アーケードゲーム版『サイキック5』は、1987年にジャレコからリリースされた迷路探索型のアクションゲームです。開発はNMKが担当しています。プレイヤーは超能力を持つエスパー団の5人のメンバーを操作し、悪魔の住み着いた家を探検して大魔王サタンを倒すのが目的です。各キャラクターにはジャンプ力や移動速度、パワーといった異なる個性があり、ステージ中に設置されている公衆電話を利用してキャラクターを切り替えながら進めるという戦略的な要素が特徴的でした。可愛らしいドット絵のグラフィックと、一見コミカルながらも探索とアクションのバランスが取れたゲームデザインで、当時のゲーマーから高い評価を得た作品です。
開発背景や技術的な挑戦
『サイキック5』は、1987年当時のアーケード市場において、ジャレコの作品としてNMKが開発を手掛けたことでも知られています。NMKは後に多くのアーケードゲームを生み出す開発会社ですが、本作においても彼らの持つ技術力と独創性が発揮されています。本作は、キャラクターの切り替えシステムという、当時のアクションゲームとしては斬新なアイデアを取り入れました。これにより、単なるプラットフォームアクションに留まらない、パズル的な思考や戦略性をプレイヤーに要求するレベルデザインを実現しています。また、個性豊かなエスパー団のドット絵や、コミカルな敵キャラクターなど、視覚的な魅力も高い完成度を誇っていました。基板の性能を活かし、広大でギミックに富んだステージをスムーズにスクロールさせる技術も、当時のゲーマーを魅了した要因の1つです。
プレイ体験
プレイヤーはエスパー団の5人の超能力者、アキラ、ブンタ、マコト、サトミ、そしてお爺さんのゲタを使い分けながら、迷路のような広大なステージを探索します。主なアクションはジャンプとハンマーによる攻撃で、特にジャンプは超能力者の設定に合わせて非常に高く、浮遊感のある操作性が特徴です。このジャンプ力を活かして、高い足場に飛び移ったり、敵の攻撃を避けたりする爽快感は本作の大きな魅力です。ハンマー攻撃は敵を気絶させるだけで倒すことはできませんが、鉄扉を破壊したり、ステージに点在する壺などのオブジェクトを壊してアイテムを入手したりするために不可欠な行動です。キャラクターごとにジャンプ力やパワーが設定されているため、鉄扉が多い場所ではパワーのあるキャラクター、高低差の激しい場所ではジャンプ力の高いキャラクターへと、状況に応じて公衆電話で仲間と交代する判断力が重要となります。時間制限が存在するため、効率的にステージを探索し、捕らわれた仲間を救出しながら先に進むという緊張感もプレイヤーの集中力を高めます。
初期の評価と現在の再評価
『サイキック5』は、リリース当時、その完成度の高さからゲーマーの間で隠れた名作として評価されました。特に、キャラクターの個性を活かした攻略要素や、理不尽さを感じさせない絶妙な難易度調整が支持されました。ジャレコの作品としてはトップクラスのトータルバランスの良さを持つアクションゲームとして、上級者だけでなく初心者もそれぞれの腕前に応じた楽しみ方ができる点が特徴です。現在では、レトロゲームの再評価の流れの中で、本作の独創的なシステムと洗練されたゲームデザインが改めて注目を集めています。長年にわたり愛され続けるジャレコのアクションゲームの中でも、特に完成度の高い作品として、多くのレトロゲームファンに語り継がれています。
他ジャンル・文化への影響
『サイキック5』の複数のキャラクターを使い分けながらステージを探索・攻略するというゲームデザインは、後のアクションゲームや探索型ゲームに対して間接的な影響を与えたと考えられます。特に、キャラクターの持つ固有の能力がステージ攻略の鍵となるアイデアは、チームワークや戦略性を重視するゲームの先駆けの1つと言えるでしょう。また、そのコミカルでキュートなキャラクターデザインは、ジャレコのゲームの中でも特に記憶に残るものとして、後にリメイク版が制作される際の礎となりました。レトロゲーム文化の文脈においては、本作はジャレコの名作、NMKの初期傑作として位置づけられ、ゲーム史を語る上で欠かせないタイトルの1つとして文化的な影響を与え続けています。
リメイクでの進化
アーケード版『サイキック5』は、発売から長い時を経て、2023年にNintendo Switch向けに『サイキック5 エターナル』としてリメイクされました。このリメイク版では、アーケード版のゲームシステムを忠実に再現しつつ、現代のプレイヤー向けに様々な新機能や進化が加えられています。具体的には、グラフィックとBGMをオリジナルのアーケード版スタイルと、新たにリファインされたリメイク版スタイルでワンボタンで瞬時に切り替えられる機能が搭載されました。また、原作のアフターストーリーを描いた新ステージや、新たな超能力者である第2エスパー団が追加されています。さらに、サバイバルモードやタイムアタックモード、2人対戦可能なタワーリングモードなど、遊びの幅を広げる複数の新ゲームモードも追加され、オリジナルの魅力を継承しつつ、新鮮なプレイ体験を提供しています。
特別な存在である理由
『サイキック5』が特別な存在である理由は、その完成度の高いゲームデザインと、時代を先取りしたキャラクター切り替えシステムにあります。単なる反射神経だけでなく、どのキャラクターをどこで使うかという戦略的な思考をプレイヤーに要求する奥深さがあり、それが長年にわたって色褪せない魅力を保っています。また、ジャレコとNMKという当時の開発体制が生み出した独特のユーモラスな世界観と、心地よい操作感を持つアクションは、多くのプレイヤーの記憶に深く刻み込まれています。目立つ宣伝は少なかったものの、口コミや実際に遊んだプレイヤーの評価によって隠れた名作としての地位を確立し、現在に至るまで再評価され続けている点が、本作を特別なタイトルたらしめているのです。
まとめ
アーケードゲーム『サイキック5』は、1987年に登場した迷路探索型アクションの金字塔です。プレイヤーは個性豊かな5人の超能力者エスパー団を使い分け、高いジャンプ力とハンマーを駆使して悪魔の住む広大な屋敷を攻略していきます。キャラクターチェンジによる戦略性の高さと、高い完成度を誇るレベルデザインは、当時のゲーマーから隠れた名作として愛されました。時代を経てもその魅力は衰えず、後にリメイク版も制作されるなど、今なお多くのファンに支持されています。そのゲーム性は、後の探索型アクションゲームにも影響を与えたと言えるでしょう。コミカルでありながら奥深い本作は、レトロゲーム史において特別な輝きを放ち続ける1本です。
©1987 JALECO