アーケード版『グレートソードマン』3種の剣術で読み合う攻防

アーケード版『グレートソードマン』は、1984年よりタイトーからリリースされたスポーツゲームです。開発は世田企画(後のセタ)が担当しました。本作は、剣道、フェンシング、古代ローマの剣闘士(ローマ)という、3種類の剣術競技をテーマとしており、それぞれ異なるルールと操作で、対戦相手であるCPUキャラクターと戦い抜くことが特徴です。当時のアーケードゲームとしては、比較的大きなキャラクター描写や、剣戟スポーツというユニークな題材で、プレイヤーに新鮮な体験を提供しました。

開発背景や技術的な挑戦

『グレートソードマン』がリリースされた1984年は、ビデオゲームが多様なジャンルを開拓し始めた時期にあたります。本作が挑戦したのは、それまでの単純なアクションゲームやシューティングゲームとは一線を画した、スポーツゲームのリアリティと競技性を、アーケードゲームとして表現することでした。特に剣術という題材は、攻撃の上段、中段、下段といった概念を導入し、単なるボタン連打ではない、読み合いを重視したシステムを構築する必要がありました。これは、当時の技術的な制約の中で、限られたドット絵と操作系で、いかに剣を交える緊張感や間合いの取り方を表現するかという、大きな課題への挑戦であったと言えます。また、3種類の全く異なる競技を1つの筐体で遊べるようにした点も、技術的なチャレンジであり、プレイヤーを飽きさせないための工夫でした。

プレイ体験

本作のプレイ体験は、3つの競技の特性によって大きく異なります。剣道では面胴小手といった有効打突の部位を意識した攻防が繰り広げられ、フェンシングではよりスピード感と正確性が求められる突き合いが中心となります。そして、最後に待ち受ける古代ローマの剣闘士の戦いは、1本勝負の緊張感が極めて高く、プレイヤーはそれまでの競技で培った判断力と集中力の全てを試されます。操作は上下の移動に加えて、上段・中段・下段の攻撃と防御を使い分けるシンプルなものですが、相手のモーションを読み、どの高さで攻撃し、どの高さで防御するかという駆け引きが勝敗を分けます。この読みと反射が絡み合うゲーム性は、対CPU戦でありながらも、実際の対人競技に近い熱いプレイ体験をプレイヤーに提供しました。各ステージの間には、飛んでくる矢を避け続けるボーナスゲームが挿入されており、一瞬の気の緩みも許されない競技の合間の良い息抜きとなっています。

初期の評価と現在の再評価

『グレートソードマン』はリリース当時、その斬新なスポーツ競技のテーマと、対戦格闘ゲームの萌芽ともいえるような間合いと読みのシステムが注目を集めました。特に、3種類の競技をバランス良くまとめたアイデアは、多様性を求めるプレイヤーに評価されました。現在の再評価においては、初期の対戦ゲーム、特に武器を使った格闘ゲームの原点の1つとして認識されています。グラフィックは当時の標準的なものですが、キャラクターの動作やヒット判定のシンプルさが、逆に駆け引きの純粋さを際立たせており、現代の複雑なゲームシステムに慣れたプレイヤーにとっても、奥深いゲームデザインとして再評価されています。レトロゲーム基板の復刻収録版などで、気軽にプレイできる機会が増えたことも、再評価につながっています。

他ジャンル・文化への影響

『グレートソードマン』は、その後のビデオゲームにおけるスポーツゲームの多様化に貢献した作品の1つと言えます。特に剣術というジャンルに特化し、複数の異なる競技性を融合させたアイデアは、後の様々な武器格闘ゲームやシミュレーション要素を含むスポーツゲームに影響を与えた可能性があります。また、1対1の対戦形式で、攻撃の高さや間合いといった要素を駆け引きの主軸に置いたシステムは、後に対戦格闘ゲームが隆盛する土壌を形成する上で、間接的ながらも影響を与えたと考えられます。文化的な影響としては、本作の登場により、剣道やフェンシングといった現実のスポーツへの関心が、当時の若い世代の一部に喚起された可能性も考えられます。

リメイクでの進化

『グレートソードマン』は、単体での大規模なリメイク作品はリリースされていませんが、タイトーの過去のアーケード作品を複数収録したオムニバス形式のゲーム集に、オリジナル版が移植され、現行のプラットフォームで遊べるようになっています。例えば、プレイステーション2で発売された『タイトーメモリーズII 下巻』や、ミニゲーム機である『イーグレットツー ミニ』の収録タイトルの1つとして、オリジナルのアーケード版が忠実に再現されています。これらの移植版では、ゲーム内容そのものの進化はありませんが、現代のディスプレイ環境での画面表示の最適化や、ゲーム途中でのセーブ機能など、現代的なプレイアビリティの向上が図られています。オリジナルの体験をそのままに、手軽に楽しめるようになったことは、本作を懐かしむプレイヤーにとって大きな価値となっています。

特別な存在である理由

『グレートソードマン』が特別な存在である理由は、その時代のアーケードゲームにおいて、スポーツ競技のリアリティとゲーム性を高次元で両立しようとした先駆的な試みにあります。単に剣を振るアクションではなく、3種類の剣術競技のルールと特性を理解し、相手の動きを読み、攻防のタイミングを計るという深い戦略性が、当時のプレイヤーに強烈な印象を残しました。剣道、フェンシング、ローマの剣闘士という、バラエティに富んだ競技を切り替えながら進めるゲーム構成も、プレイヤーを飽きさせないための工夫であり、その独創性が光ります。後のゲーム開発者に、スポーツゲームや格闘ゲームのデザインにおける間合いや読み合いの重要性を再認識させる一作として、ビデオゲーム史において重要なポジションを占めていると言えます。

まとめ

アーケード版『グレートソードマン』は、1984年にタイトーから世田企画が開発した、剣術競技に特化したユニークなスポーツゲームです。剣道、フェンシング、そしてローマの剣闘士の戦いという3種類の異なるルールに基づいた競技が、プレイヤーに高度な読みと反射神経を要求します。シンプルな操作ながらも奥深い駆け引きが楽しめるゲームデザインは、後の対戦型ゲームにも影響を与えた先駆的な作品として、現在でも高い評価を得ています。オリジナルの魅力を損なうことなく現代に移植され続けていることは、本作が時代を超えて愛されるクラシックゲームであることを証明しています。プレイヤーは、3つの剣術をマスターし、最強の剣士ZEUSを目指す緊張感と達成感を、今も昔も変わらず味わうことができるのです。

©1984 タイトー