アーケード版『グルーヴオンファイト 豪血寺一族3』は、1997年5月にアトラスから発売された対戦格闘ゲームです。豪血寺一族シリーズの4作目にあたり、開発はアトラス大阪開発室が担当しました。本作は、それまでのシリーズ作品から大きく作風を変化させ、キャラクターデザインを一新しています。特に、イラストレーターの村田蓮爾氏を起用したことで、グラフィック面で際立った個性を持ち、それまでのコミカルな雰囲気から一転して、クールでスタイリッシュな世界観を構築しました。最大の特徴は、当時流行の兆しを見せていたタッグバトルシステムを採用した点であり、シリーズファンだけでなく新たな層のプレイヤーを取り込むことを目指した意欲作です。
開発背景や技術的な挑戦
本作の開発背景には、対戦格闘ゲーム市場が成熟期を迎え、多様なシステムや世界観が求められていた当時の状況があります。アトラスは、自社の人気シリーズである豪血寺一族の刷新と進化を目指し、大きな方向転換を図りました。技術的な挑戦としては、アーケード基板であるST-V(SEGA TITAN VIDEO GAME SYSTEM)を採用し、当時の水準として高いクオリティの2Dグラフィックを実現したことが挙げられます。特に、村田蓮爾氏の描く繊細で現代的なキャラクターデザインを、ドット絵として忠実に再現するための技術的な工夫が凝らされました。また、複雑なキャラクターアニメーションや、タッグバトルにおける2体同時のスムーズな挙動、豊富な必殺技エフェクトなども、当時の格闘ゲームとしては高度な処理能力を要するものでした。操作系においても、初心者でも比較的簡単に入力できるコマンドを採用しつつも、上級者向けの奥深いシステムを両立させるというバランス調整に力が注がれました。
プレイ体験
『グルーヴオンファイト』のプレイ体験は、従来の豪血寺一族シリーズとは一線を画しています。最も印象的なのは、2人1組のタッグバトル形式です。プレイヤーは任意のタイミングでパートナーと交代したり、瀕死の際にパートナーが援護攻撃をしたりといった戦略的な駆け引きを楽しむことができます。これにより、単なるキャラクター性能だけでなく、タッグの組み合わせや交代のタイミングが勝敗を分ける重要な要素となりました。操作感覚は比較的軽快で、上段攻撃をかわしながら攻撃できる回り込み攻撃や、特定の行動に対する迎撃防御など、攻防一体のシステムが導入されています。回り込み攻撃は、対戦のアクセントとなり、読み合いを深める要素となりました。キャラクターの技も個性的で、デザインに合わせたスタイリッシュなものから、シリーズ伝統の変身やコミカルな技まで幅広く、視覚的な楽しさも提供しています。総じて、スピード感と戦略性のバランスが取れた、新しい格闘ゲーム体験を提供しました。
初期の評価と現在の再評価
本作は発売当時、グラフィックの刷新とタッグバトルシステムという意欲的な変更点から、メディアやプレイヤーからは一定の注目を集めました。特に、村田蓮爾氏によるアートワークは非常に高く評価され、ビジュアル面での斬新さは多くの支持を得ました。しかし、ゲームシステムが複雑化したことや、当時の人気タイトルとの競合もあり、爆発的なヒットには至らず、トーナメントシーンではマイナーな存在にとどまりました。現在の再評価としては、発売から時が経つにつれて、本作のタッグバトルシステムの完成度や、個性豊かなキャラクターデザイン、そして独自のゲーム性が再認識されています。特に、その後の格闘ゲームに影響を与えたタッグシステムの先駆的な試みとして、コアなプレイヤーからの評価は高まっています。また、独特のムードを持つ世界観が、カルト的な人気を博し、中古市場においても希少性が認められるタイトルの一つとなっています。
他ジャンル・文化への影響
『グルーヴオンファイト』が他ジャンルや文化へ与えた影響は、主にそのビジュアル面とシステム面の2点に集約されます。ビジュアル面では、イラストレーターの村田蓮爾氏がキャラクターデザインを担当したことで、氏のファン層を通じてゲーム業界外にもその存在を知らしめました。氏の洗練されたデザインは、その後のキャラクターデザインやイラストレーションのトレンドに間接的な影響を与えたと言えるでしょう。システム面では、当時の格闘ゲームとしては珍しい本格的なタッグバトルシステムを採用しており、これが後に登場する多くのタッグ制格闘ゲームの雛形の一つとなった可能性を指摘する声があります。キャラクターを2人選んで交代しつつ戦うという形式は、プレイヤーに新たな戦略性と駆け引きを提供し、格闘ゲームの可能性を広げました。また、シリーズ全体が持つ独特のユーモアとシリアスの融合も、後のゲームやポップカルチャーにおける表現の多様性に寄与したと考えられます。
リメイクでの進化
『グルーヴオンファイト』自体は、アーケード版稼働後にセガサターンに移植されたのみで、直接的なリメイク版は存在していません。しかし、豪血寺一族シリーズは本作以降も続編が制作されており、そこで本作の要素が継承・進化しています。例えば、本作で採用されたタッグバトルシステムは、後のシリーズ作品にも影響を与え、新たなシステムへと発展していきました。また、本作で登場した一部のキャラクターは、シリーズの続編にもゲスト出演したり、設定が引き継がれたりしています。これは、本作で確立された新しい世界観やキャラクターが、シリーズ全体にとって重要な要素となったことを示しています。もし仮にリメイクが制作されるとしたら、最新のグラフィック技術で村田蓮爾氏のデザインを再現し、オンライン対戦機能の追加や、タッグシステムのさらなる洗練が期待されるところです。
特別な存在である理由
本作が多くのプレイヤーにとって特別な存在である理由は、その大胆な変貌と芸術性の高さにあります。従来のシリーズのコミカルな作風から、一気にスタイリッシュで洗練されたビジュアルへと変化したことは、当時のプレイヤーに大きな衝撃を与えました。村田蓮爾氏という著名なイラストレーターの起用は、ゲームデザインにおけるアートディレクションの重要性を再認識させ、格闘ゲームの新たな可能性を示しました。また、タッグバトルシステムは、対戦格闘ゲームの競技性を高める一方で、カジュアルなプレイヤーにも戦略の幅を提供し、独自のポジションを確立しました。このゲームが持つ「挑戦的でありながらも、確かなゲーム性を備えていた」という点が、年月を経てもなお、コアなファンに愛され続ける理由であり、アトラスの格闘ゲームに対する情熱を象徴する作品となっています。
まとめ
アーケード版『グルーヴオンファイト 豪血寺一族3』は、1997年にアトラスからリリースされた、シリーズの転換点となった対戦格闘ゲームです。イラストレーター村田蓮爾氏による斬新なキャラクターデザインと、当時のトレンドを取り入れたタッグバトルシステムが大きな特徴です。発売当時は、その特異なシステムとビジュアルで話題を呼びましたが、時を経て、その先駆的なシステムと芸術性の高さから、現在ではカルト的な人気を誇る作品として再評価されています。豪血寺一族の歴史の中で、異彩を放つ作品であり、格闘ゲームの多様性を示す上で欠かせないタイトルです。本作の存在は、クリエイターの自由な発想がゲームに与える影響の大きさを物語っています。
©1997 ATLUS