ネオジオ版『餓狼伝説 宿命の闘い』は、1991年11月にSNKよりアーケード向けに発売された対戦格闘ゲームです。開発はSNKが担当し、かつてカプコンで『ストリートファイター』(1987年)を手がけた西山隆志氏が制作に携わりました。ジャンルは対戦型格闘ゲームで、テリー・ボガード、アンディ・ボガード、ジョー・ヒガシの三人のプレイヤーキャラクターが、宿敵ギース・ハワードの支配する闘技大会「キング・オブ・ファイターズ」に挑むというストーリーが展開されます。シリーズの第1作にあたり、見た目や演出だけでなく、体力が残りわずかになった際に使用できる「デスペラードムーブ」や、対戦型格闘ゲーム初期としては珍しい物語の明確な導入など、他作品に先駆けた要素が特徴です。
開発背景や技術的な挑戦
ネオジオの稼働ハードとしての性能は、従来のアーケード基板に比べ非常に高く、カートリッジ形式の採用やスプライト描画能力の高さなど、家庭用据え置き機に匹敵する性能を持っていました。そのような環境下でSNKは、カプコンを退社後にネオジオのハードウェア企画にも関わった西山隆志氏を起用し、SNK初の格闘ゲーム作品として本作を開発しました。西山氏は自身が手がけた『ストリートファイター』に続く作品として、『ストリートファイターII』への返答という立場で、『餓狼伝説』の制作において演出や操作性に注力しています。
プレイ体験
プレイヤーはテリー・ボガード、アンディ・ボガード、ジョー・ヒガシの三名からキャラクターを選び、CPUまたは対戦相手を倒していくというシンプルな流れです。独特の操作感としては、体力残量が少なくなると発動できる「デスペラードムーブ」が追加されており、プレイヤーが逆転を狙える緊張感のある戦闘が可能です。また、当時としては珍しく、プレイヤーが物語の中心となって進行する演出も入っており、ただ技を出すだけでなく、キャラクターに感情移入できる要素がありました。
初期の評価と現在の再評価
発売直後は、同時期に登場した『ストリートファイターII』の影響もあり、「後発の作品」として厳しい評価を受けることもありました。しかし、SNKは本作を成功作と位置づけ、以降続く『餓狼伝説』シリーズや、『THE KING OF FIGHTERS』シリーズへと続く基盤となる作品としました。現在では、SNK格闘ゲームの土台を築いた歴史的作品として再評価されており、シリーズファンの間では「SNK格闘ゲームの原点」として高く評価されています。
他ジャンル・文化への影響
本作は後続のSNK作品、特に『餓狼伝説』シリーズ全体や、それに続くクロスオーバー格闘大会シリーズ『THE KING OF FIGHTERS』の世界観を形成しました。テリー・ボガードやギース・ハワードといったキャラクターが以後のSNK作品に登場し続けている点からも、本作がSNK作品群に与えた影響の大きさがうかがえます。
リメイクでの進化
アーケード版『餓狼伝説』そのものについては、明確なリメイク作品は確認できませんでした。ただし、後年の『餓狼伝説』シリーズの続編やリリース(例えば『餓狼伝説スペシャル』など)によって、本作の基本システムやキャラクターが進化・発展していったことは確かです。
特別な存在である理由
SNKにとって、本作は初のネオジオ格闘ゲーム作品であり、『ストリートファイターII』以降の格闘ゲームブームの中で独自の道を切り開いた一作です。強烈なキャラクター性、演出、ストーリー性の導入、そして翌年以降登場するシリーズ作品や他タイトルへ受け継がれていく世界観の礎を築いたことにより、「SNK格闘ゲームの原点」として、特別な存在です。
まとめ
ネオジオ版『餓狼伝説 宿命の闘い』は、1991年11月にSNKよりアーケードで稼働開始された、シリーズの象徴ともいえる初格闘ゲームです。西山隆志氏の関与、デスペラードムーブやストーリー導入といった革新要素、そして後続作品への影響により、SNK格闘ゲームの土台を築いた重要作です。この作品なしに、後の『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズやさらなる発展は語れません。
©1991 SNK