アーケード版『クロス・ブレイズ』は、1991年10月にアイレムから稼働されたファンタジー系のベルトスクロールアクションゲームです。この作品は、緻密なドット絵で描かれる重厚な世界観と、単なる力押しではない多彩なアクション要素が特徴的でした。剣士のロイと斧使いのアーノルドという2人のプレイヤーキャラクターから選び、魔族の軍勢に立ち向かいます。当時のアイレムのお家芸ともいえる高いグラフィック表現力により、ステージの背景や敵キャラクターの細部に至るまで、作り込まれたファンタジー世界が展開されました。難易度は高めに設定されており、特にボスの攻略には防御やカウンターといったテクニックの習得が求められる、やりごたえのある作品となっています。
開発背景や技術的な挑戦
当時のアイレムは、横スクロールシューティングゲームなどで既に高い評価を得ていましたが、『クロス・ブレイズ』では新たなジャンルであるベルトスクロールアクションに挑戦しました。このジャンルで差別化を図るため、グラフィック面ではアイレムらしい緻密なドット絵表現を最大限に活かし、特にステージ5の巨大なタコのようなボスの描き込みは、当時の技術的な限界に挑むものでした。アクションシステムにおいても、単調な攻撃の繰り返しではなく、敵の攻撃を受け止めて反撃する「カウンター」や、キャラクターによって異なる攻撃範囲と移動速度、さらにはブロック中にサブ武器で応戦できるといった、戦略性を深める要素が多数盛り込まれました。これにより、プレイヤーは状況に応じた操作が求められ、アクションゲームとしての完成度を高めることにつながりました。
プレイ体験
プレイヤーは剣士のロイまたは斧使いのアーノルドを選び、8方向レバーと攻撃、ジャンプの2つのボタンを駆使してゲームを進めます。キャラクターによって移動スピードや攻撃範囲が大きく異なっており、この選択がプレイフィールに大きな影響を与えます。ロイはバランス型、アーノルドは移動速度が遅い分、攻撃力やリーチに優れるといった個性付けがなされています。本作の核となる要素は、「防御」と「連続攻撃」の使い分けです。ただ敵を殴るだけでなく、敵の攻撃を防御(ブロック)で受け止め、瞬時にカウンターで反撃することで、大ダメージを与えることができます。また、ジャンプ後のレバー入力と攻撃ボタンの組み合わせで、多様な空中攻撃や必殺技を繰り出すことが可能です。特にボス戦では、単純なゴリ押しが通用しない設計となっており、敵の挙動を読み、防御とカウンターを的確に行うことが攻略の鍵となります。倒したボスの上に乗って何度も刺すといった独特のアクションも存在し、ファンタジー世界での白熱した戦闘をプレイヤーに体験させました。
初期の評価と現在の再評価
『クロス・ブレイズ』は、稼働当初からその美麗なグラフィックと、一風変わったアクションシステムで注目を集めました。当時のベルトスクロールアクションのブームの中で、アイレムらしい硬派なゲームデザインと、高い難易度が特徴として挙げられます。特に、後半ステージのボスキャラクター、中でもラスボスの強さはプレイヤーの間で話題となり、攻略の難しさから一部ではハメ技を使わなければ勝利が難しいと評されるほどでした。しかし、その高い壁を乗り越えた時の達成感は大きく、硬派なアクションゲームファンからは熱狂的に支持されました。現在の再評価としては、アイレムが作り上げた「ドット絵の芸術性」が改めて評価されています。細部にまでこだわった敵の造形や背景美術は、今見ても色褪せない魅力を持っており、レトロゲームイベントや移植版を通じて、その高い完成度と独創的なアクション要素が再認識されています。
他ジャンル・文化への影響
『クロス・ブレイズ』が他のジャンルや文化に与えた影響は、主にその「硬派なアクション性」と「グラフィック表現」の2点に集約されます。ベルトスクロールアクションゲームは、一般的に雑魚敵をなぎ倒す爽快感を重視する傾向がありますが、本作は防御とカウンターを重要視したシステムにより、後のアクションゲームにおける「読み合い」や「技術介入」の重要性を提示した作品の一つとなりました。また、緻密なドット絵で描かれたファンタジー世界は、同時代のファンタジー系のゲームや、ドット絵の表現力を追求するクリエイターたちに影響を与えました。アイレムのサウンドクリエイターが手掛けた、強力なハウスアレンジのステージ曲も、当時のゲームミュージックシーンにおいて独特の存在感を放ちました。この作品で培われた表現技術や演出手法は、後のアイレム作品、例えば『アンダーカバーコップス』などの開発にも活かされています。
リメイクでの進化
現時点で、『クロス・ブレイズ』の大規模なリメイク作品は発売されていませんが、レトロゲームの復刻プロジェクトや、過去のアーケード作品を集めたコレクションタイトルを通じて、その魅力を再び体験する機会が提供されることがあります。もし仮にリメイクが制作されるとすれば、当時の緻密なドット絵の雰囲気を活かしつつ、高解像度化されたグラフィックでの再構築が期待されます。また、高い難易度が特徴であったため、現代のプレイヤー向けに難易度調整オプションの追加や、防御とカウンターのシステムをより洗練させた、奥深いアクション性の追求が行われる可能性があります。オンライン協力プレイ機能の搭載も、オリジナルの楽しさを現代の環境で再現する上で重要な要素となるでしょう。オリジナルの持つ「硬派で骨太なアクション」という本質はそのままに、操作性や視覚表現がアップデートされることで、新たなファンを獲得する可能性があります。
特別な存在である理由
『クロス・ブレイズ』が特別な存在である理由は、ベルトスクロールアクションというジャンルにおいて、アイレム独自の技術と哲学が凝縮された作品だからです。単なる敵の掃討に留まらない、防御とカウンターを基軸とした戦略的な戦闘システムは、当時の爽快感を重視した他の作品とは一線を画していました。この硬派なゲームデザインは、一部の熱狂的なアクションゲームファンに深く突き刺さりました。また、当時のアイレムの持つ高いドット絵技術が、ファンタジー世界を重厚かつ美麗に描き出し、アーケードゲームとしての高いクオリティを誇っていました。難易度の高さから全てを体験できたプレイヤーは多くなかったかもしれませんが、その存在感と独特のプレイフィールは、今なお語り継がれる名作の一つとして、アイレムの歴史において重要な位置を占めています。
まとめ
アーケード版『クロス・ブレイズ』は、1991年にアイレムから登場した、美麗なグラフィックと戦略的なアクション要素が融合した、骨太なベルトスクロールアクションゲームです。剣士のロイと斧使いのアーノルドを操作し、防御とカウンターを駆使して強敵に立ち向かうゲーム性は、当時のプレイヤーに高い緊張感と達成感をもたらしました。緻密なドット絵で描かれたファンタジー世界や、難易度の高いボス戦は、今なお多くのゲームファンに記憶されています。本作は、アイレムの技術力が光るだけでなく、アクションゲームの歴史において重要な作品と言えるでしょう。
©1991 IREM
