アーケード版『エレベーターアクション デスパレード』は、2009年7月にタイトーから発売されたアーケード版のガンシューティングゲームです。本作は1983年に登場したアクションゲームの金字塔である『エレベーターアクション』の系譜を継ぎつつ、3Dグラフィックによる一人称視点のシューティングへと大胆な変貌を遂げました。プレイヤーは特殊部隊の一員となり、テロリストに占拠された巨大ビルへ潜入して人質救出や核ミサイルの無力化を目指します。最大の特徴は、筐体そのものがエレベーターを模した大型の密閉型となっている点です。実際に開閉する物理的な扉が設置されており、ゲーム内の状況と連動して動くことで、これまでのアーケードゲームにはなかった圧倒的な臨場感と没入感を実現しています。
開発背景や技術的な挑戦
開発における最大の挑戦は、2Dアクションであった原作のコンセプトをいかにして3Dのガンシューティングに適合させるかという点にありました。エレベーターという限定された空間を舞台にするため、プレイヤーが飽きを感じないよう、筐体と連動する物理ギミックの開発に多くの力が注がれました。特に画面内の映像と実際の扉の開閉を1ミリ秒単位で同期させる制御技術は、当時のアーケード基板の性能を最大限に引き出すものでした。また、密閉された筐体内部での音響効果にもこだわりがあり、多チャンネルのスピーカー配置によって敵の足音や銃声の方向を正確に再現する技術的な工夫が施されています。
プレイ体験
プレイヤーは筐体の中に入り、本物のエレベーターのような空間で銃型コントローラーを構えます。ゲームが始まると物理的な扉が閉まり、各階に到着するたびに扉が開いて激しい銃撃戦が展開されます。この扉の開閉が攻防の鍵を握っており、敵の攻撃が激しい時には筐体にあるボタンを押して扉を閉め、一時的に身を守るという独自の戦略性が求められます。エレベーター内だけでなく、時には屋上や吹き抜けといった開放的なエリアでの戦闘もあり、緩急のついた構成がプレイヤーを飽きさせません。2人協力プレイでは、1人が攻撃に専念し、もう1人が扉の操作で防御を担うといった連携も可能で、非常に密度の高いプレイ体験を提供します。
初期の評価と現在の再評価
稼働当初は、その巨大な筐体と扉が自動で開閉するインパクトによって、多くのプレイヤーの目を引きました。特にゲームセンターという騒がしい環境の中で、自分たちだけの閉鎖空間で遊べるという体験は非常に新鮮であり、グループやカップル層からも高い支持を得ました。ガンシューティングとしての完成度も高く、敵を倒した際の爽快感や適度な難易度バランスが評価されました。現在では、物理的なギミックを多用した体感型ゲームが減少傾向にあることから、当時の贅沢な筐体設計が改めて注目されています。実機でしか味わえない感覚を求めて、現在でも稼働店舗を探し求める熱心なプレイヤーが存在しており、アーケード文化の象徴的な1作として認められています。
他ジャンル・文化への影響
本作が示した、物理的な遮蔽物を利用して身を守るというシステムは、その後のアトラクション型ガンシューティングにおける演出手法に影響を与えました。画面内の出来事を単なる映像として捉えるのではなく、プレイヤーの周囲にある環境ごとゲーム化するという発想は、現代のVRコンテンツや4Dアトラクションの先駆け的な要素を含んでいます。また、往年の名作IPを現代の技術で全く異なるジャンルへ再生させる手法は、レトロゲームの再評価という文化的な流れを加速させ、多くのクリエイターに既存のIP活用の可能性を提示しました。
リメイクでの進化
原作である1983年版と比較すると、本作はあらゆる面で劇的な進化を遂げています。2Dドット絵から3Dモデルへの進化はもちろんですが、最も大きな変化は静寂と動動の対比です。原作ではスパイのように静かに忍び寄る感覚が重視されていましたが、本作ではエレベーターの扉が開いた瞬間に爆発的な戦闘が始まるという、ハリウッド映画のようなダイナミックな演出へとシフトしています。しかし、エレベーターを使って階層を移動し、目的の階で任務を遂行するという根本的なルールは守られており、シリーズのファンにとっても納得のいく進化として受け入れられました。
特別な存在である理由
本作が特別な存在である理由は、デジタル技術とアナログな物理機構が極めて高い次元で融合している点にあります。扉が開閉する時の風圧や音、そして閉ざされた空間での緊張感は、どれだけ家庭用ゲーム機の性能が向上しても再現することが不可能です。アーケードゲームが、単なるビデオゲームを超えて1つの体験型アトラクションへと昇華された瞬間を象徴する作品です。プレイヤーが能動的に扉を操作して状況を切り開くというゲームデザインは、作り手とプレイヤーの双方がアーケードという空間を最大限に楽しもうとした情熱の結晶といえます。
まとめ
アーケード版『エレベーターアクション デスパレード』は、名作のタイトルを冠しながらも、全く新しい驚きをプレイヤーに与えた野心作です。エレベーターの扉という日常的なモチーフを、生死を分ける盾や舞台装置として活用したアイデアは、今見ても非常に秀逸です。筐体に乗り込み、扉が閉まる瞬間の高揚感は、他のどのゲームでも得られない独自の魅力に満ちています。設置台数が限られてきている現在、このゲームを実機で体験できる機会は非常に貴重です。タイトーが提示した、五感で感じるシューティングという形は、アーケードゲームが持つ本来の楽しさを私たちに思い出させてくれます。
©2009 TAITO CORPORATION
