アーケード版『エキサイティングサッカー』は、1983年10月にアルファ電子(後のADK)から発売されたスポーツゲームジャンルのタイトルです。当時としてはまだ少なかったサッカーを題材としたゲームであり、フィールドプレイヤー6人とゴールキーパー1人の7人制サッカーを採用しています。プレイヤーは日本、アメリカ、イングランド、フランス、ドイツ、ブラジルの6カ国からチームを選び、勝ち抜き戦に挑みます。ユニフォームの色以外にチーム間の能力差はありませんでした。このゲームの大きな特徴は、サッカーゲームとしては珍しいスコア制を採用している点や、ビデオゲームとして初めてオフサイドの概念を取り入れた点にあります。操作はジョイスティックとパス・シュートの2ボタンで行い、特にシュート時にはジョイスティック操作でゴールの狙いを定めるシステムが、熱中度の高いプレイ体験を提供しました。
開発背景や技術的な挑戦
1980年代前半のアーケードゲーム市場において、スポーツゲームは野球やテニスなどが主流でしたが、サッカーを本格的に題材とした作品はまだ少なかった時期です。『エキサイティングサッカー』は、そのような中でサッカーという競技をいかにビデオゲームで表現し、多くのプレイヤーに楽しんでもらうかという挑戦のもとに開発されました。
技術的な挑戦としては、当時としては画期的なオフサイドの概念をゲーム内に組み込んだことが挙げられます。これは、実際のサッカーのルールを忠実に再現しようとする開発側の意欲の表れであり、それまでの単なるボールを蹴るゲームとは一線を画す要素でした。また、選手の操作性にも工夫が見られ、特にシュート時にジョイスティックでボールの目標位置を示す 狙い撃ちシステム を採用したことは、単調になりがちなゴールへのプロセスに戦術的な深みと駆け引きを生み出すことにつながりました。このシステムは、プレイヤーの操作スキルがゴールに直結するため、非常にエキサイティングな体験をもたらしました。
プレイ体験
『エキサイティングサッカー』のプレイ体験は、縦スクロールの画面構成でプレイヤーが常に上に向かって攻め込むという、アーケードゲームとして最適化されたシンプルなスタイルが特徴です。試合時間は2分間でハーフタイムがなく、短時間で集中して熱い勝負を楽しめるため、ゲームセンターでの回転率にも配慮された作りになっています。操作はシンプルで、ジョイスティックでの移動に加え、パスとシュートの2ボタンのみを使用します。特に、前述のシュート時の 矢印操作 がプレイの肝となり、ボール保持者の位置やゴールキーパーの動きを瞬時に判断し、最適なゴールコースへ矢印を誘導するテクニックが求められます。この独特の操作感が、プレイヤーに 直感的でありながら奥深い というユニークなサッカー体験を提供しました。また、ドリブル、パス、センタリング、ゴールそれぞれにスコアが設定されており、ただ勝利を目指すだけでなく、高得点を目指すというアーケードゲームならではの楽しみ方も可能でした。
初期の評価と現在の再評価
『エキサイティングサッカー』は、1983年当時に数少ない本格的なサッカーゲームとして、ゲームセンターで一定の評価を得ました。特にオフサイドの導入や、ユニークなシュートシステムは、当時のプレイヤーに新鮮な驚きをもって迎えられました。既存のサッカーゲームが少なかった環境において、本作はサッカーという競技の魅力とビデオゲームとしての楽しさを両立させた貴重な存在として認識されていました。
現在の再評価においては、初期のサッカーゲームの歴史を語る上で欠かせないタイトル の一つとして位置づけられています。その独特な操作システムは、現代のリアル志向のサッカーゲームと比較すると異質かもしれませんが、デコカセ時代にサッカーをゲームとして成立させようとした熱意が評価されています。シンプルなグラフィックながら、当時の技術的制約の中でサッカーの醍醐味を表現しようとした創意工夫が、レトロゲーム愛好家から再評価の対象となっています。特に、ゴールライン上に表示される矢印を操作してシュートのコースを決めるという仕組みは、今見ても非常に独創的であると語られています。
他ジャンル・文化への影響
『エキサイティングサッカー』は、後のビデオゲームのサッカーゲームジャンルに間接的な影響を与えたと考えられます。特に、 オフサイドのルールをビデオゲームで再現できる ことを証明した最初の作品の一つであり、この技術的な実現は、以降のリアル志向のサッカーゲーム開発者に対して大きな可能性を示唆しました。実際のサッカーのルールをどこまでゲームに落とし込むかという課題に挑戦した先駆者的なタイトルと言えます。その後の多くのサッカーゲームが、オフサイドを標準機能として搭載する礎となりました。
また、ゲームのBGMには、当時のテレビ東京のサッカー番組三菱ダイヤモンドサッカーのテーマ曲としても知られる「ドラム・マジョレット」が使用されており、これが当時のサッカーファンやゲームプレイヤーに強い印象を与え、ゲームとサッカー文化との親和性を高める役割を果たしました。ゲームを通じて、プレイヤーが海外の国歌のメロディに親しむきっかけを提供したという文化的な側面も持ち合わせています。
リメイクでの進化
アーケード版『エキサイティングサッカー』は、その後の様々なプラットフォームへの移植や、同一メーカーによる続編などは存在しますが、現代のハイエンドなグラフィックや物理エンジンを用いた本格的なリメイク作品は、現在に至るまで発売されていません。アルファ電子(ADK)が開発した他の人気タイトルが復刻される中で、本作もレトロゲームコレクションの一環として移植されることはありましたが、グラフィックやシステムを根本から刷新するような リメイク の形での進化は見られていません。
しかし、もし仮に現代の技術でリメイクされるならば、当時の独特な 矢印シュートシステム を残しつつ、よりスムーズな操作性や現代風のグラフィックで表現されることが期待されます。オリジナルの持つシンプルな楽しさと、現代的な対戦要素を融合させることで、往年のファンだけでなく新しいプレイヤー層にも受け入れられる可能性を秘めています。
特別な存在である理由
『エキサイティングサッカー』がビデオゲーム史において特別な存在である理由は、サッカーゲームにおける先駆的な役割 を担った点にあります。このゲームが発売された1983年という時代は、まだビデオゲームでのスポーツ再現が試行錯誤の段階にあった時期です。その中で、オフサイド という複雑なルールをゲームシステムに取り込み、さらに スコア制 や 狙い撃ちシュート といった独自のアクション要素を融合させた試みは、当時の技術的な制約の中での大きな挑戦でした。このゲームの存在が、後のサッカーゲームがリアルなルール再現へと向かう一つの流れを作ったと言えます。
また、日本、アメリカ、ブラジルなど6カ国からチームを選択できる要素は、プレイヤーに 国際的なスポーツイベントの雰囲気 を提供し、ゲームを通じて世界のサッカー文化に触れるきっかけを作りました。このように、ルールへの挑戦と、ユニークな操作性の両立という点で、本作は単なる一過性のゲームではなく、その後のジャンルの発展に影響を与えた歴史的な意義を持つタイトルとして、特別な地位を占めています。
まとめ
アーケード版『エキサイティングサッカー』は、1983年にアルファ電子が世に送り出した、ビデオゲーム史における重要なスポーツゲームです。当時の技術の中で オフサイド ルールを取り入れ、独特の 狙い撃ちシュートシステム を実現した点は、開発者のサッカーゲームへの情熱と技術的な挑戦の証と言えます。シンプルな操作と短時間の集中したプレイサイクルは、アーケードゲームとしての完成度も高く、多くのプレイヤーに熱狂的な体験を提供しました。現代のリアルなサッカーゲームのルーツを辿る上で、本作は単なる懐かしいタイトルではなく、その後のジャンルの進化に影響を与えた、創意工夫に満ちた作品として記憶されるべきでしょう。
©1983 アルファ電子