PC-8801版『イミテーションは愛せない』模造とオリジナルのアイデンティティを描くSFゲーム

PC-8801版『イミテーションは愛せない』は、1989年12月にグレイトが発売したアドベンチャー美少女ゲームです。開発・発売ともにグレイトで、ジャンルはアドベンチャー/美少女ゲーム。SF的近未来、人工存在(イミテーション・ウーマン)と人間の境界をテーマとし、物語性と演出を重視した作りが特徴です。価格は6,800円。対応機種としては当初PC-8801/SRでリリースされ、その後X68000へ移植されました。

開発背景や技術的な挑戦

この作品が最初に出た機種はPC-8801/SRで、1989年12月16日に発売されました。PC-8801は当時の日本のパソコンゲーム界で主力の一つであり、SRシリーズでは音源やグラフィック周りの性能が向上していたため、本作でもその能力を活かしてグラフィック演出やテキスト量を確保しつつ、複数枚数のフロッピーディスクを使用する構成が取られています。

また、1990年3月にはX68000版が移植されています。X68000は高解像度なグラフィック能力や表現力、ディスクドライブの仕様、描画速度などがPC-8801よりも優れており、この移植によって画像表示の質・読み込み・ディスク枚数などが最適化されている点が見られます。

プレイ体験

物語はSFの近未来世界、「イミテーション・ウーマン(I.W.)」という人工存在と人間との関係を描く形式となっており、プレイヤーはI.W.ハンターとして行動する主人公を操作します。探索・選択肢の分岐を伴うアドベンチャー形式となっており、シナリオ展開が複数パターンに分かれる可能性があります。グラフィック描写や演出は、対応機種によって差があり、特にX68000版ではより精細な画像表示やディスク枚数の軽減(PC-8801では5枚、X68000では3枚)などが実用的にも体感できる改善点とされています。

初期の評価と現在の再評価

発売当時はSF設定とアダルト要素、美少女ゲームとしてのビジュアル描写などが注目される一方、ストーリーや演出の斬新さ、選択肢の深さに対する期待なども寄せられていました。PC-8801版の技術的制約(解像度・色数・描画速度など)が批評の対象になることもありました。現在では、レトロゲームファンの間でPC-8801/SR時代の制限を理解した上で、X68000への移植による改善点なども含めて本作の個性と価値が高く評価されるようになっています。

他ジャンル・文化への影響

この作品はSF+美少女アドベンチャーとして、日本国内で当時増えつつあった成人向けアドベンチャーの中でも、ストーリー性を比較的重視した例の一つです。対応機種がPC-8801/SRやX68000といった高性能機種であることも、グラフィックや演出で差異を出す要素として機能しており、その後の美少女SF作品における「表現の質」「移植のあり方」を考える際の参照点になっています。また、後年のレトロゲーム復刻・コレクターズ文脈において、PC-8801版/X68000版それぞれの違いを楽しむという評価も見られます。

リメイクでの進化

現時点では、公式なリメイク作品は確認されていません。移植はPC-8801/SRからX68000へのもののみであり、ディスク媒体・枚数・画質・操作性などで改善が見られますが、根本的なストーリー構造・システムはオリジナルに忠実な移植であるとの情報が多いです。

特別な存在である理由

この作品が特別とされるのは、単にアダルト要素や美少女ゲームであるというだけでなく、模造とオリジナル、本物と偽物の境界をテーマに据えており、タイトルそのものがその問いをプレイヤーに投げかけるものになっているからです。対応機種の差異(PC-8801/SRとX68000)による演出・グラフィックの違いがあることで、同じ物語でも感じ方が変わるという点もユニークです。加えて、1989-1990年という日本のパソコンゲーム黎明期から中期にかけての技術水準を反映しており、制約をどう克服するかを含めて「時代の作品」としての価値があります。

まとめ

『イミテーションは愛せない』は、1989年末にPC-8801/SRで登場し、その後X68000へ移植されたことで技術的・演出的な差異も経験できる作品です。SF設定と美少女要素、選択肢による物語分岐とテーマ性の強さが印象的であり、当時のパソコンゲームの制限と可能性の両方を感じさせます。PC-8801で味わうオリジナルの硬さ、X68000で感じる移植による滑らかさや画質の改善を比較することで、この作品の魅力がより深く理解できるでしょう。興味を持たれる方は、それぞれの機種での違いを意識しながら遊んでみることをおすすめします。

©1989 グレイト