アーケード版『ブレイウッド』は、1986年11月下旬にメーカーのデータイーストから発表された、2D迷路探索型アクションシューティングゲームです。この作品は、海外で先行してヒットしていた『ガントレット』の流れを汲むゲームデザインを取り入れており、プレイヤーは死の監獄「ブレイウッド」からの脱出を目指します。斜め上からの見下ろし視点と、捕虜を救出して共に戦い、その捕虜の持つ特殊な武器(ショットタイプ)を切り替えて使用できるというシステムが最大の特徴となっており、後のアクションゲームに影響を与えた側面も持っています。
開発背景や技術的な挑戦
『ブレイウッド』が開発された1986年は、アーケードゲーム市場において、多人数同時プレイや、広大なマップを探索する要素を持つゲームが注目を集めていた時期でした。本作は、そのトレンドに応える形で、データイーストが迷路探索型アクションというジャンルに挑戦した意欲作と言えます。特に、大量の敵キャラクターを同時に画面上に表示し、プレイヤーが四方八方から攻められる緊張感のある状況を表現するための技術的な調整が施されています。また、様々な能力を持つ捕虜システムを導入することで、単なるシューティングゲームではなく、戦略的に武器を切り替える楽しみをプレイヤーに提供することに成功しました。これは、当時の技術的な制約の中で、単調になりがちな迷路探索に深みを与えるための挑戦であったと考えられます。
プレイ体験
プレイヤーは、迷路状の監獄を探索し、敵を倒しながら出口を探します。基本の武器であるダガーのほかに、ステージのどこかに捕らえられている捕虜を救出することで、彼らが持つ特殊なショットを使用できるようになります。このショットは、一度救出すれば体力や残機がある限り、いつでも切り替えが可能です。例えば、貫通する炎の玉や、広範囲に広がるショットなどがあり、敵の特性や迷路の形状に応じて武器を使い分ける戦略的な判断が求められます。しかし、体力は時間とともに減少し続けるため、マップ上に存在する食料アイテムを常に探し求めなければなりません。この緊張感のある探索と、捕虜を救出することで戦闘能力が拡張される点が、プレイヤーに独特の達成感をもたらしました。全100フロアというボリュームも、当時のアーケードゲームとしては非常に挑戦的なものでした。
初期の評価と現在の再評価
『ブレイウッド』は、リリース当時、先行する人気作品と比較されることもありましたが、独自の捕虜システムと、それによる戦略性の高さが評価されました。特に、特殊なショットによる爽快感や、難易度の高さが、当時のコアなアクションゲームファンに受け入れられました。現在の再評価においては、純粋なアクションシューティングとしての面白さに加え、捕虜を救出して武器を切り替えるというシステムが、後のチームアクションゲームやキャラクター切り替え要素を持つゲームに与えた影響という観点から注目されています。また、難易度の高さから、クリアを目指す挑戦しがいのあるレトロゲームとして、タイムアタックややり込みプレイの対象となることもあります。
他ジャンル・文化への影響
『ブレイウッド』の最大の功績は、「捕虜を救出し、その能力を活かす」というゲームシステムにあります。この「仲間を助けて戦う」というコンセプトは、データイーストの後の作品、特に『ゲイングランド』などのアクションゲームに影響を与えたと考えられています。また、見下ろし型のアクションゲームという形式自体が、後の多くの作品の雛形の一つとなりました。ゲーム外の文化においては、前述の隠された裏口の存在が、ゲームの歴史におけるミステリーの一つとして、レトロゲームファンや動画配信者などの間で度々取り上げられ、ゲームコミュニティに独自の話題を提供し続けています。
リメイクでの進化
残念ながら、アーケード版『ブレイウッド』の直接的なリメイク作品は、現在までに公式にはリリースされていません。しかし、本作が持つ「特殊能力を持つ仲間を救出し、それを活用する」という要素や、広大な迷路を探索するデザインは、様々な後続作品に形を変えて継承されています。もし現代の技術でリメイクされるとすれば、オリジナル版の緊張感のある探索と戦略的な武器切り替えという核となる要素はそのままに、協力プレイの強化や、捕虜の個性を際立たせるストーリー要素などが追加されることで、より進化を遂げることが期待されます。
特別な存在である理由
『ブレイウッド』が特別な存在である理由は、そのゲーム性が革新的なアイデアと当時の技術的な挑戦の結果であるからです。単に人気作のフォロワーに留まらず、「捕虜」という要素を戦闘能力の拡張に結びつけることで、オリジナリティを確立しました。また、海外版に存在する「開発者の裏口」という思わぬ隠し要素が、時間を超えて多くのプレイヤーに話題を提供し続けていることも、本作を単なるレトロゲーム以上の特別な存在にしています。全100フロアの圧倒的なボリュームと、食料の概念による常に緊張感のあるゲームプレイも、この作品が今なお語り継がれる要因です。
まとめ
アーケード版『ブレイウッド』は、1986年にデータイーストが世に送り出した、迷路探索と戦略的なアクションが融合した意欲的な作品です。体力減少の概念がプレイヤーを常に急き立てる緊張感、そして捕虜を救出することで得られる多彩なショットを切り替える戦略性の高さが、本作の魅力の中核を成しています。特に、「捕虜システムの採用」というアイデアは、後続のゲームに影響を与え、本作をアクションゲームの歴史の一角を担う存在にしています。当時の技術的な挑戦の成果と、時代を超えて話題を提供する隠された要素が、このゲームの価値をさらに高めています。
©1986 データイースト