用しており、同時期の他のシューティングゲームとは一線を画しています。その難易度の高さから、一部のコアなプレイヤーを熱狂させた点も、特別な存在感を放つ理由です。賛否両論を呼んだユニークなグラフィックやサウンドも含めて、「タイトーらしさ」が詰まった、個性が際立つ作品として記憶されています。
まとめ
アーケード版『イグジーザス』は、1987年にタイトーが世に送り出した横スクロールシューティングゲームの異色作です。ハーフミラーを用いた立体表示専用筐体という、技術的な挑戦がなされた点で、ビデオゲーム史における意義は大きいです。プレイヤーは、豊富なパワーアップと、形態変化、オプションの運用といった戦略的な要素を駆使して、高い難易度に挑みます。その独自の操作感と、賛否両論を呼ぶアートセンスは、一部の熱心なプレイヤーから強い支持を受けました。大規模なリメイクはされていませんが、レトロゲームコレクションを通じて、その挑戦的な精神と独特のゲーム性は現代にも受け継がれています。技術的な野心とユニークなゲームデザインが融合した『イグジーザス』は、今なお色褪せない特別な魅力を持つ作品であると言えます。
©1987 タイトー
