アーケード版『バーチャファイター4』は、2001年8月にSEGA-AM2が開発し、セガがNAOMI2基板を用いて稼働開始した3D対戦格闘ゲームです。シリーズ第4作にあたる本作では、高精細ポリゴン(キャラクター約12,000ポリゴン、背景約50,000ポリゴン)や豊富なテクスチャ、VF.NETというネットワーク機能を備え、アーケードにおける技術的革新と競技性の向上を実現しました。VF.NETはプレイヤーの戦績や段位、カスタマイズ情報をICカードに保存でき、継続的なプレイを促す画期的な仕組みでした。
開発背景や技術的な挑戦
開発は『バーチャファイター』シリーズの生みの親である鈴木裕を中心としたSEGA-AM2が担当しました。NAOMI2基板の性能を最大限に活用し、当時のアーケード格闘ゲームとしては破格のポリゴン数と描画精度を実現しています。キャラクターは従来作よりも大幅に精細化され、布や髪の動き、表情変化など細部まで作り込まれました。また、VF.NETを用いたオンラインデータ管理は、プレイヤーの勝率や段位を全国規模で追跡できる仕組みとして大きな話題を呼び、アーケードにおけるネットワーク機能の本格導入を促す先駆けとなりました。
プレイ体験
前作で導入された高低差ステージや専用エスケープボタンは廃止され、よりシンプルで直感的な8方向移動システムが採用されました。これにより対戦時の読み合いが明確化し、戦術性が高まりました。また、新システムとして「さばき(Sabaki)」が導入され、相手の特定攻撃を受け流しつつ反撃に移る高度な駆け引きが可能になりました。
新たなプレイアブルキャラクターとして、総合格闘技をベースにしたヴァネッサ・ルイスと、少林拳を操るレイ・フェイが加わりました。ヴァネッサはディフェンシブスタイルとオフェンシブスタイルを戦況に応じて切り替える独特の操作性を持ち、レイ・フェイは変幻自在な連続技でプレイヤーを魅了しました。一方で、前作のタカアラシは本作では登場せず、シリーズファンに惜しまれました。
ステージ構成はフラットな地形が中心となり、壁の有無や形状が戦略の鍵となりました。高い壁、低い壁、破壊可能な壁、そして完全に開放されたステージなどが存在し、それぞれ異なる間合いやコンボ展開を生み出しました。さらに、トレーニングモードも充実しており、コマンド練習、自由練習、状況別課題といった多段階の練習メニューが用意され、初心者から上級者まで幅広いプレイヤーがスキルを磨くことができました。
初期の評価と現在の再評価
稼働直後から本作は大きな反響を呼び、日本国内のアーケードランキングでもトップに位置するなど高い稼働率を記録しました。グラフィック面では「当時もっとも美しい格闘ゲーム」と評され、キャラクターモデルの精密さや背景の作り込みは多くのプレイヤーと業界関係者に衝撃を与えました。ゲーム性においても、初心者が遊びやすく、かつ上級者同士の高度な読み合いが成立するバランス調整が高く評価されました。現在では、ネットワーク機能を格闘ゲームに導入した先駆的存在として歴史的価値が再評価され、シリーズの中でも特に重要な一作と見なされています。
他ジャンル・文化への影響
本作の最大の功績のひとつは、アーケードにおけるネットワーク利用の定着化です。VF.NETによるデータ管理システムは、その後のe-AmusementやNESiCAxLive、ALL.Netなど他社のオンラインシステムの設計に強い影響を与えました。さらに、段位制度やランキング機能の普及により、アーケード格闘ゲームが単なる娯楽から競技文化へと進化するきっかけを作りました。こうした要素は、eスポーツの萌芽とも言えるコミュニティ形成にも貢献しました。
リメイクでの進化
この記事はアーケード版に限定しているため、後に登場した「バーチャファイター4 Evolution」や「Final Tuned」、家庭用移植版の改良点については割愛します。ただし、これらの後継作も基本的なゲームエンジンやシステムは本作を基盤としており、オリジナル版の完成度の高さがそのまま活かされました。
特別な存在である理由
『バーチャファイター4』(アーケード版)は、グラフィック・ゲームシステム・ネットワーク機能の三位一体によって格闘ゲームの新たな基準を打ち立てた作品です。従来のファンはもちろん、新規プレイヤーをも引き込み、長期間にわたって稼働し続けるだけの魅力と競技性を備えていました。その存在は単なるシリーズの一作にとどまらず、アーケードゲーム全体の進化を象徴するタイトルとなりました。
まとめ
2001年8月に登場したアーケード版『バーチャファイター4』は、NAOMI2基板を駆使した当時最高水準の描画表現と、VF.NETによる革新的なネットワーク機能で、アーケード格闘ゲームの未来を切り開きました。システム面の刷新、競技性の強化、長期的なやり込み要素の追加など、多方面での進化は、後のゲーム文化やeスポーツの基盤にも影響を与えました。今なお格闘ゲーム史の重要な転換点として語り継がれる本作は、プレイヤーにとって特別な記憶と体験を残した傑作です。
©2001 SEGA-AM2/SEGA