アーケード版『1942』米軍機P-38で戦う縦スクロールシューティングの金字塔

1942

アーケード版『1942』は、1984年11月にカプコンが開発・発売した縦スクロールシューティングゲームで、同社初の大ヒット作です。開発責任者は岡本吉起氏で、大日本帝国ではなくアメリカのP-38戦闘機「スーパーエース」を操るという、海外市場を強く意識した設計が特徴です。

開発背景や技術的な挑戦

カプコンにとって、当時はまだ設立間もない時期で、新たなヒット作を求めていました。開発中、最初に手がけた宇宙戦ゲームが不評でボツとなったことから、チームは一転して第二次世界大戦をテーマに変更し、映画「ゼロ」の影響を受けて米国視点を取り入れた内容へと舵を切りました。この大胆な選択が功を奏し、開発期間はわずか2カ月余りで完成しました。

プレイ体験

プレイヤーは「スーパーエース」と呼ばれるP-38を操り、画面上部からせり上がる敵機を撃ち落としながら進みます。特徴的な「ループ」操作により短時間無敵になり、窮地を脱することが可能です。また、パワーアップアイテム(POW)を取得すると、4連装銃や自機を援護する子機などが得られ、戦線を有利に進められます。

初期の評価と現在の再評価

1985年1月には、日本国内で初期人気3位〜4位を記録し、1986年には日本のテーブル型アーケードゲームで5位、アメリカではコンバージョンキットの上位5位に入るなど、非常に高い商業的成功を納めました。その後、シューティングゲーム史やカプコンの歴史において進化の原点と見なされ、「金字塔」として再評価されています。

他ジャンル・文化への影響

『1942』の成功は、以降の垂直スクロールシューティング(縦シュー)の定番テンプレートを確立し、後続作「1943」や「19XX」シリーズへとつながります。また、カプコン自体が本作を契機に開発体制を拡充し、『ファイナルファイト』『ストリートファイターII』など、後の大ヒットに続く土台となりました。

リメイクでの進化

本作は『カプコン クラシックス コレクション』(Xbox/PS2)、PlayStation PortableおよびWiiのバーチャルコンソールなどに収録されており、現代にも手軽にプレイ可能です。さらに、2008年には高解像度グラフィック化された『1942: Joint Strike』も配信され、オンライン協力プレイや武器の追加など、新要素が加わりました。

特別な存在である理由

『1942』は、カプコンの最初の国際的ヒット作であるだけでなく、シューティングジャンルの進化に寄与した代表作です。日本のゲーム開発者が「敵国」を操るガジェットを描くという大胆な発想も革新的でした。それだけでなく、短期間で完成させた開発体制や市場志向のデザイン判断も、後のカプコンの成功を支える重要な要素となりました。

まとめ

アーケード版『1942』は、1984年11月に登場した縦スクロールシューティングの金字塔であり、カプコンの国際舞台への足がかりとなりました。ループ回避やPOWといった操作性の工夫、そして米国市場への配慮が独創性を引き立てています。以後の縦シューのみならず、カプコンの発展にも深く関わる存在として、今なお色あせない魅力を放っています。

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