アーケード版『エイリアンストーム』エイリアンを焼き尽くす爽快感

エイリアンストーム

アーケード版『エイリアンストーム』は、1990年5月にセガから発売されたアクションゲームです。本作は『ゴールデンアックス』を手掛けたチームによって開発され、同作のファンタジー世界をSFホラーとコメディを融合させた独特の世界観に置き換えたような構成となっています。プレイヤーは地球に侵攻したエイリアンを駆逐する専門部隊「エイリアンバスターズ」の3人からキャラクターを選択し、多様なステージを攻略します。ベルトスクロールアクション、3D主観視点シューティング、そして高速スクロールのシューティングという「3種類のゲーム性」が1つの作品に詰め込まれた、非常に野心的でバラエティ豊かなプレイ体験が特徴です。

開発背景や技術的な挑戦

本作の開発における最大の挑戦は、一つのタイトルの中で全く異なる複数のジャンルを違和感なく融合させ、プレイヤーを飽きさせない「バラエティ感」を提供することにありました。セガのシステムボード「SYSTEM 16B」を採用し、アクションパートでは多人数の敵をスムーズに描画しつつ、3Dシューティングパートではスプライトの拡大縮小機能を駆使して奥行きのある空間を表現しました。特に、建物内のスーパーマーケットや研究所をエイリアンもろとも破壊し尽くす3Dパートの演出は、当時の技術的制約の中でいかに破壊の爽快感を出すかという課題に対する、一つの優れた回答となりました。また、敵キャラクターの造形においても、映画『遊星からの物体X』を彷彿とさせるグロテスクさと、セガらしいユーモア溢れるモーションを両立させるために、緻密なドットアニメーションが構築されました。

プレイ体験

プレイヤーは、バランス型のガース、スピード型のカーラ、そしてロボットのスクーターの3人から選択します。本作には「ジャンプボタン」が存在せず、代わりに「ローリング(緊急回避)」ボタンが用意されており、攻撃・回避・スペシャルアタックを駆使するタクティカルな立ち回りが求められます。アクションパートでは近接攻撃だけでなく、火炎放射器や電撃銃といったSF兵器による派手な攻撃が楽しめます。定期的に挿入される3Dシューティングパートでは、画面上のあらゆるオブジェクトを破壊可能で、隠れたエイリアンを炙り出すスリルがあります。さらに、猛スピードで逃げる敵を追う高速スクロールパートは、反射神経を極限まで試される構成となっており、常に新鮮な驚きが続くプレイ体験を提供しています。エネルギー制を採用しているため、無闇にスペシャルアタックを使わず、いかに効率よく敵を倒してエネルギーを温存するかが攻略の鍵となります。

初期の評価と現在の再評価

発売当初は、その奇抜な世界観と、1つのゲームで3つの異なる遊びができる「おトク感」がプレイヤーの間で話題となりました。特に、エイリアンが化けたゴミ箱や自動販売機が突然襲いかかってくるシュールな演出は、当時のセガファンの心を掴みました。現在では、90年代初頭のセガの「悪ノリ」とも取れる自由なクリエイティビティが凝縮された快作として再評価されています。ベルトスクロールアクションというジャンルに安住せず、常に変化し続けるゲーム展開は、現代のインディーゲームにも通じる先駆的な試みであったとされています。また、難易度設定が比較的マイルドであり、連打でサクサク進める爽快感は、今なおレトロゲームファンの間で「頭を空っぽにして楽しめる傑作」として愛され続けています。

他ジャンル・文化への影響

『エイリアンストーム』が提示した「多ジャンルのハイブリッド」という形式は、後のアクションゲームにおけるミニゲームの挿入や、演出としての視点切り替えの技術的・演出的土壌となりました。また、本作の「Alien Burgers」という偽装店舗から「Alien Busters」へと変形するコミカルな設定や、ブラックユーモアを交えた世界観は、後のセガ作品におけるユーモアセンスの源流の一つとなりました。文化的には、シリアスなSFホラーとコメディを同居させるというスタイルが、ビデオゲームにおけるストーリーテリングの一つの手法として認識されるきっかけとなりました。本作の独特な空気感は、多くのクリエイターに「ゲームはもっと自由でいい」というインスピレーションを与え続けています。

リメイクでの進化

本作は1991年にメガドライブへ移植されましたが、そこではステージ構成の変更や、家庭用独自のミッション追加などのアレンジが行われました。近年では、アーケード版を100%忠実に再現した移植が『アストロシティミニ』などの復刻ハードに収録されています。現行機向けの移植では、アーケード版の鮮やかな発色と高速な処理が完全に再現されており、当時のゲームセンターでしか味わえなかった「三倍の楽しさ」を現代の環境で楽しむことができます。どこでもセーブ機能やボタン割り当ての変更により、エネルギー管理が重要となるシビアな場面でも、自分のペースで攻略を進めることが可能になっています。オリジナルの持つ高い完成度は、時代を経ても全く色褪せていません。

特別な存在である理由

本作が特別な存在である理由は、セガの「AM1研」が持つ職人技と、サービス精神が極限まで発揮されている点にあります。『忍』や『ゴールデンアックス』で培われたアクションのノウハウをベースにしつつ、それをSFという枠組みで大胆に解体・再構築した勇気は特筆に値します。また、エンディングで見せる突き抜けた明るさや、プレイヤーに対する「評価」を下すシステムなど、単に遊ばせるだけでなく、プレイヤーとのコミュニケーションを意識した設計がなされています。セガというメーカーが最も個性的だった時代の熱量を、ダイレクトに感じることができる貴重なタイトルです。

まとめ

アーケード版『エイリアンストーム』は、アクション、シューティング、そしてユーモアが見事に融合したエンターテインメントの傑作です。SYSTEM 16Bが紡ぎ出した禍々しくも愛嬌のあるエイリアンたちとの戦いは、今遊んでも新鮮な驚きと達成感を与えてくれます。3つの異なる視点で描かれる地球防衛の物語は、ビデオゲームが持つ「変化し続ける楽しさ」を体現しています。かつてのゲームセンターでエイリアンバスターズとして戦ったプレイヤーも、これから初めて触れるプレイヤーも、本作が放つ独特のエネルギーに魅了されることは間違いありません。

©1990 SEGA