アーケード版『ドンキーコングJR.』蔦登りアクションが光る異色の続編

ドンキーコングJR.

アーケード版『ドンキーコングJR.』は、1982年に任天堂が発売し、開発はNintendo R&D1と岩崎技研工業が手がけたアクションプラットフォーマーです。プレイヤーはドンキーコングJR.を操作し、悪役となったマリオに囚われたドンキーコングを救出するために鍵を集めていく内容です。独特の蔦登り操作と縦に展開するステージ構成が特徴です。

開発背景や技術的な挑戦

前作『ドンキーコング』の成功を受け、より多彩なアニメーションと操作性の向上が求められました。2画面構成から単一スクリーン構成に戻しつつ、上下左右に広がるステージを実現し、当時のスプライト処理技術の限界に挑んだ作品でもあります。音響面では、ドンキーコングJR.の動きに連動する効果音の多様化も見られました。

プレイ体験

本作は4つのステージで構成され、それぞれ異なる仕掛けや敵が登場します。とくにチェーンを使った鍵の落下ギミックやジャンプボードでのタイミング調整は、アーケードならではの難度と中毒性を持っています。蔦を両手で登る操作方法は直感的で、緻密なプレイが求められる場面が印象的です。

初期評価と現在の再評価

このゲームに対する評価は全体として好意的な意見が多く、ポジティブな評価が約70%、ネガティブな評価が約30%という割合に分かれます。高く評価されている点としてまず挙げられるのは、ゲームプレイの革新性です。特に両手でツルを掴んで素早く登ったり、片手ずつ移動することで落下スピードを調整できるなど、単調になりがちなジャンプアクションにバリエーションを加えた設計は当時としては非常に斬新でした。また、各ステージにそれぞれ異なる仕掛けが施されており、第2ステージのバネや第3ステージの鎖を使った操作はプレイヤーに新鮮な体験を提供しています。さらに、ステージを一巡した後に難易度が上がるループシステムも、アーケードゲームらしい挑戦性を保っており、何度もプレイしたくなる工夫が凝らされています。

一方で、ネガティブな評価の多くは操作性に集中しています。ジュニアの移動速度が比較的遅く、ジャンプの挙動も予測しづらいことから、「操作がもたつく」「反応が鈍い」と感じるプレイヤーが少なくありません。特に現代のアクションゲームに慣れた層にとっては、レスポンスの遅さがストレス要因となることもあります。また、ステージ数が全4つと限られており、短時間で全体を把握できてしまうため、「物足りなさを感じる」「もっと多くのバリエーションが欲しい」といった意見も見受けられます。こうした評価を踏まえて、現代的なアップデートやリメイクにおいては操作のレスポンス改善や追加ステージの実装が望まれるところです。

このゲームを特に楽しめるのは、レトロアーケードの独特なゲームデザインを味わいたいプレイヤーです。前作『ドンキーコング』を楽しんだ経験のある人はもちろん、1980年代のアーケード文化に興味がある人や、短時間で何度も挑戦するスタイルのゲームを好む方には最適です。また、ギミックを見極めて攻略を重ねていく過程に楽しみを見出せる方にとっては、非常に満足度の高い作品となるでしょう。全体として、シンプルながらも考え抜かれた設計が光る本作は、時代を越えてなお語り継がれるだけの価値があるアーケードゲームです。

他ジャンル・文化への影響

本作でマリオが敵役として登場したことはシリーズにおけるユニークな事例であり、のちのドンキーコングシリーズにおける「世代交代」や「ファミリー構成」の基盤を形作る一因となりました。登攀アクションは、後の多くのプラットフォーマーにも影響を与えています。

リメイクでの進化

現代にリメイクされる場合、HD画質のグラフィック、より滑らかなアニメーション、オンラインランキングやスコア共有機能の導入が期待されます。特にアナログスティックでの登攀操作や、コントローラーの振動による感触の再現が、原作の魅力を現代的に強化するポイントとなるでしょう。

まとめ

アーケード版『ドンキーコングJR.』は、斬新な操作性とシンプルながら奥深いステージ構成が光る名作です。前作と立場を入れ替えたキャラクター演出、登攀アクションという独自性は、今なお多くのプレイヤーに新鮮な驚きを与えます。短い中にも繰り返し遊びたくなる魅力を持つ、アーケードゲーム史に残る一作です。

攻略

プレイヤーは、ドンキーコングJR.を操作して、マリオに捕らえられてしまった父親のドンキーコングを助け出すことを目的とします。ゲームは4つの異なるステージで構成されており、それぞれのステージには異なる仕掛けや敵が登場します。プレイヤーはツタや鎖を登りながらカギを集め、ステージ上部にあるカギ穴に運ぶことでロックを解除していきます。全てのロックを外すとステージクリアとなり、最終的には檻に閉じ込められた父親を救出することができます。ステージをすべてクリアすると、さらに難易度が上がったステージが繰り返され、プレイが続行されます。

ゲームオーバーになる条件は、敵やその攻撃に触れてしまうこと、高い場所から落下してしまうこと、谷底に落ちること、または制限時間内にステージをクリアできないことです。これらによってライフがすべて失われると、ゲームは終了します。

ストーリー設定

マリオに敗れたドンキーコングは森の中の檻に閉じ込められます。ドンキーコングの息子であるドンキーコングJR.は、父を救うためにマリオに立ち向かいます。マリオはドンキーコングをヘリコプターで彼のアジトに運び、ドンキーコングの鎖の鍵を建物の周りに配置します。ドンキーコングJR.は複数の敵に攻撃されますが、それらをかわして父を救出します。

キャラクター概要
ジュニア主人公(プレイヤーキャラクター)です。前作の悪役であったドンキーコングの息子です。
パパ別名は「ドンキーコング」です。本作での救出対象であり、前作でのレディの役目にあたります。
マリオ前作の主人公で、本作の悪役です。今作から個人名が付けられ、常に鞭を持っており、敵キャラクターをジュニアに突撃させます。
スナップジョー1面と4面の敵キャラクターです。赤色もしくは青色の機械ワニです。
ニットピッカー2面と4面の敵キャラクターです。2面ではワシの姿で飛行し、卵を投下します。4面ではカラスの姿で登場します。
スパーク3面の敵キャラクターです。オレンジ色もしくは青色の電気物体で、それぞれ姿が異なります。

ゲームシステム

『ドンキーコングJR.』は、4面を1周とする構成のアクションゲームです。プレイヤーは4面すべてをクリアすると、難易度が上がった状態で1面から再びスタートするループ制です。このゲームは、前作のジャンプ中心のアクションから変化し、ツタを使った上昇や下降のアクションが特徴的です。ツタを上る際は、2本のツタを両手で掴むことで速く上昇でき、下る際は1本のツタにしがみついて素早く下降することができます。ゲーム中、ジュニアは敵を攻撃するための武器として、ステージ各所に配置された果物を利用します。4面では、ドンキーコングが閉じ込められた檻の鍵を押し上げて開錠します。ゲームプレイ中に敵に触れたり、水に落下したりするとミスになります。

ゲーム画面

画面の上部には、スコアリングに関する情報が表示されています。「1UP」という文字の下には現在のプレイヤースコア、その右側には「HIGH SCORE」という文字とその下に現在のハイスコアを表示しています。画面の右上隅には「BONUS」、その横にある「L」は現在のレベルを表しています。BONUSの上にあるジュニアのアイコンは残機です。

操作方法

操作方法は、方向レバーとジャンプボタンを使用します。プレイヤーはドンキーコングJR.を左右に動かし、ジャンプや蔦を掴んで移動することができます。敵を避けたり、障害物を乗り越えたりすることで、各ステージを進んでいきます。ゲームの目的は、最終ステージでドンキーコングを救出することです。

ステージ構成

1面

主人公ジュニアが画面の左下隅からスタートし、上部にある檻に閉じ込められた父親、ドンキーコングを救うために様々なツタと段差を渡っていきます。プレイヤーは最初のツタを掴み、青いスナップジョーという敵を避けながら登る必要があります。これらの敵はツタを下りてくるので、プレイヤーは戦略的にツタを切り替えて敵を避ける必要があります。また、ツタの途中には果物が配置されており、ポイントを得たり敵に対して使うことができます。進むにつれて、プレイヤーは小さな段差を飛び越えて画面の右端に到達する必要があります。これには正確なジャンプとタイミングが求められ、特にツタを守るスナップジョーには注意が必要です。プレイヤーは途中の果物、例えば梨やリンゴを使って、一度倒すと戻ってこない赤いスナップジョーを倒すことができます。ただし、バナナのような果物を取ることは得点を獲得できる一方で敵との接触リスクがあります。このステージの最終局面は、最も右のツタを登り、枝を超えて残っているスナップジョーを避けることです。

ステージは、ジュニアが枝の高い部分に飛び上がり、鍵を掴めばクリアとなります。

2面

このステージでは、画面の下部にスプリングボードが設置され、ドンキーコングJR.が対岸の樹上に到達するためのショートカットとして機能します。プレイヤーは、ジュニアを様々な段差とチェーンを移動させて、卵を投げる小さなニットピッカーという鳥のような敵を避けながら進む必要があります。スプリングボードを効果的に使うためには、正確なタイミングが重要。

ジュニアが2番目の伸縮するツタを最も低い位置で掴んだ後、さらに進んで鎖に到達し、ニットピッカーを避けながらステージの終わりにある鍵に到達する必要があります。

3面

ステージ構成はシンプルですが、電気的なトラップがあります。プレイヤーの脅威は「スパーク」と呼ばれる敵です。これらのスパークは、ジュニアが地上にいる時だけでなく、頭上を通過する時も危険です。プレイヤーはしばしば、地上のスパークを飛び越えることに集中し、気づかないうちに頭上のスパークと接触することがあります。

左からスタートし、右へ渡り、上に登り、再び左へ渡り、もう一度登り、このパターンを続けて鍵を手に入れて進む必要があります。赤いスパークは決められたループを辿りますが、青いスパークは画面の上から下へと垂直に移動し、マリオの下にある4つの経路の中からランダムに移動します。各段にはフルーツがあり、点数の獲得やスパークを排除する手段として利用できます。しかし、スパークに対してフルーツを効果的に使用するには、タイミングが重要です。また、プレイヤーはスパークに囲まれたり、行き止まりに追い込まれたりしないよう、周囲の状況を常に意識する必要があります。

4面

このステージでは、ジュニアの主な目的は、鍵がかかった檻に閉じ込められた父親、ドンキーコングを救出することです。鍵はチェーンの下に位置し、ジュニアはそれらを上に押し上げて鍵穴に挿入し、父を解放する必要があります。ステージは、マリオによって送り込まれた赤いスナップジョーと大きなニットピッカーという敵の存在により難易度が上がっています。大きなニットピッカーは画面を横切って飛び、段差を下げて方向を変えながら攻撃します。ジュニアが一度に2つの鍵を押し上げるのは時短になりますが、スナップジョーとの接触リスクが倍増します。

すべての鍵穴が解除されると、ドンキーコングが解放され、ジュニアが彼をキャッチします。これでステージは終了し、難易度がアップした1面から再開します。

データ

このゲームの発売年などのデータです。

発売年1982
プラットフォームアーケード
ジャンルアクション
プレー人数1-2人(交互)
メーカー任天堂
開発会社任天堂
プロデューサー横井軍平
ディレクター宮本茂
グラフィック宮本茂、坂本賀勇
サウンド兼岡行男

このゲームの移植タイトルは下表の通りです。

発売年プラットフォームタイトル名
1983年ファミリーコンピュータドンキーコングJR.
1983年Atari 2600ドンキーコングJR.
1983年IntellivisionドンキーコングJR.
1983年ColecoVisionドンキーコングJR.
1984年Coleco AdamドンキーコングJR.
1986年NESドンキーコングJR.
2018年Nintendo Switchアーケードアーカイブス ドンキーコングJR.

©1982 Nintendo