AC版『D.D.クルー』最大4人同時プレイが熱いリアル系アクション

アーケード版『D.D.クルー』は、セガより1991年7月頃に稼働を開始したベルトスクロールアクションゲームです。当時のアーケードゲーム市場で主流だった格闘アクションのジャンルにおいて、最大4人同時プレイという特徴を打ち出し、プレイヤーに共闘の熱狂を提供しました。開発もセガが手がけており、「ノンストップ・マルチ・バトル」というキャッチコピーの通り、奥行きのあるステージを横スクロールしながら進み、襲い来る敵をパンチやキック、そして必殺技でなぎ倒していくスタイルが特徴です。使用可能なキャラクターは、個性豊かなガン・ホー、F.F.、キング、バスターの4人が設定されています。

開発背景や技術的な挑戦

『D.D.クルー』が稼働した1991年頃は、アーケードゲームにおけるベルトスクロールアクションというジャンルが、システムの洗練とグラフィック表現の進化を続けていた時期にあたります。本作はセガのSYSTEM 18基板を採用しており、これにより当時の水準としては滑らかなグラフィック表現と、リアルな実写的な質感を追求したキャラクターデザインを実現しました。特に技術的な挑戦として挙げられるのは、最大4人同時プレイの実現です。当時のアーケードゲームにおいて、多人数同時プレイは協力プレイの楽しさを高める重要な要素でしたが、複数のプレイヤーキャラクターと多数の敵キャラクターが同時に画面上で動作し、なおかつ処理落ちなくゲームを進行させることは、ハードウェアの性能を限界まで引き出す必要がありました。この多人数プレイを実現するためのゲーム設計と、高音質なラップやエレクトロニカを取り入れたサウンドトラックも、作品のリアルなストリートファイトの雰囲気を演出する上で重要な要素となっています。

プレイ体験

本作のプレイ体験は、個性的な4人のキャラクターによる協力と、当時のベルトスクロールアクションゲームとしては一線を画す「リアルさ」の追求に集約されます。プレイヤーは、武術家、巨漢、ストリートファイターなど、それぞれ異なる格闘スタイルと必殺技を持つキャラクターを選択し、全7ステージの過酷な戦いに挑みます。操作は攻撃とジャンプの2ボタンを基本とし、同時押しやダッシュとの組み合わせで様々な大技や必殺技が繰り出せる仕様です。しかし、特筆すべきはそのシステム面です。当時の他作品と比較して、敵への攻撃判定や敵の動きが比較的「硬派」で、大群の敵を一気にまとめて倒す爽快感よりも、個々の敵と真剣に向き合う緊張感が強いのが特徴でした。パンチやキックが一度に複数の敵にヒットしにくい設計は、プレイヤーにとって極めてリアルな戦いを強いるものであり、一撃一撃の重みを感じさせるプレイ体験を提供しました。これにより、プレイヤー間の連携、特に4人同時プレイ時のチームワークがクリアの鍵を握る、奥深いゲーム性となっていました。

初期の評価と現在の再評価

『D.D.クルー』は、稼働当初、そのリアル志向のグラフィックとサウンド、そして最大4人同時プレイという先進的な特徴によって、一定の注目を集めました。しかし、ゲームシステム自体が、当時の爽快感を重視するベルトスクロールアクションの主流とは異なり、敵への攻撃が単調に感じられやすいという声もあり、初期の評価は賛否両論に分かれました。特に、攻撃のヒット判定が厳しく、集団戦での立ち回りが難しい点は、プレイヤーにとって高い壁となり得ました。現在の再評価においては、当時のセガが追求した「リアルなストリートファイト」の試み、そしてSYSTEM 18基板の能力を活かした独自のグラフィック表現と音楽性が改めて評価されています。ベルトスクロールアクションというジャンルの中で、他作品とは異なる硬派なゲーム性と、4人同時プレイという協力要素に焦点を当てた点が、単なる凡庸な作品ではない、セガらしい挑戦的な意欲作として再認識されています。

他ジャンル・文化への影響

『D.D.クルー』は、ベルトスクロールアクションというジャンルにおいて、その後の作品に直接的なシステムの影響を与えるような、決定的な革新を生んだ作品とは言い切れません。しかし、最大4人同時プレイという試みは、多人数協力プレイの可能性を追求した一つの事例として、その後の協力型アーケードゲームの設計思想に間接的な影響を与えたと考えられます。また、実写的なリアルさを追求したグラフィックや、当時の最先端をいくラップやエレクトロニカを取り入れた音楽は、ゲームの世界観を深く印象付け、後のストリートカルチャーをテーマとしたビデオゲーム作品の雰囲気作りに影響を与えた可能性もあります。特に、セガがこの時期に追求したリアル路線の表現は、後の同社のゲーム開発、特に格闘ゲームやアクションゲームにおけるグラフィック表現の一つの方向性を示唆するものとなりました。文化的な側面では、本作に登場する個性的なキャラクター群、特に東洋の武術家を思わせる「F.F.」などの存在は、当時のプレイヤーに強い印象を残し、ゲームセンター文化の一端を担いました。

リメイクでの進化

アーケード版『D.D.クルー』は、その稼働から現在に至るまで、主要な家庭用ゲーム機や現行のプラットフォームで、大々的なリメイクや移植版がリリースされていません。このため、「リメイクでの進化」というテーマで具体的な内容を記述することはできません。もし、仮に本作が現代の技術でリメイクされるとするならば、当時の特徴であった4人同時プレイの要素を、オンラインマルチプレイ機能として実装することが、最も大きな進化の一つとなるでしょう。また、ゲーム性の「硬派さ」を維持しつつも、現代のプレイヤーが求める爽快感とのバランスを取るための、キャラクターごとの技の調整や、集団戦における新たなシステム追加などが考えられます。当時のリアルな世界観を、HDグラフィックや3D技術で再構築し、サウンドトラックも現代風にアレンジすることで、新たなプレイヤー層にアピールする可能性を秘めていると言えます。

特別な存在である理由

『D.D.クルー』がビデオゲームの歴史において特別な存在である理由は、当時のセガがベルトスクロールアクションという成熟期にあったジャンルに対し、単なる焼き直しではない、独自の視点と技術的な挑戦を投じた意欲作であったことにあります。最大4人同時プレイという、当時のハードウェア性能を考えると非常に野心的なシステムを実装し、協力プレイの楽しさを追求しました。また、滑らかなアニメーションとリアルな表現、そして時代を捉えたクールなサウンドトラックは、他のファンタジーやSF色の強いアクションゲームとは一線を画す、独特のストリートの雰囲気を作り出しました。そのゲーム性は、万人受けするものではなかったかもしれませんが、その「硬派」でプレイヤーの連携を強く要求するシステムは、一部の熱心なプレイヤーにとって高い達成感と、奥深い戦略性を提供するものでした。この独自の立ち位置と、セガの挑戦的な姿勢こそが、『D.D.クルー』を特別な作品として記憶に残るものにしています。

まとめ

アーケード版『D.D.クルー』は、1991年にセガが放った、ベルトスクロールアクションゲームへの挑戦状と言える作品です。最大4人同時プレイという協力要素の追求、SYSTEM 18基板の能力を活かしたリアル志向のグラフィックとサウンド、そして硬派なゲームシステムは、当時の市場において独自の存在感を放ちました。万人向けの爽快感よりも、一撃の重みとプレイヤー間の連携が重要となる設計は、他の追随を許さない個性となっており、後のゲーム開発にも間接的な影響を与えています。リメイクの機会は訪れていませんが、もし現代によみがえるならば、オンラインマルチプレイという形で、その多人数協力のコンセプトは新たな輝きを放つことでしょう。『D.D.クルー』は、セガのアーケードゲームの歴史において、技術と表現の両面で意欲的な試みを行った、記憶されるべきタイトルの一つです。

©1991 SEGA