アーケード版『E-SWAT』は、1989年2月にセガから発売された横スクロール型のポリスアクションゲームです。正式名称は『E-SWAT: Cyber Police City Post』。本作は、近未来の犯罪都市「リバティシティ」を舞台に、プレイヤーは警察官として凶悪な犯罪組織に立ち向かいます。ゲーム前半は生身の警察官として拳銃一本で戦いますが、階級が上がることで後半からは特殊装甲服「ICE(インターセプト・コンバット・エキップメント)」を装着したサイバーポリスとして戦うという、二段構成のパワーアップシステムが大きな特徴です。セガのシステムボード「SYSTEM 16B」による精細なグラフィックと、重厚なサウンドが世界観を盛り上げます。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発における最大の挑戦は、一つのゲームの中で「警察官の成長」をシステムと演出の両面で表現することでした。前半のステージでは、限られた弾数や遮蔽物を利用した慎重な立ち回りが求められるハードボイルドなアクションを展開し、後半では飛行能力や強力な火力を備えたパワードスーツによる圧倒的な攻撃力を楽しむという、全く異なるプレイ感覚の融合を目指しました。SYSTEM 16Bの機能を活かし、背景の多重スクロールや、爆発エフェクトの重ね合わせ、そしてICE装着時のメカニカルな動作アニメーションなど、視覚的なインパクトを追求しています。また、音声合成チップを用いた「Freeze!(動くな!)」という警察官らしいボイス演出も、当時のゲームセンターにおいて強い存在感を放つための技術的工夫の一つでした。
プレイ体験
プレイヤーは、ショットとジャンプの2ボタンを基本操作として進みます。前半パートでは、敵の銃火器による攻撃が非常に鋭いため、段差や壁に身を隠しながら着実に敵を排除していく緊張感のあるプレイが求められます。任務を完遂し昇進を重ねることで、いよいよICEを装着すると、ゲーム性は一変します。ICE装着後は、火炎放射器やミサイルといった強力なサブウェポンが使用可能になり、ブースターによる滞空移動も行えるようになります。この「弱かった主人公が劇的に強化される」というカタルシスは、本作独自の魅力です。ステージ構成も、市街地から廃工場、そして組織の本拠地へと進むにつれて激しさを増し、アーケードゲームらしい高い難易度と、それに見合ったクリア時の達成感を提供しています。
初期の評価と現在の再評価
発売当時は、そのSFポリスアクションという魅力的なテーマと、パワードスーツを装着した際のかっこよさがプレイヤーの間で大きな話題となりました。特にICE装着シーンの演出は、当時の少年たちの心を掴みました。現在では、80年代後半のサイバーパンク的な空気感を色濃く残した作品として再評価されています。また、一見するとシンプルながらも、敵の出現パターンを覚えることで攻略ルートを構築していくストイックなゲームデザインは、レトロアクションゲームの良き伝統を体現しているとされています。近未来を舞台にしたセガのアクションゲーム群の中でも、独自の位置を占める名作として語り継がれています。
他ジャンル・文化への影響
『E-SWAT』が描いた「強化スーツを纏った警察官」というコンセプトは、当時の映画『ロボコップ』などの影響を受けつつも、ビデオゲームならではのアクション性に落とし込まれていました。このスタイルは、後の多くのサイバーポリス系ゲームのプロトタイプの一つとなりました。また、特定の条件を満たすことで外見と能力が劇的に変化するパワーアップシステムは、プレイヤーのモチベーションを維持させる優れた手法として、後続のアクションゲームに影響を与えました。セガ自身も、本作の流れを汲むタイトルを後に複数展開しており、同社の持つ「メカニカルで硬派なアクション」というブランドイメージを強固なものにしました。
リメイクでの進化
本作は、1990年にメガドライブへ移植されましたが、そこでは単なる移植に留まらない大幅なアレンジが加えられました。ストーリー性やステージ構成が変更され、ICEの武器システムも家庭用向けに再構築されました。近年では、アーケード版を忠実に再現した移植がNintendo SwitchやPlayStation 4などの現行機でプレイ可能になっています。これらの復刻版では、クイックセーブや巻き戻し機能が搭載されるなど、アーケード版の持つ高い難易度を現代のプレイヤーでも攻略しやすい形で楽しむことができるよう進化しています。しかし、オリジナルの持つ「手応えのある難しさ」と「重厚な操作感」は、今なお色褪せない魅力として尊重されています。
特別な存在である理由
『E-SWAT』が特別な存在である理由は、その「硬派な一貫性」にあります。警察官としての職務を全うし、昇進してより強力な悪に立ち向かうという物語が、ゲームシステムと完璧にリンクしています。また、SYSTEM 16B時代のセガ特有の、暗めの色彩設計と鋭い効果音が作り出す世界観は、当時のゲームセンターの中でも一際シリアスな光を放っていました。単なるキャラクターゲームではない、アクションとしての質の高さと、パワードスーツという男のロマンを融合させた点において、本作は唯一無二の輝きを放っています。
まとめ
アーケード版『E-SWAT』は、セガが放った近未来アクションの金字塔です。生身の人間からサイバーポリスへと進化する過程を体験できるゲーム性は、今なお新鮮な興奮を与えてくれます。難易度は決して低くありませんが、それゆえにICEを装着した際の万能感、そして強敵を撃破した際の喜びは格別です。80年代アーケードシーンの熱気を凝縮したような本作は、警察官としての正義と、メカニカルなアクションの楽しさを教えてくれる、ビデオゲーム史に刻まれるべき不朽の一作です。
©1989 SEGA


