アーケード版『WWFスーパースターズ』は、1989年にテクノスジャパンから発売された、アメリカのプロレス団体WWF(現在のWWE)を題材としたプロレスアクションゲームです。プレイヤーはハルク・ホーガンやアルティメット・ウォリアーといった実在のスーパースターから2人を選んでタッグチームを結成し、世界王座を目指して過酷なトーナメントを勝ち抜いていきます。本作は、実名での登場人物や特徴的なマイクパフォーマンス、派手な入場シーンなど、当時のWWFの熱狂的な雰囲気をアーケードで見事に再現した画期的な作品です。
開発背景や技術的な挑戦
1980年代末、テクノスジャパンは『ダブルドラゴン』などで培ったベルトスクロールアクションの技術を、プロレスという競技に応用することを模索していました。技術的な最大の挑戦は、当時のアーケード基板の限界に近い巨大なキャラクターグラフィックを実現することでした。個々のスーパースターの筋肉の質感や、それぞれの得意技であるシグネチャー・ムーブの動作を細かくドット絵で描き出し、実写さながらの迫力を生み出すことに注力されました。また、リング外での場外乱闘や凶器攻撃など、プロレス特有のエンターテインメント性をシステムとして組み込むことにも成功しています。
プレイ体験
プレイヤーは、レバーと2つのボタンを組み合わせることで、パンチやキックだけでなく、多彩な投げ技や組み合いの駆け引きを楽しむことができます。組み合った際のボタン連打による競り合いは、プロレスゲームらしい力の入るプレイ体験を提供しました。タッグマッチ形式を採用しているため、パートナーとのタッチのタイミングや、カットプレイといった戦略性も重要となります。試合終盤に繰り出される必殺のフィニッシュ・ホールドで相手をマットに沈め、スリーカウントを奪った際の達成感は、まさにプロレスの醍醐味を凝縮したものでした。
初期の評価と現在の再評価
稼働当初は、その圧倒的なグラフィックと、テレビで見ていたスーパースターたちを自在に操作できるという興奮から、日米の両市場で爆発的な人気を博しました。プロレスの「ショー」としての側面を理解し、派手な演出を盛り込んだゲームデザインは、従来の地味な格闘ゲームとは一線を画していました。現在では、後のプロレスゲームのスタンダードを確立した金字塔として再評価されています。シンプルながらもキャラクターの個性が際立つ設計は、現代の複雑化したスポーツゲームにはない純粋な面白さがあると高く支持されています。
他ジャンル・文化への影響
本作の成功は、その後のプロレスゲームや格闘ゲームの演出面に多大な影響を与えました。特に入場シーンや勝利ポーズに力を入れる演出、実名ライセンスを用いたキャラクタービジネスの可能性を提示した功績は計り知れません。テクノスジャパン自身も、本作のヒットを受けて続編の『WWFレッスルフェスト』を制作することになり、アーケードにおける「プロレスゲーム」というジャンルを確立させることになりました。また、実在のアスリートをデフォルメしつつもその特徴を捉えるドット絵の技術は、当時の開発者たちに大きな刺激を与えました。
リメイクでの進化
本作は、その強力なライセンスの関係から長らく移植が困難とされてきましたが、当時のアーケード版が持っていた熱量は今もなお語り草となっています。近年では、当時の開発スタッフのインタビューや資料が公開される機会が増え、いかにして当時のプロレスファンを熱狂させる演出を作り上げたかが明らかにされています。直接的な移植版以外でも、本作で培われた「掴み」のシステムや「連打」の爽快感は、テクノスジャパンのDNAとして後継の様々なアクションゲームへと受け継がれ、形を変えて進化を続けています。
特別な存在である理由
『WWFスーパースターズ』がビデオゲーム史において特別な存在である理由は、実在するプロレスの世界を、単なる競技としてではなく、最高のエンターテインメントとして昇華させた点にあります。実況のような効果音や観客の歓声、そして個性の塊のようなレスラーたちの動きが一体となり、筐体そのものがプロレスのリングであるかのような錯覚をプレイヤーに与えました。多くのファンにとって、初めてプロレスのスターになりきることができた魔法のようなゲームであり、その思い出は色褪せることがありません。
まとめ
『WWFスーパースターズ』は、1989年のゲームセンターにプロレスの熱気と興奮を持ち込んだ記念碑的な作品です。テクノスジャパンが持つ卓越したアクション制作能力が、WWFという最高の素材と出会ったことで、唯一無二のエンターテインメントが誕生しました。ド迫力のグラフィックと爽快な操作性は、時代を超えて多くのプレイヤーの記憶に残っています。本作は、スポーツを題材としたビデオゲームがいかにあるべきかを示す、一つの究極の回答であったと言えるでしょう。
©1989 TECHNOS JAPAN