アーケード版『ライオットシティ』は、1991年にセガから発売されたベルトスクロールアクションゲームです。開発は『ワンダーボーイ』シリーズなどで高い技術力を示してきたウエストンが担当しました。本作は、麻薬組織に誘拐された恋人を救い出すため、刑事のポールとボビーが犯罪都市「ライオットシティ」を舞台に拳一つで立ち向かう、王道の格闘アクションです。セガのシステムボード「SYSTEM 16B」を採用しており、ウエストン作品らしい丁寧なドットワークと、非常に軽快でレスポンスの良い操作性が特徴です。80年代末から90年代初頭にかけてのベルトスクロール黄金期において、職人気質な作り込みが光る一作です。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発における最大の挑戦は、当時のアーケード市場を席巻していたベルトスクロールアクションという成熟したジャンルにおいて、いかに「ウエストン独自の完成度」を提示するかという点にありました。技術面では、SYSTEM 16Bの性能を限界まで引き出し、多数の敵キャラクターが画面内に登場しても処理落ちを感じさせない、スピーディーなアクションの実現に力が注がれました。特に、プレイヤーキャラクターの攻撃モーションと敵ののけぞり判定のタイミングをミリ秒単位で調整することで、攻撃が当たった際の手応え、いわゆる「ヒットストップ感」を極限まで追求しました。また、背景グラフィックにおいても、猥雑な路地裏や煌びやかなカジノなど、犯罪都市の空気感を多重スクロールと緻密なドット絵で描き出し、プレイヤーを物語の世界へ引き込む視覚的工夫が凝らされています。
プレイ体験
プレイヤーは、バランス型のポール、またはパワー型のボビーを選択し、全5ステージを戦い抜きます。操作はレバーと、パンチ・ジャンプの2ボタンを基本とし、ボタン同時押しによる周囲への緊急回避攻撃など、ベルトスクロールアクションのスタンダードな体系を採用しています。本作のプレイ体験を支えているのは、その「圧倒的なテンポの良さ」です。敵を倒した際の爽快な効果音と、次々と現れる敵をリズミカルに捌いていく感覚は、アクションゲームとしての純粋な楽しさに満ちています。各ステージの最後には個性的で強力なボスが待ち構えており、敵の動きを見極めて隙を突く、アーケードゲームらしい攻略の醍醐味が味わえます。2人同時プレイでは、お互いの背中を守りながら進む連携プレイが楽しく、協力してコンボを叩き込む高揚感を提供しています。
初期の評価と現在の再評価
発売当初は、そのオーソドックスながらも極めて高い完成度から、アクションゲームを好むアーケードプレイヤーの間で手堅い支持を得ました。派手な新システムこそないものの、動かしているだけで楽しいと感じさせるレスポンスの良さが評価の柱となりました。現在では、90年代初頭のベルトスクロールアクションというジャンルが最も脂に乗っていた時期の「教科書的な傑作」として再評価されています。ウエストンが手掛けた数少ない硬派な格闘アクションとしての希少性もあり、レトロゲームファンの間ではその職人技とも言える丁寧な調整が高く評価されています。時代に左右されない普遍的な「殴って進む」楽しさが、純粋な形でパッケージングされた稀有なタイトルです。
他ジャンル・文化への影響
『ライオットシティ』が提示した「極限まで磨き上げられた基本アクション」という姿勢は、その後の多くのアクションゲーム開発における「手触りの重要性」を再認識させる一助となりました。本作で見られた、背景とキャラクターのコントラストによる視認性の確保や、敵の登場タイミングの制御技術は、後の多くのベルトスクロール作品の模範となりました。文化的には、ウエストンというメーカーがファンタジーだけでなく、現代劇の格闘アクションにおいても超一流の技術を持っていることを証明し、開発会社のブランドイメージをより多層的なものにしました。本作の熱いBGMも高く評価されており、当時のゲームミュージックシーンにおいても、アクションを盛り上げる良曲揃いの作品として記憶されています。
リメイクでの進化
本作は、長らく家庭用への移植が行われなかった「知る人ぞ知るアーケードの逸品」でしたが、近年ではセガのアーケードタイトル保存プロジェクトや、ウエストン作品を網羅する復刻シリーズを通じて、ついに現行機でのプレイが可能になりました。復刻版では、SYSTEM 16Bオリジナルの鮮やかなドットグラフィックをHD環境で忠実に再現。さらに、最新のコントローラーでも当時のキレのあるアクションを楽しめるよう入力遅延を極限まで抑えた調整が施されています。どこでもセーブ機能やオンラインランキングの導入により、当時の高い難易度を段階的に克服し、世界中のプレイヤーとスコアを競い合えるよう進化を遂げています。オリジナルの良さを最大限に活かした「現役のアクションゲーム」として蘇っています。
特別な存在である理由
本作が特別な存在である理由は、ベルトスクロールアクションというジャンルに対するウエストンの「誠実な回答」が詰まっているからです。奇をてらったシステムに頼ることなく、パンチ一つ、投げ一つの感覚を徹底的に磨き上げる。その愚直なまでの完成度への追求こそが、本作を特別な名作たらしめています。SYSTEM 16Bが描いた、どこか懐かしくも熱い犯罪都市の情景と、そこを拳一つで突き進む主人公たちの姿。それらは、ビデオゲームが最も純粋な「操作の喜び」を提供していた時代の精神を体現しています。技術と情熱が調和した本作は、アクションゲームの本質を今に伝える、不屈の輝きを放つ一作です。
まとめ
アーケード版『ライオットシティ』は、ベルトスクロールアクションの極致を追求したウエストンとセガの共作による傑作です。SYSTEM 16Bが紡ぎ出した重厚な世界観と、指先に直結するような抜群の操作性は、今遊んでもアクションゲームが持つ根源的な楽しさを再認識させてくれます。悪を討ち、大切な人を取り戻すために突き進むその旅路は、ビデオゲームが持つ「挑戦とカタルシス」を最も純粋な形で体現しています。時代を超えて愛されるべきその遊び応えは、かつてのゲームセンターで汗を流したすべての人々にとって、そしてこれから格闘アクションの深淵に触れる人々にとっても、決して色褪せることのない至高の体験となるでしょう。
©1991 SEGA / Westone