AC版『コラムス』テトリスと並んだ落ちものパズルの挑戦

アーケード版『コラムス』は、1990年3月にセガがアーケード向けに稼働開始した落ちものパズルゲームです。オリジナルは1989年にJay GeertsenがHP-UX向けに開発し、その後Apple MacintoshやMS-DOS等に移植された後、セガが権利を取得してアーケード版を発売しました。ジャンルはマッチスリーパズルで、特徴としては縦・横・斜めで同色の3つ以上の宝石を揃えて消すという基本ルール、さらにMagic Jewel(マジックジュエル)の特殊効果などがあります。アーケード以外の対応プラットフォームとして、メガドライブ、マスターシステム、ゲームギア、PCエンジン、MSX2、X68000、スーパーファミコン、ゲームボーイカラー、Windows等があります。各移植版では画面構成・操作感・音楽などがアーケードと少しずつ異なっています。アーケード基板はセガのSystem Cを使用しています。

開発背景や技術的な挑戦

『コラムス』の元々の開発者はJay Geertsenで、HP-UX上でX Window Systemを使って学習や趣味のために開発したことが始まりです。その後MacintoshやMS-DOSへの移植がなされ、それがセガの目に留まり、商用化の権利を取得してアーケード化されました。技術的には、アーケード版では制限されたハードウェア資源の中で視認性・操作性を確保することが求められました。例えば落下速度の調整や宝石の色・形のデザイン、斜め消去の判定や連鎖の動きなど、家庭用への移植版でも忠実に再現しつつ、ハンドヘルド機器などでは音楽や画面サイズの制約に合わせて調整がなされています。

プレイ体験

アーケード版では、プレイヤーは縦長のフィールドで次々と落ちてくる3つの異なる宝石で構成されたカラムを操ります。落下中に左右移動でき、宝石の順序を入れ替えることも可能です。着地時または落下中に3つ以上が縦・横・斜めに揃うとそれらが消え、上の宝石が落ちてきてさらに連鎖が起きることもあります。レベルが進むごとに落下速度が速くなり、判断力・反射速度が問われます。移植版では、この操作感や落下の速度およびフィールドの比率がプラットフォームによって微調整されており、特に携帯機(例えばゲームギア)や家庭用機では画面の小ささやボタン配置の違いに対応するための工夫が見られます。

初期の評価と現在の再評価

アーケードでの人気は高く、日本では1990年4月、「テーブル型テレビゲーム機」のカテゴリーで第8位にランクインするなどしており、また同年、日本のアーケードで最も稼いだゲームのうちテトリスやファイナルファイトなどの強豪タイトルに次ぐ位置にありました。テトリスはその当時、アーケード・家庭用を問わず既に世界的に有名であり、さまざまなプラットフォームでヒットを飛ばしていたため、認知度・人気で優位に立っていました。

当時「テトリス vs コラムス」の対比がしばしば語られました。テトリスは非常にシンプルで覚えやすいルール、そしてパターンの組み方が直感的であり、誰でもすぐに遊べる敷居の低さがありました。一方でコラムスは斜め消去やマジックジュエルといった特殊要素を含んでおり、戦略性や操作の熟練を要する部分がやや高いという印象を持たれることがありました。これが、短時間でプレイを始めたい新規のプレイヤーにはテトリスのほうが入りやすかった理由の一つです。

他ジャンル・文化への影響

『コラムス』は落ちものパズルゲームというジャンルにおける定番の一つとなり、後続のマッチスリー形式や色・形の組み合わせを重視する宝石消し系ゲーム、スマートフォン向けパズルアプリなどに影響を与えています。ルールのシンプルさと、消去・連鎖・高速化という操作の緊張感がそのまま後続作品の指標になっていることが多いです。

また、メガドライブやゲームギアなどのセガのハードや、PCエンジン・X68000などの日本国内の他社ハードでも展開されたことから、多くのプレイヤーにとって「手持ち機」「家庭用機」「アーケード」のどれでも楽しめるタイトルとして認知されており、移植版を通じたファン間の共通体験が形成されました。

リメイクでの進化

家庭用移植版では、アーケード版の基本ルールは維持されつつ、画面表示の比率調整・操作入力の最適化・音楽や効果音の質の変化などが加えられました。特に携帯機では音源・スピーカー性能の制約があるため、サウンドがアレンジ・簡略化されるものがあります。

また、近年ではコンピレーション作品(セガ・ジェネシス/メガドライブのコレクション、バーチャルコンソール、Steamを含むPC版、Nintendo Switchなど)でオリジナル版のアーケードまたはメガドライブ版の忠実な復刻を志向するものがあり、昔の音源・グラフィックを可能な限りそのまま再現する試みが評価されています。

特別な存在である理由

まず、アーケード版『コラムス』は単純なルールにもかかわらず消去の方向性(縦・横・斜め)、連鎖、Magic Jewel等のギミックを持っており、ただの落ちものゲーム以上の戦略性があります。

次に、その後に移植・再発売された多くのプラットフォームを通じて、さまざまなハードウェアの制約を乗り越えてきたこと。家庭用機や携帯機向け移植版で表現や操作性を調整しつつも、本質部分を損なわなかったことがゲームデザインの強さを示しています。

さらに、テトリスが落ちものパズルジャンルの先駆であり、超シンプルな操作で広い層に受け入れられたという点で、コラムスにとって比較対象として立ちはだかる存在であったこと。そして、テトリスの商業的な成功・マーケティング・移植数の多さなどが、コラムスの人気が高まる余地をある意味で制限したとも言えます。

まとめ

アーケード版『コラムス』は、1989年にJay Geertsenが個人開発した試作を母体とし、1990年にセガが商用化・アーケード化しました。その基本ルールである宝石の揃え・消去・連鎖・速度上昇などは非常にシンプルですが、操作の自由度や特殊ギミック(Magic Jewel等)によって繰り返し遊びたくなる奥深さがあります。アーケード以外にもメガドライブ、ゲームギア、PCエンジン、スーパーファミコン、ゲームボーイカラー、MSX2、X68000、Windows等多岐にわたるプラットフォームで遊べるようになったことで、元の感触を求める人、携帯性を重視する人など異なるプレイヤー層の間で共有される作品となりました。テトリスはすでに爆発的な知名度と普及を誇っており、その単純さと普遍性・マーケティング力でアーケード・家庭用・携帯機のいずれでも強固な存在感を持っていたため、『コラムス』は優れた作品でありながらも、その影響力や人気においてテトリスの牙城を崩すところまではいかなかったという側面があります。

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