アーケード版『飛鳥&飛鳥』は、1989年1月にビスコが開発し、タイトーから発売された縦スクロールシューティングゲームです。本作は、当時のアーケードゲームとしては珍しい2人同時プレイに対応しており、2人の巫女をモチーフにした戦闘攻撃機「飛鳥」と「飛鳥」を操作して全4ステージを戦い抜きます。特徴的なパワーアップシステムと、画面外に出た敵弾が消えずに残り続けるという独自の仕様が、プレイヤーに緊張感と戦略性を要求しました。オーソドックスな縦スクロール形式を踏襲しつつも、個性を際立たせたゲームデザインで、一部のシューティングゲームファンから注目を集めた作品です。
開発背景や技術的な挑戦
『飛鳥&飛鳥』が開発された1980年代後半は、アーケードゲーム、特にシューティングゲームが黄金期を迎えていました。開発元のビスコは、競争の激しい市場において、他作品との差別化を図るため、当時まだ珍しかった2人同時協力プレイをゲームの核として採用しました。これにより、プレイヤーは単に敵を撃破するだけでなく、協力してアイテムを分け合ったり、お互いをカバーし合ったりといった新たなプレイ感覚を体験できます。技術的な面では、本作の基板がタイトーの『ラスタンサーガ』の基板を流用しているという情報があり、当時の最新鋭とは言えないスペックの中で、独自のゲーム性を追求した点も特筆されます。また、敵弾が画面外に出ても消えないというシステムは、メモリや処理能力の制約を逆手に取った、あるいは後の弾幕系シューティングに通じる画面全体を意識させる独特な緊張感を生み出す挑戦的な試みであったと言えます。
プレイ体験
本作のプレイ体験を特徴づけるのは、自機「飛鳥」と「飛鳥」の3種類の武器を切り替えながら進める戦略性と、2人同時プレイによる協力の楽しさです。武器は「ショット」「レーザー」「ビーム」があり、それぞれ攻撃範囲や威力が異なるため、ステージの地形や敵の配置に応じて適切な武器を選択する必要があります。パワーアップアイテムを取ることで武器は強化されますが、ミスをするとパワーダウンしてしまうため、慎重な立ち回りが求められます。特に難易度を高めているのが、敵弾が画面外に出ても消えないというシステムです。左右にスクロールしながら敵を避けていると、予想外の場所から敵弾が飛来することがあり、プレイヤーは常に広い視野を持ち、敵弾の軌道を予測しながら操作しなければなりません。全4ステージという短い構成ながらも、この独特なシステムと緻密なレベルデザインにより、非常に濃密でやりごたえのあるプレイ体験を提供しています。
初期の評価と現在の再評価
『飛鳥&飛鳥』は、リリース当時は斬新な2人同時プレイと独特のゲームシステムで話題にはなりましたが、競合する作品が多かったため、大衆的な大ヒットには至りませんでした。一部のプレイヤーからは、その短いステージ数や難易度の高さから、賛否両論の評価を受けました。しかし、現在ではレトロゲーム、特にマイナーながらも個性の強い作品が再評価される中で、本作の立ち位置が見直されています。特に「敵弾が画面外に出ても消えない」というシステムは、後のシューティングゲームの多様な弾幕表現の萌芽を感じさせる先駆的なアイデアとして、高く評価されています。また、2人で協力してハイスコアを目指す楽しさは、現代のプレイヤーにとっても新鮮であり、ゲーム史における独自性の高い作品として、熱心なファンによって語り継がれています。
他ジャンル・文化への影響
『飛鳥&飛鳥』は、直接的に大きなムーブメントを巻き起こすような影響を他ジャンルに与えたとは言い難いですが、その革新的な要素はゲームデザインの一つの可能性を示しました。特に、敵弾が消えないという仕様は、画面全体の弾幕をコントロールする、後の弾幕系シューティングゲームの思想の一端を垣間見ることができます。また、2人の巫女をモチーフにした自機デザインは、当時のアニメや漫画などの文化的なトレンドを反映したものであり、ゲームの世界観を広げる一助となりました。文化的には、本作が収められたプレイステーション2の『タイトーメモリーズII 上巻』を通じて、後に生まれた世代のプレイヤーにもその存在が知られることとなり、レトロゲーム文化の多様性を象徴するタイトルとして、語り継がれています。
リメイクでの進化
アーケード版『飛鳥&飛鳥』は、完全な単独作品としてのリメイクは実現していません。しかし、もし現代の技術でリメイクされるとするならば、当時の独特なゲーム性を維持しつつ、グラフィックやサウンドの完全なリマスターが行われるでしょう。特に2人同時プレイは、オンライン協力プレイに対応することで、世界中のプレイヤーとの共闘が可能となり、ゲームの楽しさがさらに増すと考えられます。また、オリジナルの敵弾が消えないという仕様は、現代のプレイヤーに合わせて難易度選択の幅を広げたり、敵弾の軌道を表示するアシスト機能などを追加することで、より多くのプレイヤーに受け入れられるように進化するでしょう。現代の技術は、当時の開発者が追求したかったであろう、よりスムーズで迫力のあるゲーム体験を実現可能にします。
特別な存在である理由
『飛鳥&飛鳥』が特別な存在である理由は、その時代の潮流の中で、独自のアイデアを強く押し出した先駆的なゲームであるからです。2人同時プレイの協力と競争、3種類の武器を使い分ける戦略、そして何よりも「敵弾が画面外に出ても消えない」という、一見すると不親切にも見える、しかし極めて挑戦的で緊張感のあるシステムは、本作を唯一無二のものにしています。このユニークなゲームデザインは、他の多くのシューティングゲームとは一線を画すものであり、プレイヤーに試行錯誤と高度な判断力を要求します。この尖った個性こそが、本作を単なる過去の作品ではなく、今なお熱心なファンに愛され、記憶され続ける特別な存在として位置づけているのです。
まとめ
アーケード版『飛鳥&飛鳥』は、1989年にビスコが開発、タイトーから発売された縦スクロールシューティングゲームです。2人同時プレイと、画面外の敵弾が消えないという独自性が最大の魅力であり、戦略的かつ緊張感のあるプレイ体験を提供しました。当時は他の名作に埋もれがちでしたが、そのユニークなゲームデザインは現在でも再評価の対象となっており、ゲーム史における挑戦的な作品の一つとして確固たる地位を築いています。協力プレイの楽しさと、システムへの深い理解が求められる奥深さを兼ね備えた、シューティングゲームファンにとって価値ある作品です。
©1989 ビスコ / タイトー